35 / 121
一章 黄昏のパリは雪に沈む
………病床の追憶
しおりを挟む「祐ちゃん、大丈夫?
お医者さんはいつもの発作だって言うけど、何だか今回はいつもより息が荒いみたい」
「平気だよ……もう直ぐお薬も効いてくる……僕……そう簡単には死なないから……」
「死ぬなんて馬鹿なこと言うな!」
「うん、そうだね……だって折角アキ兄ちゃんが助けてくれた命だもん……」
「祐ちゃん?」
「あの雪の夜……アキ兄ちゃんが僕に気付いて助けてくれた……」
「そんな事もあったね」
「そうでなければ、きっとあのまま凍え死んでいただろうって、みんな言うよ……?」
「祐ちゃんは憶えていないよね。
あの時の祐ちゃん、本当にまだ小さかったから」
「憶えていないけど……でも、僕が雪を怖がるのはきっとその夜が原因なんだ……」
「大丈夫!雪の夜は俺の布団に入ればいい。一緒に眠れば怖くないよ?」
「そうだね、アキ兄ちゃんと一緒なら平気だね。
それにしても……僕って一体、どこの誰なんだろう?僕、何も分からないんだ。いつの間にかアキ兄ちゃんと一緒にいた……」
「それは俺だって一緒だよ。
ここってみんな、事情が有って預けられている子が多いだろ?本当に身元の分からない子なんて、結局俺たち二人だけだもんな」
「アキ兄ちゃんは僕よりずっといいよ。だってここ来た時、名前も年もちゃんと自分で言えたんでしょう?」
「祐ちゃんだって、そりゃ自分で名前は言えなかったけれど、でも着ていた洋服にちゃんと漢字で秋本祐二って書いてあったんだ。確実だよ。
俺なんて、加藤明彦って名前だって本当かどうか分かったもんじゃない。だって俺、4歳だったんだよ?もしかしたら、本当はサトウアキヒトだったのかも知れないし」
「僕がここ来た時って、2歳だったんだよね?」
「ああ……そうだよ……?」
「それって……誰が決めたの?」
「……お医者さんだよ?」
「ふ~ん……それじゃ僕たち、4歳違いだって事にはなってるけど、本当はどうだか分からないよね?」
「そうだよね、何だか俺、祐ちゃんより10歳も年上な感じがするよ?」
「ええ~っ!僕ってそんなに幼稚~?!」
「へっへっへ」
「ひどいな、よし、僕一生懸命勉強してアキ兄ちゃんより先に大人になってやる!」
「だから祐ちゃん、勉強すれば大人になれると思っているのが子供だよ」
「え?、あ、うん……」
26
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~
四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。
ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。
高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。
※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み)
■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ナラズモノ
亜衣藍
BL
愛されるより、愛したい……そんな男の物語。
(※過激表現アリとなっております。苦手な方はご注意ください)
芸能界事務所の社長にして、ヤクザの愛人のような生活を送る聖。
そんな彼には、密かな夢があった――――。
【ワルモノ】から十年。27歳の青年となった御堂聖の物語です。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
愛玩人形
誠奈
BL
そろそろ季節も春を迎えようとしていたある夜、僕の前に突然天使が現れた。
父様はその子を僕の妹だと言った。
僕は妹を……智子をとても可愛がり、智子も僕に懐いてくれた。
僕は智子に「兄ちゃま」と呼ばれることが、むず痒くもあり、また嬉しくもあった。
智子は僕の宝物だった。
でも思春期を迎える頃、智子に対する僕の感情は変化を始め……
やがて智子の身体と、そして両親の秘密を知ることになる。
※この作品は、過去に他サイトにて公開したものを、加筆修正及び、作者名を変更して公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる