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二章 再会は胸を締め付ける
No,35 明彦の戸惑い
しおりを挟むタクシーが発車し、人心地つくと玲央が話し始めた。
「豪田さんは、優夜さんとはどこまでのお付き合いなんですか?」
「え?あ、それは……俺たちは、実はそう言うんじゃないんだ」
「あの店に来てそう言われても」
「そうか……うん、実は幼馴染をさがしてる」
「幼馴染……なんですね?」
「ああ、そうなんだ」
「ふう~ん」
玲央が明彦の顔を覗き込み、両手で明彦の左手を握った。そしてその手を明彦の太ももに置く。
(あ!)思わず明彦の胸が高鳴った。
「それじゃ、僕にもチャンスは有りますか?」
「え、チャンスって、それはつまり俺が君を……ってこと?」
「うん、でも BLUE BIRDS みたいなウリセンじゃなくて、優夜さんみたいな、ちゃんとした専有契約で」
「それは、どう言うこと?」
「え?」
「実は、俺はそのへん事情がよく分からないんだ。君たちの事を、つまりそのへんのシステムの事を詳しく教えてくれないか?」
「ああ、そうなんだ……」
玲央の言葉がしばらく止まる。どこまで話すべきか思案している様子だ。
「豪田さんは、いわゆるウリセンって知っていますか?」
「うん、俺もこの街のことは色々と調べた。知識としてのウリセンくらいは知ってる」
「え?知識として?それじゃあ、ウリセンを使った事は無いんですね?」
「それは、そうだけど……」
何故か明彦は恥ずかしさを覚えた。24歳にして何も知らず、経験もない自分と比べ、おそらくこのずっと年下の少年は既に数々の経験を経ている事だろう。
「あれ?豪田さん、耳まで紅くして……可愛い……」
「え?」
「あのね豪田さん、勘違いしないで下さいね。ウリセンで男を買うなんて決して自慢になることじゃないんですよ。
豪田さんくらい若くてカッコいいならウリセンなんて使わなくても男に不自由はしないでしょ?モテモテでしょ?
ウリセンなんてね、所詮はお金に余裕のある大人のお遊びなんだから、それも一夜限りのね」
「……そうなのか?」
「あれ?もしかして豪田さんって、ウリセンどころか男と付き合った事すらまだ未経験?」
「わ、悪かったな」
──明彦の動揺は隠せない。
そのうぶな反応に玲央が益々身を乗り出した。
「ああっ、本当にマジで可愛い!」
「おい、ばかにするな……」
と、はにかみながら文句を言う明彦の姿がさらに玲央の琴線に触れる。
(どうした俺?こんな年下の子に翻弄させられるなんて)
戸惑うばかりの明彦だった。
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