69 / 121
二章 再会は胸を締め付ける
………沈む夕日の追憶
しおりを挟む「祐ちゃん、俺、来たよ」
「アキ兄ちゃん、えへっ、さっきは我儘言ってごめん」
「ん~ん!俺が悪かった。豪田家との養子話を押し通したりして。でも、ここで会えて良かった」
「だって、どんなに凄いケンカをしてもこの秘密の入江に来れば仲直りって、約束していたじゃない。
僕だって悪かった。ただ寂しいってだけでアキ兄ちゃんの思いを否定した」
「祐ちゃんの気持ちは分かってるよ。でも、俺は……」
「もういいよ。僕だってアキ兄ちゃんの気持ちは分かってる。それなのにケンカなんて嫌だよ。だからこの入江で待っていた」
「ああ、今まで何度もケンカして、そしてここで仲直りしたよな」
「うん、ケンカした後はさ、どっちが先にここで待っているか、まるで競争のようだったね」
「本当にそうだ、そして今日も祐ちゃんに負けちゃったな。ケンカして頭冷やして後悔して、俺、いつも大急ぎでここに来るんだ。なのにいつも祐ちゃんが先に来ている」
「それはね、アキ兄ちゃんが頑固で意地っ張りだからだよ。僕はね、アキ兄ちゃんとケンカしちゃうと直ぐにとっても悲しくなっちゃうんだ」
「祐ちゃん……」
「僕たちこんなに仲好しなのに、どうしてケンカしちゃうんだろう?」
「あはっ、それは祐ちゃんも頑固で意地っ張りだからだよ」
「えへっ、そうだね、僕もアキ兄ちゃんと同じだね。僕たち、きっとこれからも沢山ケンカをするんだろうな」
「ああ、でも俺は、必ずここに来て祐ちゃんの来るのを待っているよ」
「それは僕のセリフだよ」
「約束しよう。この先どんなに酷いケンカをしても、この秘密の入り江では仲直りするって……」
「そうだね、約束するよ?
ずっとずっと大人になっても、秘密の入江は仲直りの入江だね」
「そうだよ、祐ちゃん。
ほら、夕日が海を染めてる」
「きれいだね。凄いくらいにきれいだね」
「ああ、この入江から眺める夕日は最高さ」
「アキ兄ちゃん、この秘密の入江で夕日を眺めるのも、もうこれで最後になるかも知れないんだね」
「いや、そんなことはない。
俺はいつか必ず帰ってくる。祐ちゃんの待つこの町にいつか必ず!」
「アキ兄ちゃん、約束だよ?
僕は、アキ兄ちゃんが迎えに来てくれるのをずっとずっと待っているから」
「ああ、だから祐ちゃんも身体を大切にするんだ。無理はするなよ」
「うん……そうだね……
僕……アキ兄ちゃんの(ことが好きなんだ……)」
「え?なに?波の音で聞こえないよ?」
「うん、あのね、僕はアキ兄ちゃんのことが大好きだ!って言ったんだ」
「ああ、俺も祐ちゃんのことが堪らなく大好きさ!
俺たち、兄弟じゃないか」
「うん、そうだね……
僕たち兄弟なんだよね……」
16
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~
四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。
ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。
高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。
※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み)
■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
愛玩人形
誠奈
BL
そろそろ季節も春を迎えようとしていたある夜、僕の前に突然天使が現れた。
父様はその子を僕の妹だと言った。
僕は妹を……智子をとても可愛がり、智子も僕に懐いてくれた。
僕は智子に「兄ちゃま」と呼ばれることが、むず痒くもあり、また嬉しくもあった。
智子は僕の宝物だった。
でも思春期を迎える頃、智子に対する僕の感情は変化を始め……
やがて智子の身体と、そして両親の秘密を知ることになる。
※この作品は、過去に他サイトにて公開したものを、加筆修正及び、作者名を変更して公開しております。

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる