これはドラマ「チェリまほ」の感想投稿文の履歴なのです

歴野理久♂

文字の大きさ
上 下
177 / 182
第16章 jim アメブロを始める

No,177 童貞⇒波紋が広がる

しおりを挟む


 4年目。

 自分のしでかしたことが橘にバレてしまうのが、さらに怖くなった。
 橘は僕を嫌っているだろう、憎んでいるだろう。
 おぞましい男だと、思っているだろう。
 でもそれは、あたりまえのことだ。
 あの一件をただの不幸な事故、コドモの過ちだと信じている彼に、真実など話せるわけがない。
 彼の兄も、死ぬまで僕から離れられない橘のために、真実を隠し通すことを決めたらしい。
 父にも言うなと釘を刺された──どうにも、橘の兄に嫌われたくないようだ。
 ましてや好きだなんて言えるわけがなかった。だって、知られたらきっと軽蔑される。この気持ちは絶対に悟られちゃいけない。
 橘にこれ以上嫌われたら、僕は死んでしまう。
 けれども、好意以外の感情で彼と接するのは難しかった。
 なにしろ僕は性格が悪いのだ。橘にも言われた通り。
 普通の顔をして、橘と何を話せばいいかわからないし、緊張して口が空回り、皮肉や嫌味しか出てこない……これは元来の僕の性格が原因かもしれないけれど。
 でも、僕が冷たい言葉を吐き捨ててしまうたびに、『なんでそーゆーこというんだよ』なんてムスッとした唇を突き出して、僕を睨んでくる橘は可愛い。
 可愛い、可愛い。
 僕はいつだって、橘の背中に天使の羽が生えているように見える。
 この4年間、ずっとずっと橘は可愛かった。
 本当は、その突き出た唇が腫れるくらい吸ってしまいたい。ヒート中は、彼の足腰が立たなくなるぐらいめちゃくちゃにして犯してしまいたい。
 ヒートが終わっても、彼を部屋から出したくない。
 三日間以上同じ家の中にいるというのに、一日たった数回の、ごく普通の交わりでコトが終わってしまうなんて。
 彼の兄がいる家になんて、帰したくない。
 次にまともに会えるのが数か月後も先だなんて、信じられない。
 いっそのこと、このまま家に閉じ込めてしまおうか。金ならある。僕しか鍵を持たない地下室でも作って、橘をそこに突っ込んで──なんて、相も変わらず、そんなことばかり考えている自分の浅ましさに反吐が出た。
 一歩間違えれば、ヒートもなにも関係なく彼を襲い、その身体を余すところなく貪り尽くしてしまいそうだった。

 自分のおぞましい衝動を抑えるために、嗜好品に手を出し始めたのはこの頃からだ。

 橘を求めて寂しがる口が咥えたのは、煙草。しかもスゥッと鼻を突き抜けるメンソール系。
 清涼感のある爽やかなミントの香は、こんな関係になる前に手に入れた橘のリップクリームと、よく似ている香りだった。
 これが一番、橘の唇の味に近い気がした。

 あの頃の思い出に必死に縋り付いて日々を生きる。
 そんな惨めな4年目だった。








 ──────
 淡々と、姫宮視点の最期の章(後篇)が始まります。
 お付き合いいただけると嬉しいです。


 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

B型の、B型による、B型に困っている人の為の説明書

メカ
エッセイ・ノンフィクション
「あいつB型っしょ、まじ分からん。」 「やっぱ!?B型でしょ?だと思った。」 「あぁ~、B型ね。」 いやいや、ちょっと待ってくださいよ。 何でもB型で片付けるなよ!? だが、あえて言おう!B型であると!!

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...