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一章 黄昏のパリは雪に沈む
No,26 明彦の返信
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祐二、今俺がどんな気持ちでこの手紙を書いているか分かるか?
悲しみ。怒り。
嘆き。苛立ち。
いや、どんな言葉でも今の俺の心境を的確に表現は出来ない。
何故行ってしまった!
何故また離れてしまった!
約束通り、おまえを連れ出すため侯爵邸へ向かおうとしたその時、ホテルのフロントからあの手紙を受け取った。
あの手紙が俺にとってどれほどの衝撃だったか、どれほど俺を強く打ちのめしたか、おまえには分かるはずだ。
それでも俺は直ぐに侯爵邸へ駆け付けた。
たとえ会えなくても、おまえの向かう行き先が知りたかった。おまえの情報はもう、あの侯爵邸にしか無いのだから。
しかし侯爵邸の連中は口を揃えて優夜など知らない、佐伯の事も知らないと、皆かたくなに言い張る。
この手紙はそんな騒ぎを聞きつけ、玄関先まで姿を見せてくれた侯爵ご本人が「それなら手紙を書きなさい」と勧めて下さっての事だ。
俺は侯爵のご厚意に甘えるしか無い。それしかおまえと繋がる伝手が無いのだ。
そして今、急ぎ侯爵邸でこれを走り書きしている。
だからこの手紙が本当におまえの手に渡るのかどうかとても心配だけれど、でも俺は侯爵を信じたい。信じるしか無い。
祐二、この手紙を読んだのなら今直ぐ連絡をくれ!
おまえが気に病んでいる心配や遠慮は全て筋違いなものだ。
俺にはおまえが必要なんだ!
おまえは俺の希望なんだ!
おまえが実の父親に引き取られたと聞いた時、もう俺の出る幕は無いのかと目標を失った時もあったけれど、でもおまえと再会し、おまえの現状を知った今、どうしておまえを諦められる!
おまえを忘れるなんて俺には出来ない!
だから祐二、俺をこれ以上泣かせないでくれ。
この手紙を侯爵に託す。
だからこれを見たら直ぐに居所を知らせれ欲しい。必ずこの手紙はおまえの元に届くと信じているから──。
祐二へ
──────明彦より
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