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二章 再会は胸を締め付ける
No,42 佐伯との対峙 ④
しおりを挟む「あの……聞くところによると、あなたは祐二を特別に扱ってくれているとか」
「え?ああ、なるほど……玲央ですね。あれは口が軽い。それがあれの欠点だ。いつまで経っても優夜とは格が違う」
明彦はハッとした。自分の軽率な発言で玲央の評価を下げてしまった。明彦は瞬時に話題を変えた。
「僕も祐二を捜すために色々とあの街の事を調べました。祐二の仕事は、いわゆるウリセンと言う事なのでしょうか?」
「二丁目のウリセンをご存知なのですね?」
「はい、避けては通れない現実でした」
「なるほど、お話しましょう。
実は、そこに集まる若者たちの多くが普通に帰る家の有る平凡な青年たちなのです。
小遣い稼ぎや単に収入の良いアルバイトを求めてやって来た気軽な者も多いし、SEXについてドライに割り切る事さえ出来れば簡単に日銭を稼げるのも事実です。
ただ、単なる若さを自分の価値と勘違いして奢る者や、知らず知らずのうちに自分を貶め、身を滅ぼしてしまう者も多い。
優夜は彼らと一緒には出来ない。あの子には極上の客だけを付けました、それも不特定に複数と言うのではなく、あくまでも特定の相手を契約の期間内で……」
明彦は思わず白馬会の事を口走りそうになったが辛うじて堪えた。うっかり話せばまた玲央を巻き込む事になるだろう。
「特定の相手を契約の期間内で、と言う事ですね。なるほど、それが虚弱な身体をいとわなければならない祐二に対しての『他人』としては精一杯の思いやりだったとあなたは言いたい訳ですか?」
「とんでもない!あの子は飲み込みが良く回転も早い、非常に優れた資質を持った少年なのです。
この世界は容姿以上にそう言った資質が大きくものを言うのです。 彼に上客が付くのは決して私の贔屓ではありません。彼自身の才覚なのです」
「分かりました。もうその類の話は結構です。僕には優夜としての過去など関係ない。あるのは現在の祐二の事だけです。
どうか祐二の居場所を教えてください。今夜はそれをお聞きするために伺ったのですから」
「あなたは今、優夜としての過去など関係ないとおっしゃいましたね 。ところが彼は、今まさに優夜だからこそ悩み、苦しんでいるのです」
「え?優夜として悩む?」
「パリであなたと出会い、そして別れて以来、彼は片時も忘れること無くあなたの事で思い悩んでいる。私には痛いほどよく分かるのです」
「だから僕は祐二と再会するに当たり、優夜としての過去はきれいさっぱり忘れ、触れないつもりでいるのです。
僕にとって祐二は祐二でしかない。優夜としての過去など僕には関わりの無い事なのです」
そんな明彦に対して、佐伯は困惑の眼差しを向けた。
「さあ困りましたね。私としては、それでは彼を貴方にゆだねる訳には行かなくなる」
「え、それはどう言うことですか?」
明彦の瞳にも、戸惑いの色が浮かんだ。
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