13 / 16
1章 孤独との闘い
十品目 翼竜のシチュー
しおりを挟む
食に飢えたエルフの女性に、村の食材でも作れそうなレシピを提供する事約一週間‥‥‥やっと解放してもらえた。
パスタを作った時に食糧庫から無くなってしまったので、魔石を使ってパスタを補充してあげたんだけど、俺が居なくなるといつパスタが入るか分からないとか揉め始めて、結局食糧庫をもう1つ増やしパスタ専用にしていた。
毎日3食エルフの皆がパスタを食べ続けたとしても余裕で数年は持ちそうな量を魔石から取り出しているとアルフィリオンがやってきた。
「シン君の料理のおかげで皆は忘れていた食の楽しさや喜びを思い出したみたいでね‥‥‥いやー本当にすまないね。いや、この場合はありがとう、かな」
「エルフの皆が楽しそうに食事をしてるのが見れて嬉しいですから。それに俺の方こそ長い間滞在させてもらってありがどうございます」
「ははっ。そう言ってもらえると助かるよ。ところで、ずっと気になっていたんだけどその魔石からパスタを出してるのはシン君の固有スキルかなんかかい?」
「え?佐藤‥‥‥いや、ユウジさんは使ってなかったんですか?」
「ユウジ君は魔石から魔法を放ったりしていたけど、そんな事してるのは見た事ないよ?そもそも‥‥‥」
魔石は魔道具の原料になるだけで、魔石に内包している魔力を使って魔法を使うことをこの世界の人はできないと言われたのには驚いた。それに、俺が使えてユウジさんが使えなかったのは一体なんでだ?もし会えたら聞いてみよう。
普通はこの世界に魔素と呼ばれる物が存在して、それを取りこむ事によって魔法を使えるようになるんだと。
そう言ってアルフィリオンは人差し指を立てると小さな火を出してくれた。
「おぉ!凄い‥‥‥熱くないんですか?」
「ははっ。この火は自分の魔力で作っているからね。だから使用者にはなんの影響もないんだよ。ところで、この後シン君は人間の村に行くんだよね?」
そうだった‥‥‥なんだか久しぶりの人との交流が楽しくて、つい滞在期間が長くなってしまった。
「はい。まずは近くの村に寄ってみようと思います。場所とか教えてもらえると助かるんですが‥‥‥」
「それには及ばないよ。リーシアもそろそろ人間の世界を見に行ってほしかったからね。こんな狭い世界で生活するんじゃなくてもっと広い世界を体験してきてほしいんだ。近くの村までリーシアに案内させるから、その後行動を共にするかは2人で相談するといいよ」
アルフィリオンは視線を俺から外したから俺もその方向を見ると、ノワルに纏わりついているリーシアとエルフの子供たちがいた。ノワルは最初こそ煩わしそうにしていたけど、もう慣れたみたいで目をつぶって大人しくしている。
そんな様子を見ていると1人のエルフの子供がやってきた。
「なぁなぁ!ノワルはなんて魔物なの?」
「うーん……分からないんだよね。アルフィリオンは知ってます?」
「僕も姉さんのせいで外の世界にはそこまで詳しくはないけど、正直見た事はないかな。シン君は魔物の強さを一目で分かる方法って知ってるかい?」
「んー‥‥‥大きさとか?」
「ははっ。それも間違いではないんだけどね。正解をいうと色だよ」
「色‥‥‥?」
「そう。魔物の強さはその色で判断できる。おおまかに分けると青、緑、赤、白、黒だね。青が弱くて黒が強い。勿論、黒色のスライムが青色のドラゴンより強いかって言ったらそういうわけではないんだけどね。まぁ基準としてはこうなってるね」
「という事はノエルって黒だから強いって事?」
「ノエルの場合は純粋な黒ではなく『黒金』だね。古代龍も黒金らしいから始めて見た時は冷や汗をかいたよ」
どうりで強いわけだな。でも最初ノワルに会った時は茶色がかった黒色だったけど、どんどん黒色になってったんだよな‥‥‥。そんなことを考えていると、
「人間の街にでも行けば分かるかもしれないね。村の皆には僕から話しておくから明日の朝にでも出るといいよ。このままここに居るとまたエルフの女性に捕まってしまうからね」
その言葉を俺は否定する事が出来なかった。現にエルフの女性に捕まるから中々人間の村に行くことが出来なかったのだから。それでも、嫌だとかそんな事は思わなかったし、むしろ楽しかったんだけどな。
次の日の朝、門の所には大勢のエルフが見送りに来てくれた。ありがたいことに「また来いよ」とか言われながらリーシアと一緒に人間の村に出発した。
「なぜにリーシアがゴマに乗ってて、俺が歩いて移動してるんだ?」
「人間の村に案内してやっているのだぞ?細かい事はきにするな」
ゴマの事をモフりながらキリッとした顔で言うのはやめてくれ‥‥‥。そしてゴマも主人である俺を乗せて歩けよ。いや、主人ではないな。料理担当か‥‥‥自分で言ってて悲しくなるわ。
「‥‥‥まぁいいけどさ。それで村までどのくらいかかるんだ?」
「そうだな‥‥‥後30分くらいじゃないか?」
「なぜに疑問形?迷ってるわけじゃないよな‥‥‥?」
「‥‥‥」
「マジか‥‥‥」
エルフの村を出て2時間弱、どうやらまたもや森の中で迷子になったらしい。
「人間の村に行くのはまだ私が子供の頃にお父様に連れて行ってもらったのが最後だから仕方ないであろうッ!!」
「それ胸を張って言う事か?んで?子供の頃って何歳の時の話だよ」
「‥‥‥27位の時だ」
「はぁ?それって何年前の話だよ」
「50年は経ってないと‥‥‥思う」
衝撃だった。いや、そんなに昔なのかよ!とかそういうことではなくて、リーシアの年齢が80歳近くだって事が。じゃああのエルフの子供も俺と同い年くらいって事なのか‥‥‥?
「そ、そうか。なら村までの道を忘れるのはしょうがないな」
「そうだろう?これは仕方のない事なのだッ!決して私が悪いわけではない」
正直、リーシアの年齢が衝撃すぎてこの後何を話していたか覚えてない。見た目は20代くらいなのにな‥‥‥。
そんな事を考えているとようやく森の切れ目が見えてきた。
「やはりこの道で合っていたな。ちんたら歩いてないでさっさと行くぞ!」
「こっちはずっと歩いてるから疲れてるんだよ‥‥‥」
森を出るとそこは草原。村なんてどこにも無かった。
「リーシアさん‥‥‥」
「いきなり改まってどうした?気持ち悪いぞ」
「そこは別にいいだろ。俺が聞きたいのは村なんて何処にもないんだけど」
「この森の近くに村なんて作れるわけないだろう?シンは戦闘をノワル殿に任せているから知らないだろうが、エルフの戦士でも油断すればやられかねない魔物が、この森の中を歩き周っているのだぞ?」
「‥‥‥つまり村まで後どのくらいだ?」
「以前と変わらない場所にあるなら歩いて1か月程だな」
言われてみればそうだよな‥‥‥。森を歩いてれば数十分に1回魔物が襲い掛かってくる森の近くに村なんか作らないよな。でもまさか歩いて1か月もかかるとは‥‥‥。
「まぁ気長にのんびりと行くか」
「‥‥‥シンよ。どうやらそういうわけにもいかなくなったようだぞ?」
リーシアが上を見ながら呟いたから俺もつられて上を見ると、はるか上空で何かが飛んでいる。距離が離れすぎていて小さく見えるけど、それはどんどん俺達に近づいてきた。
「【翼竜】か‥‥‥逃がしてはくれんようだな。シンはゴマと一緒に離れていろッ!私がやる」
リーシアの指示に従い俺とゴマは少し離れた場所で待機することにした。その間にもどんどん翼竜は近づいてきて、ついにその姿が俺でも見えるくらいの場所まで来た。
全身緑色の堅そうな鱗で覆われていて、まるでゲームに出てくるドラゴンの様に見えた。
「Gruuuu!!!」耳を咄嗟に塞いでしまう程の咆哮を翼竜は放っているのに、リーシアは弓を構えて微動だにしていなかったし、ノワルは大きな欠伸をしていた。
そんな態度に腹を立てたのか分からないけど、翼竜はリーシアを一飲みにしようと大きな口を開けて急降下してきた。
「リーシアッ!!」
危ないッ!そう思い咄嗟に叫んだけど、リーシアは翼竜を限界まで引き付けた後に弓を放った。一直線に飛んでいく矢は寸分のくるいもなく翼竜の右目に突き刺さった。
「GAAAAAAAA!!」
あまりの痛みに地面に墜落した翼竜は地面で暴れ回っている。
「耳障りな声を響かせおって‥‥‥たかがでかいだけのトカゲにやられる程、エルフの戦士は弱くはない」
そう言うとリーシアは暴れ回っている翼竜に近づき剣で頭を一太刀で切り落とした。
その光景をみて俺はリーシアを絶対に怒らせないと決めた。
「さて、もうそろそろすると日も暮れる。今日はここで野営でもするぞ」
言われてみればもう太陽は西に傾いていたので、俺は野営の準備に取り掛かる事にした。ノワルに手伝ってもらいながらワイバーンを木にぶら下げて血抜きをして、落ちている枯れ木などを集めているとリーシアが腰につけていたポーチに手を突っ込んでテントを出した。
明らかにポーチの大きさからして絶対に入らない大きさのテントを出してきたので驚いて固まっていると、
「ジロジロ見てなんなんだ?これは私が寝るためのテントだからな?」
ギュッとテントを抱きしめるリーシアはとても可愛い‥‥‥
「じゃなくてだな。そのポーチから今出したよな?」
「ん?そうかお前は知らないのか」
リーシアの持っているポーチはマジックポーチというらしく、見た目よりもたくさんの物を入れれるらしい。容量の制限などあるらしいけどリーシアの持っているポーチは翼を広げれば10メートルくらいありそうな翼竜くらいなら余裕で入るらしい。
「それよりも腹が減ったな‥‥‥料理は私よりシンの方が得意なのだから頼めるか?」
「そうだな。じゃあ今日は『翼竜のシチュー』でも作るか」
ノワルとゴマも腹が減ってるみたいで早く作れとうるさいので早速取り掛かることにする。リーシアに教わりながら解体をしていくけど、全部となると暗くなってしまうから一番美味しいらしい尻尾の部分だけを解体して、残りはマジックポーチに入れてもらった。
翼竜の肉を焼いて食べてみたけど、鶏肉に近い感じの肉質で見た目からは想像できないほどに柔らかいし、何より美味いッ!
半分はそのままステーキにでもして食べるかと思いつつ、シチューの準備を進めていく。
まずはジャガイモ、人参、玉ねぎを賽の目状に切っていく。肉は一口大に切っておこうか。
油を引いた鍋に翼竜の肉と野菜を入れて塩コショウで軽く味付けをして炒めていく。玉ねぎが透明になるまで炒めたら、一旦火から離して小麦粉を入れて混ぜ合わせていこう。
全体に小麦粉が馴染んできたら牛乳と水とコンソメを入れてかき混ぜる。
うん。だんだんいい匂いがしてきたな・・・。煮立ってきたら弱火にして焦げないようにかき混ぜような。とろみがついてきたら、器に盛って上からパセリをかければ完成ッ!!
「あッ!!悪い‥‥‥エルフは肉食べないんだよな」
「ん?いや、全く食べないというわけでもないぞ?わざわざ魔物を狩りに行ってまで食べないというだけだ。それにしてもシチュー?という物は初めてだが美味しそうじゃないか」
「なら良かったよ。じゃあ遠慮せずに食べてくれ。」
完全にノワル達の分を取り分けるのを忘れていて、いつもの様に尻尾で叩かれる。忘れてた俺も悪いけどさ。ノワル達は大食いだから尻尾のステーキも付け加えておいた。
「美味しい‥‥‥野菜の旨みがこのトロッとしたスープに溶け込んでいて身体が温まるだけじゃなく、不思議と心まで温かくなるな。始めて食べたと言うのに、以前から食べているかのような安心感があるな」
「そりゃ良かった。じゃあ俺も‥‥‥うめぇ。野菜だけの旨みじゃなくて、肉の旨みまでスープに凝縮されてやがる。スープにこれだけ肉の旨みがいってるから、肉はそうでもないと思ったけどそんな事はないな。噛んだ瞬間に肉の旨みが溢れ出てきやがる」
「随分と饒舌だな。まぁそれくらい美味いからな。ところで前から思っていたのだが‥‥‥ノワル殿の尻尾で叩かれて良く無事でいられるな」
「ん?ノワルが手加減してるからだろ?流石にノワルが本気で叩いたら俺なんかペシャンコになってしまうよ」
「いや、そこまでノワル殿は手加減しているようには‥‥‥まぁお前が少々頑丈だという事にしておくか」
「???」
リーシアの言ってる事が理解が出来なかったけど、まぁ納得?してくれたからいいか。その後はリーシアはテントに入り、俺はノワルとゴマにくっつきながら寝る事にした。
パスタを作った時に食糧庫から無くなってしまったので、魔石を使ってパスタを補充してあげたんだけど、俺が居なくなるといつパスタが入るか分からないとか揉め始めて、結局食糧庫をもう1つ増やしパスタ専用にしていた。
毎日3食エルフの皆がパスタを食べ続けたとしても余裕で数年は持ちそうな量を魔石から取り出しているとアルフィリオンがやってきた。
「シン君の料理のおかげで皆は忘れていた食の楽しさや喜びを思い出したみたいでね‥‥‥いやー本当にすまないね。いや、この場合はありがとう、かな」
「エルフの皆が楽しそうに食事をしてるのが見れて嬉しいですから。それに俺の方こそ長い間滞在させてもらってありがどうございます」
「ははっ。そう言ってもらえると助かるよ。ところで、ずっと気になっていたんだけどその魔石からパスタを出してるのはシン君の固有スキルかなんかかい?」
「え?佐藤‥‥‥いや、ユウジさんは使ってなかったんですか?」
「ユウジ君は魔石から魔法を放ったりしていたけど、そんな事してるのは見た事ないよ?そもそも‥‥‥」
魔石は魔道具の原料になるだけで、魔石に内包している魔力を使って魔法を使うことをこの世界の人はできないと言われたのには驚いた。それに、俺が使えてユウジさんが使えなかったのは一体なんでだ?もし会えたら聞いてみよう。
普通はこの世界に魔素と呼ばれる物が存在して、それを取りこむ事によって魔法を使えるようになるんだと。
そう言ってアルフィリオンは人差し指を立てると小さな火を出してくれた。
「おぉ!凄い‥‥‥熱くないんですか?」
「ははっ。この火は自分の魔力で作っているからね。だから使用者にはなんの影響もないんだよ。ところで、この後シン君は人間の村に行くんだよね?」
そうだった‥‥‥なんだか久しぶりの人との交流が楽しくて、つい滞在期間が長くなってしまった。
「はい。まずは近くの村に寄ってみようと思います。場所とか教えてもらえると助かるんですが‥‥‥」
「それには及ばないよ。リーシアもそろそろ人間の世界を見に行ってほしかったからね。こんな狭い世界で生活するんじゃなくてもっと広い世界を体験してきてほしいんだ。近くの村までリーシアに案内させるから、その後行動を共にするかは2人で相談するといいよ」
アルフィリオンは視線を俺から外したから俺もその方向を見ると、ノワルに纏わりついているリーシアとエルフの子供たちがいた。ノワルは最初こそ煩わしそうにしていたけど、もう慣れたみたいで目をつぶって大人しくしている。
そんな様子を見ていると1人のエルフの子供がやってきた。
「なぁなぁ!ノワルはなんて魔物なの?」
「うーん……分からないんだよね。アルフィリオンは知ってます?」
「僕も姉さんのせいで外の世界にはそこまで詳しくはないけど、正直見た事はないかな。シン君は魔物の強さを一目で分かる方法って知ってるかい?」
「んー‥‥‥大きさとか?」
「ははっ。それも間違いではないんだけどね。正解をいうと色だよ」
「色‥‥‥?」
「そう。魔物の強さはその色で判断できる。おおまかに分けると青、緑、赤、白、黒だね。青が弱くて黒が強い。勿論、黒色のスライムが青色のドラゴンより強いかって言ったらそういうわけではないんだけどね。まぁ基準としてはこうなってるね」
「という事はノエルって黒だから強いって事?」
「ノエルの場合は純粋な黒ではなく『黒金』だね。古代龍も黒金らしいから始めて見た時は冷や汗をかいたよ」
どうりで強いわけだな。でも最初ノワルに会った時は茶色がかった黒色だったけど、どんどん黒色になってったんだよな‥‥‥。そんなことを考えていると、
「人間の街にでも行けば分かるかもしれないね。村の皆には僕から話しておくから明日の朝にでも出るといいよ。このままここに居るとまたエルフの女性に捕まってしまうからね」
その言葉を俺は否定する事が出来なかった。現にエルフの女性に捕まるから中々人間の村に行くことが出来なかったのだから。それでも、嫌だとかそんな事は思わなかったし、むしろ楽しかったんだけどな。
次の日の朝、門の所には大勢のエルフが見送りに来てくれた。ありがたいことに「また来いよ」とか言われながらリーシアと一緒に人間の村に出発した。
「なぜにリーシアがゴマに乗ってて、俺が歩いて移動してるんだ?」
「人間の村に案内してやっているのだぞ?細かい事はきにするな」
ゴマの事をモフりながらキリッとした顔で言うのはやめてくれ‥‥‥。そしてゴマも主人である俺を乗せて歩けよ。いや、主人ではないな。料理担当か‥‥‥自分で言ってて悲しくなるわ。
「‥‥‥まぁいいけどさ。それで村までどのくらいかかるんだ?」
「そうだな‥‥‥後30分くらいじゃないか?」
「なぜに疑問形?迷ってるわけじゃないよな‥‥‥?」
「‥‥‥」
「マジか‥‥‥」
エルフの村を出て2時間弱、どうやらまたもや森の中で迷子になったらしい。
「人間の村に行くのはまだ私が子供の頃にお父様に連れて行ってもらったのが最後だから仕方ないであろうッ!!」
「それ胸を張って言う事か?んで?子供の頃って何歳の時の話だよ」
「‥‥‥27位の時だ」
「はぁ?それって何年前の話だよ」
「50年は経ってないと‥‥‥思う」
衝撃だった。いや、そんなに昔なのかよ!とかそういうことではなくて、リーシアの年齢が80歳近くだって事が。じゃああのエルフの子供も俺と同い年くらいって事なのか‥‥‥?
