59 / 121
二章 再会は胸を締め付ける
No,51 佐伯との対峙 ⑧
しおりを挟む「まあ、それに私も一応は商売人です。あの子に掛かった費用はいくら成り行きとは言え、確かに他人の領域を遥かに超える金額でした。返済して貰えるなら、まあ、それに越した事はありません」
「でも……しかし中学生の未成年者を、いくらなんでも男娼……」
「豪田さん、私どもの商売は法律の事を言っていたのでは初めから成立しないのです。
現にあの子は法律を無視したところで生活を維持し、多額の負債を返済する事が出来たのですから」
「肯定は絶対に出来ません。
しかし、祐二の過去として現実を受け止めたいと思います」
「いいでしょう。それではその後の既成事実も冷静に受け止めていただきたいと思います」
「お話ください」
「さて、私どもでは特に社会的に著名な方、或いは財力がある方……まあ、いわゆるVIP待遇の方々のために、ある秘密の会合を催しております」
「白馬会ですね」
明彦は玲央から聞いたその名称をつい口走ってしまった。
「おや、玲央ですね?全く困ったものだがまあいい、話は早い。
世の中に少年愛者はごまんとおりますが、皆が皆、単に身体目当てと言う訳でもないのですよ。
芸術家、職人、それに役者や作家も、昔から資質ある少年を保護し 、慈しみ、それを育てる。
まあ、師弟関係に名を借りた男同士の交際なんてものは歴史の裏側を探ればいくらでも例が有るものです。いわゆるパトロンと言うのもその類ですね。
白馬会は単なる高級ウリセンではない。それを私は自負しております。まあ、当然身体の売買も絡みますがね」
「祐二は、そんな中で高値がつく程の資質を持っていたと?」
「豪田さん、間違ってはいけません。これは祐二ではなく、優夜の話なのです。
あの子はみごと優夜になりきり、それを完璧に演じる事が出来た。あくまでも彼は、優夜と言う仮面を被って生きて来たのです。
つまり彼の芯となる祐二としての人格は変わらずその内側に生きている。今も貴方の知っている昔の祐二のまま、何も変わってはいないのです。そこだけは、しっかりと理解してやって欲しいのです」
「分かりました。ここからは僕も祐二ではなく、あくまでも優夜の話としてお聞きしましょう」
明彦は思い至った──祐二の全てを理解するには、あくまでも「優夜」の事は切り離して考えなくてはならないのだと。
24
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

雪を溶かすように
春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。
和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。
溺愛・甘々です。
*物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる