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二章 再会は胸を締め付ける
No,43 佐伯との対峙 ⑤
しおりを挟む「彼は優夜としての過去に悩んでいる、と先ほど申しましたよね?
それはつまり、貴方だけが一方的にそれを無きものとしても、彼にとっては何の解決にもならないと言う事なのです。
むしろ貴方は、それを丸ごと呑み込まなければならない。何故ならそれが彼の紛れもない真実であり、歴史なのですから」
「つまり、祐二の全てを受け止めるためには、優夜としての過去にも目を逸らしてはいけないと言うことですか?」
「その通りです。貴方は彼の過去を真正面から受け止め、彼の全てを受け入れると言い切れますか?
友達とか兄弟とか、ありきたりなご返事は御免こうむりたい。そんな同情心にも等しい感情では、彼の人生そのものを受け止める事など出来る筈も無いのですから」
「……愛しています、子供の頃からずっと変わらず!
祐二の為なら今の仕事も豪田家の養子と言う立場も、何もかも捨ててしまっても構わない。全て祐二だけの為に努めてきたのだから」
「分かりました……彼の居場所をお教えしましょう。ただしその前に私の話を聞いていただきます。私の知っている限りの、彼の事情を……」
「佐伯さん、それが祐二のためになるのですね?」
「彼は優夜としての過去を貴方に知られる事を大変に恐れている。その恐怖はこれから先、いつまでも暗い影となり、彼の心を悩ませ続ける事になるでしょう。
彼のその不安を取り除いて上げられるのはこの世に一人、貴方しかいない」
「確かに、そうかも知れません」
「だから私は、敢えてそれを話しておこうと思うのです 。
貴方が本当に彼の全て受け止めようと言うのであれば、貴方はこれから話す私の話を全て受け入れ、何もかも了解した上で彼の元へと行ってやって欲しいのです。
貴方が全てを承知の上で許してくれたとあれば、あの子もいくらかは安心して貴方を迎え入れる事も出来ましょうから」
「分かりました。祐二のことならどんな事でも受け入れましょう。どうぞお聞かせください」
──そして佐伯の話す祐二の過去は、 明彦が思いも寄らぬほど過酷なものだった。
祐二の身の上に関して、明彦は佐伯の事を少なからず恨んでもいたのだが、今あえて祐二の過去を聞いてみると、むしろ祐二にとって佐伯との出会いは幸運だったとさえ言えるのかも知れない──
それ程に、佐伯と出会う以前の祐二の過去は凄惨を極めていた。
(祐二、知らなかった。お前の身にそんな災いが降りかかっていたなんて……!)
佐伯の長い話を静かに聞き入りながら、あまりの悔しさに胸震わせる明彦であった。
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