「そ、そうか。なら村までの道を忘れるのはしょうがないな」
「そうだろう?これは仕方のない事なのだッ!決して私が悪いわけではない」
正直、リーシアの年齢が衝撃すぎてこの後何を話していたか覚えてない。見た目は20代くらいなのにな‥‥‥。
そんな事を考えているとようやく森の切れ目が見えてきた。
「やはりこの道で合っていたな。ちんたら歩いてないでさっさと行くぞ!」
「こっちはずっと歩いてるから疲れてるんだよ‥‥‥」
森を出るとそこは草原。村なんてどこにも無かった。
「リーシアさん‥‥‥」
「いきなり改まってどうした?気持ち悪いぞ」
「そこは別にいいだろ。俺が聞きたいのは村なんて何処にもないんだけど」
「この森の近くに村なんて作れるわけないだろう?シンは戦闘をノワル殿に任せているから知らないだろうが、エルフの戦士でも油断すればやられかねない魔物が、この森の中を歩き周っているのだぞ?」
「‥‥‥つまり村まで後どのくらいだ?」
「以前と変わらない場所にあるなら歩いて1か月程だな」
言われてみればそうだよな‥‥‥。森を歩いてれば数十分に1回魔物が襲い掛かってくる森の近くに村なんか作らないよな。でもまさか歩いて1か月もかかるとは‥‥‥。
「まぁ気長にのんびりと行くか」
「‥‥‥シンよ。どうやらそういうわけにもいかなくなったようだぞ?」
リーシアが上を見ながら呟いたから俺もつられて上を見ると、はるか上空で何かが飛んでいる。距離が離れすぎていて小さく見えるけど、それはどんどん俺達に近づいてきた。
「【翼竜】か‥‥‥逃がしてはくれんようだな。シンはゴマと一緒に離れていろッ!私がやる」
リーシアの指示に従い俺とゴマは少し離れた場所で待機することにした。その間にもどんどん翼竜は近づいてきて、ついにその姿が俺でも見えるくらいの場所まで来た。
全身緑色の堅そうな鱗で覆われていて、まるでゲームに出てくるドラゴンの様に見えた。
「Gruuuu!!!」耳を咄嗟に塞いでしまう程の咆哮を翼竜は放っているのに、リーシアは弓を構えて微動だにしていなかったし、ノワルは大きな欠伸をしていた。
そんな態度に腹を立てたのか分からないけど、翼竜はリーシアを一飲みにしようと大きな口を開けて急降下してきた。
「リーシアッ!!」
危ないッ!そう思い咄嗟に叫んだけど、リーシアは翼竜を限界まで引き付けた後に弓を放った。一直線に飛んでいく矢は寸分のくるいもなく翼竜の右目に突き刺さった。
「GAAAAAAAA!!」
あまりの痛みに地面に墜落した翼竜は地面で暴れ回っている。
「耳障りな声を響かせおって‥‥‥たかがでかいだけのトカゲにやられる程、エルフの戦士は弱くはない」
そう言うとリーシアは暴れ回っている翼竜に近づき剣で頭を一太刀で切り落とした。
その光景をみて俺はリーシアを絶対に怒らせないと決めた。
「さて、もうそろそろすると日も暮れる。今日はここで野営でもするぞ」
言われてみればもう太陽は西に傾いていたので、俺は野営の準備に取り掛かる事にした。ノワルに手伝ってもらいながらワイバーンを木にぶら下げて血抜きをして、落ちている枯れ木などを集めているとリーシアが腰につけていたポーチに手を突っ込んでテントを出した。
明らかにポーチの大きさからして絶対に入らない大きさのテントを出してきたので驚いて固まっていると、
「ジロジロ見てなんなんだ?これは私が寝るためのテントだからな?」
ギュッとテントを抱きしめるリーシアはとても可愛い‥‥‥
「じゃなくてだな。そのポーチから今出したよな?」
「ん?そうかお前は知らないのか」
リーシアの持っているポーチはマジックポーチというらしく、見た目よりもたくさんの物を入れれるらしい。容量の制限などあるらしいけどリーシアの持っているポーチは翼を広げれば10メートルくらいありそうな翼竜くらいなら余裕で入るらしい。
「それよりも腹が減ったな‥‥‥料理は私よりシンの方が得意なのだから頼めるか?」
「そうだな。じゃあ今日は『翼竜のシチュー』でも作るか」
ノワルとゴマも腹が減ってるみたいで早く作れとうるさいので早速取り掛かることにする。リーシアに教わりながら解体をしていくけど、全部となると暗くなってしまうから一番美味しいらしい尻尾の部分だけを解体して、残りはマジックポーチに入れてもらった。
翼竜の肉を焼いて食べてみたけど、鶏肉に近い感じの肉質で見た目からは想像できないほどに柔らかいし、何より美味いッ!
半分はそのままステーキにでもして食べるかと思いつつ、シチューの準備を進めていく。
まずはジャガイモ、人参、玉ねぎを賽の目状に切っていく。肉は一口大に切っておこうか。
油を引いた鍋に翼竜の肉と野菜を入れて塩コショウで軽く味付けをして炒めていく。玉ねぎが透明になるまで炒めたら、一旦火から離して小麦粉を入れて混ぜ合わせていこう。
全体に小麦粉が馴染んできたら牛乳と水とコンソメを入れてかき混ぜる。
うん。だんだんいい匂いがしてきたな・・・。煮立ってきたら弱火にして焦げないようにかき混ぜような。とろみがついてきたら、器に盛って上からパセリをかければ完成ッ!!
「あッ!!悪い‥‥‥エルフは肉食べないんだよな」
「ん?いや、全く食べないというわけでもないぞ?わざわざ魔物を狩りに行ってまで食べないというだけだ。それにしてもシチュー?という物は初めてだが美味しそうじゃないか」
「なら良かったよ。じゃあ遠慮せずに食べてくれ。」
完全にノワル達の分を取り分けるのを忘れていて、いつもの様に尻尾で叩かれる。忘れてた俺も悪いけどさ。ノワル達は大食いだから尻尾のステーキも付け加えておいた。
「美味しい‥‥‥野菜の旨みがこのトロッとしたスープに溶け込んでいて身体が温まるだけじゃなく、不思議と心まで温かくなるな。始めて食べたと言うのに、以前から食べているかのような安心感があるな」
「そりゃ良かった。じゃあ俺も‥‥‥うめぇ。野菜だけの旨みじゃなくて、肉の旨みまでスープに凝縮されてやがる。スープにこれだけ肉の旨みがいってるから、肉はそうでもないと思ったけどそんな事はないな。噛んだ瞬間に肉の旨みが溢れ出てきやがる」
「随分と饒舌だな。まぁそれくらい美味いからな。ところで前から思っていたのだが‥‥‥ノワル殿の尻尾で叩かれて良く無事でいられるな」
「ん?ノワルが手加減してるからだろ?流石にノワルが本気で叩いたら俺なんかペシャンコになってしまうよ」
「いや、そこまでノワル殿は手加減しているようには‥‥‥まぁお前が少々頑丈だという事にしておくか」
「???」
リーシアの言ってる事が理解が出来なかったけど、まぁ納得?してくれたからいいか。その後はリーシアはテントに入り、俺はノワルとゴマにくっつきながら寝る事にした。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
え?私、最強なんですか?~チートあるけど自由気ままに過ごしたい~
猫野 狗狼
ファンタジー
神様の手違いで転生してしまう主人公ナナキ、ちょっとボケた神様はステータスすらとんでもないことにしちゃって…!?ナナキの所に神様やら聖獣やら精霊王やら集まってくるけど、周りの人達のおかげで今日も今日とて元気に暮らせます。そして、自分からやらかすナナキだけどほとんど無自覚にやっています。そんな女の子が主人公の話です。
表紙は、左上がハデス、真ん中がナナキ、右上がゼウス、ナナキの隣がアポロ、右下がヘファイストスです。
ド素人な私が描いた絵なので下手だと思いますが、こんな感じのキャラクターなんだとイメージして頂けたら幸いです。他の人達も描きたかったのですが、入りきりませんでした。すいません。
稚拙ですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。
お気に入り700人突破!ありがとうございます。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる