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一章 黄昏のパリは雪に沈む
No,22 断ち切られた絆
しおりを挟む明彦の脳裏に、ふと心の奥に仕舞い込んでいた気掛かりが浮かび上がった。
「俺が豪田家に入ってから何年目だったかな?
おまえが実の父親に引き取られたって話を聞いた」
「アキ兄ちゃん、それは本当だよ。全く音沙汰の無かった父親が、ある日突然迎えに来たんだ」
「それっきりおまえの居場所が分からなくなった。
俺、何度も園長先生に聞いたんだ。でも教えて貰えなかった。それは教えられない、そう言う決まりだからって……
それに……祐二の幸せを願うなら、むしろ距離を置いた方が良いだろうとも言われた……」
「でも僕は、それでも手紙を出し続けていたんだよ?父親の元に引き取られてからも……
でも、その手紙もアキ兄ちゃんの元へは届いていなかっんだね」
「便りが無いのは無事な証拠って言うだろ?俺はてっきり、おまえは父親の元で幸せに暮らしているものだとばかり思い込んでた。
だとしたら……もうおまえに俺なんて必要ないのかと……」
悔恨の思いに顔を歪める明彦に対し、優夜は逆に悲しい程の笑顔を浮かべた。
「嬉しい……僕はずっと……
今までずっと、アキ兄ちゃんに見捨てられたとばかり思っていた。
でも、そうじゃなかった……
アキ兄ちゃんが僕の事を気に掛けていてくれたなら……僕はもう、それだけで十分だ……」
「祐二、もう大丈夫だ。今こうして二人は巡り会えた。何年もの空白の時間でさえ、俺たち二人を切り離す事は出来なかった。
これからは俺がついてる!
もう、おまえにこんな事はさせない!」
明彦の確固たる決意に対して、優夜は苦しげに睫毛を伏せた。
「アキ兄ちゃんは、僕が今までどんな事をして来たか……何も知らないから……」
「辛かったんだろうな。
でも、俺にはおまえの過去なんて関係ない。
俺にとっておまえは、今でも昔のままの祐二なんだ。あの頃と何も変わらない!」
優夜の瞳から流れる涙が止まらない。
「アキ兄ちゃん……こうして会える日をどんなに願っていたか……
それなのに……それなのに僕は……」
優夜は汚れた過去を恥じるのだった。自分の犯しできた過ちを、明彦には決して知られたくない。
「俺は、直ぐにもあの佐伯と言う男に会う。おまえを引き取れるように俺が話を付ける!」
「え!」
──瞬間、優夜の目が驚愕に見開いた。
「いけない!いけないよそんな事!僕に、僕なんかに関わっちゃいけない!」
「何を言ってる?
やっとこうして巡り会えたのに、それなのにどうして俺がおまえを放っておける?」
明彦の激しい気迫に一瞬優夜はたじろいだ。
が、しかし、明彦の気性を良く知っている優夜は黙って静かに睫毛を伏せた。
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