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一章 黄昏のパリは雪に沈む
………別離の追憶
しおりを挟む「アキ兄ちゃん本当に?やっぱりどうしても行っちゃうの?」
「ああ、仕方がないんだ。どのみち中学校を卒業したらこの施設は出て行かなきゃならないし、そうしたら俺達の夢は叶わなくなってしまう」
「そんな、僕は離れたくないよ!絶対に嫌だ!」
「分かってくれよ祐ちゃん。俺はいつかきっと家を買うんだ。俺たち二人の家を……!」
「だから!それは二人で頑張って……」
「祐ちゃん……だって俺達、このままじゃろくに高校へだって行けないだろ?二人でどれだけ頑張っても……家なんて持てやしない。
豪田さんは、俺を東京一の高校へ進学させてくれるって言うんだ。それに大学も……」
「だけど大丈夫?
豪田さんは確かにお金持ちだし、周りのみんなはそんな家の養子になれれば最高だなんて簡単に言うけど、豪田さんなんて、単にアキ兄ちゃんの優秀な成績に目を付けただけじゃないか。きっと、何か魂胆が有るに決まってるんだ!
それで本当にいいの?本当にそれで幸せになれるの?」
「分かってる。
確かに俺の名前が全国模試の優秀者として公表されていなかったら、きっとこんな絵空事のような養子縁組の話なんて、普通は持ち上がる事も無かっただろうな」
「アキ兄ちゃん、だったら!」
「だけど、いや!だからこそチャンスだと思うんだ。こんな機会を逃したら、家を買うどころか俺達まともに食って行けやしない。
豪田さんが俺の成績しか見ていないって言うならむしろ対応は簡単だ。勉強すりゃいいんだ!勉強さえ頑張れば認めて貰えるんだし、道は必ず開ける!」
「いらない!家なんていらない!ボクはアキ兄ちゃんと居られればそれでいいんだ!
行かないで?
離ればなれは嫌だよ!
ボクはアキ兄ちゃんとずっと一緒に居たいんだ!」
「泣くなよ祐ちゃん、俺だっておまえと離れたくはないんだ。だけど、このままじゃどうにもならないって分かるだろ?」
「アキ兄ちゃん、それは……」
「俺が勉強して身を立てて、豪田家の一員として自立出来たら必ず迎えに来る!
それまでだって、俺たち別に音信不通になる訳じゃないし、離れて暮らしていても俺たちの仲は何も変わらないよ!祐ちゃんの高校だって、何とか俺が考える」
「高校なんて行かなくてもいい!僕だって働いて、自分の事くらい何とかする!
それより約束だよ?
このまま会えなくなったりしないんだよね?
必ずいつかは一緒なんだよね?」
「ああ、もちろんだ!
東京に行っても連絡は絶やさないから!」
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