53 / 121
二章 再会は胸を締め付ける
No,45 過酷な生活
しおりを挟む秋本はとにかく酷い男だった。定職にも就かず昼間から酒を飲みゴロゴロしている。
そんな男なのに何故か金回りだけは良かった。食うに困る様子もなく、祐二の事もそれなりに扶養している。
しかし祐二の生活は決して恵まれたものでは無かった。
面目上、義務教育として最低限の中学生ではいられたが、小遣いどころか着るもの食べる物の金さえ満足に与えられなかった。
わざわざ祐二を引き取っておきながら、秋本にはまるで親としての情を注ぐ様子が見られなかったのだ。
それどころか秋本は、何かにつけ祐二を折檻した。もはや理由など無かった。秋本には暴力を楽しむ様子さえ見受けられた。
体中にあざを作り、暗くすさんだ生活を送りながらも、祐二は必死に父親との暮らしに耐えて行こうとしていた。
幸い周りの人間は祐二に好意的あるいは同情的で、そのお陰でずいぶん助けられる事も多かったのだが、しかし祐二はそれに甘える事を恥とする折り目正しい少年に成長していた。
祐二には定期的な通院と携帯薬が必要だったが、そんな祐二を秋本は金食い虫と責め立て、無抵抗の祐二に暴力を振るうのだった。
しかし祐二は健気にも歯を食いしばり、涙を他人に見せる事なく、父親との暮らしに耐えて行こうとしていた。
中学生の祐二にも、多少は自由になる金銭が必要だった。
無理の利かない身体に生まれた祐二にとって新聞配達など務まる筈もないのに、中学生の身で他にどんな仕事があるだろう?それでも祐二は働くしかなかった。
事情を知った新聞販売店の店主が同情心から祐二を雇ってくれた。祐二も必死にそれを務めてはいたが、走れない祐二がたとえ朝一番に出発しても、配達終了は一番遅くなってしまう。当然、配達部数も収入も普通の少年達の半分にも至らなかった。
朝刊の配達のあと遅刻すれすれに登校し、放課後には夕刊を配る。そして疲れ果てて帰宅すれば父親からの折檻が待っているのだ。
(お父さんはどうして?何のために僕を引き取ったんだろう?)
──それは祐二とって常なる疑問だった。
秋本からは親としての情どころか祐二に対してのわずかな好意でさえ感じられないのに、わざわざ今になって引き取ろうとは、一体秋本にとってどんな意味が有ったのだろう。
その理由が判明するのはこの後ずっと先のことである──当時の祐二にはまだ知るよしもなかった。
25
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説


不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~
四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。
ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。
高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。
※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み)
■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。


いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる