80 / 121
三章 祐二の過去とこれから
No,67 アルマンは暴走す
しおりを挟む「アキ兄ちゃん、僕はこれからどうすればいい?」
「そうだな、まず、今の仕事はやめるべきだと思う」
「そうだね、僕もこうなった以上、アキ兄ちゃん以外の誰とも嫌だよ。
僕は到底、椿姫のようには出来そうにないから……」
「そうだな、俺もアルマンのような思いはごめんだ」
「……だけど、僕には椿姫の気持ちが分かるよ」
「祐二?」
明彦は意外な言葉に祐二の顔を覗き込んだ。
「本当にアルマンを愛していて、二人の仲を長続きさせたいと思ったなら、決してアルマンに負担をかけちゃいけなかったんだよ、経済的に…」
「それは?」
「だって彼らは、絶対に結婚出来ない関係なんだから」
祐二は明彦と目を合わせ、ひときわ強調した口調で言い放った。
「祐二、俺に頼りたくなと言っているのか?水臭いじゃないか。それとも、俺はそんなに頼りない存在なのか?」
「違うよ。僕は子供の頃からアキ兄ちゃんだけを頼りに生きて来たんだ。会えなかったこの十年間も、ずっとずっと、アキ兄ちゃんだけを心の支えに生きてきたんだ」
「それなら、なぜ?」
「気持ちの問題とお金の問題は別なんだ。僕は椿姫のように豪華な生活をしたい訳じゃないし、今の生活にも全然執着なんて持っていない。
まして貧乏には元々慣れているんだ。今の仕事をやめて収入が減っても僕は平気だ」
「祐二に不自由な思いはさせない」
「そう言う話じゃないよ。
貧しくていいって言ったって最低限の生活費は必要だし、僕にはこれからも、ずっと医療費がついて回るんだ」
「だから、これからはそんな心配は必要ないんだ」
「困ったな、アキ兄ちゃんのそう言うところ、昔と全然変わってないね」
「どう言うことだよ?」
「アキ兄ちゃんは確かに豪田家の跡取りだけど、でも養子と言う微妙な立場だろ?
無理をして限界を超えてしまったら大変な事になるよ」
「無理なんてそんなこと!」
「仮に月々そのぐらいの出費なら自由になるとしても、この先何年?いつまでそれを続ける事になるの?
そんな事をしていたらいつかきっと、豪田家の人も会社の人も、アキ兄ちゃんの不可解な出費に疑問を持つよ?
調べられれば僕の事なんて直ぐに分かってしまう。そんな事になったらアキ兄ちゃん、なんて申し開きをするつもり?」
「おまえの事を、誰にもとやかく言わせない!」
「アキ兄ちゃん落ち着いて。
僕はこれから先、ずっとアキ兄ちゃんの近くにいたいよ?やっと掴んだ幸せだから。
だからその為には、アキ兄ちゃんに決して経済的負担を掛けちゃいけないんだ」
「経済的負担になんてならない。俺は養父の元を独立して、おまえと一緒に暮らそうと思っている。だから生活費なんて一緒だよ」
祐二は驚愕に目を見開いた。
「そんな事を言い出すから!」
「大丈夫さ、俺ももう24歳。
そろそろ豪田の家を出ようかと思っていたところなんだ。勿論それと仕事は別な話だし、大体いつまでも養父の元にいるって言うのも気が引けるよ」
「普通の家族だったらそれでもいいけど、でもアキ兄ちゃんの立場はあくまでも養子だろ?
僕たちの付き合いをこれからもずっと、なるべく穏便に続けるには出来るだけ波風を立てない方がいいと思うんだ」
「祐二?」
「もしアキ兄ちゃんが家を出たら、当然周りは一人暮らしだと思うだろ?そこに僕なんかが一緒にいたら、一体世間はどう思う?」
「それは…」
「アキ兄ちゃん、こうなった以上、僕はもう二度と離れ離れになりたくないんだ。そのためには色々な配慮が必要なんだ。僕は……椿姫と同じ立場なんだから……」
「祐二……おまえ、そんな事まで考えていたのか」
「だから、お願いだから僕の話を聞いて欲しい」
二人は互いを見詰め合った。
16
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説

不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~
四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。
ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。
高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。
※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み)
■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった
たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」
大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる