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1章 孤独との闘い

八品目 絶品ホットサンド

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「んーッ‥‥‥出立日和だな」空には雲一つなくて太陽を遮る物は1つもなかった。この景色を見るのもこれで最後になるのか。数か月過ごした砂浜の景色を見て思った。

 昨日のうちに片付けも済ませて置いたから、朝食をヨルと一緒に食べる為に山頂にノワル達と向かう。

 山頂に着くと相変わらずヨルはいつもの場所でとぐろを巻いてた。蛇って暗い場所とか好むんじゃなかったか?少し疑問に思いながらもヨルに挨拶してから朝食を作る事にした。

「今日の朝食は簡単に出来る【ホットサンド】にしようか」

 いつもノワル達が食べきれない量を狩ってきてそれを消費してたから、なんだかんだでこの島に飛ばされて来てからパンを食べるのは初めてなんだよな。

 ホットサンドメーカーで塩コショウで軽く味付けした卵とほうれん草を半熟くらいまで焼いたら他の皿に移しておく。後は食パンをセットしてツナマヨとチーズ、焼いたほうれん草のスクランブルエッグを入れて挟んで待つだけで完成ッ!!

「いやぁ、朝はやっぱりこれくらい手軽に作れる料理が1番だよな。手軽なんだけど、ノワル達の腹が膨れるまで何回も作らなきゃいけないんだけどね」

 早く人の居る場所に行って家を借りて、ノワル達用の大容量の寸胴鍋とか買えたらもっと楽になるんだけどな‥‥‥あ。俺、一文無しだった。ま、まぁなんとかなるだろ。

「今更なんだけどさ、俺はこの島から脱出するけどノワル達はここに残らなくていいのか?」

 ホットサンドをバクバク食べているノワルに聞くと、何を今更‥‥‥といった顔をしながらベロンッと顔を舐められた。どうやら一緒に着いてきてくれるらしい。

 正直ノワル達が着いてきてくれるのは本当にありがたい。この世界には魔物なんかもいるから1人だとちょっと不安だったんだよな。


 ようやくホットサンド地獄から解放された俺は、自分の分を作って食べる事ができた。

 良い感じにパンの表面に色がついていて、見るからに美味そうだ。カリッとした触感とパンの香ばしさを感じた後に、中からとろっとろのチーズ達が口の中で「おはようございますッ!」って言ってるわ。

「ツナマヨ最高!お前は本当になんにでも合うな」

 朝食を食べ終えた俺は最後にあの子のお墓にもホットサンドを置いて手を合わせて、ヨルに別れの挨拶をしてから洞窟に入った。

 昨日ノワルに乗ったらゴマが羨ましそうに見てたから、今日はゴマに乗って洞窟を進んだんだけど、あまりに俺に乗って貰えて嬉しかったんだろうな。

 テンション爆上がりのゴマはすごいスピードで走るもんだから、もう落ちないように必死だった。

 無事?昨日の広間に着いた俺達は、2人目の転移者の佐藤が進んだであろうゴンドワナ大陸の道を進むことにする。

 通路を100メートル位進んでいくと、遠くの方から光が見えてきた。その光を目指してさらに進むと森の中に出た。

「はぁ?なんだよ俺達が居た森に戻ってきたってこと?」ガッカリしながらぼやいていたら、いきなり衝撃がきて吹き飛ばされた。

 一瞬何が起こったか分からなかったけど、ノワルに叩かれたんだと分かった。尻尾で叩かれるのは慣れてたけど、初めてノワルにこんなに強く叩かれたから一言文句でも言ってやろうとしてノワルを見た。

 そこで俺は理解した。ノワルは俺を助けてくれたんだと。

 先程まで俺が居た所には熊が鋭い爪を振り下ろしていた。あれが当たってたとしたら・・・考えただけでゾッとした。熊の毛は燃えるような紅で、ノワルにも引けをとらない位の大きさで熊はノワルを睨んでいた。

 ノワルはいつもの様に馬鹿にした顔をしながら熊の方を見てたけど、それに苛立ったのか熊が鋭く尖ッた爪でノワルを切り裂こうと動いた。

「ノワルッ‥‥‥!!」

 巨体に見合わないほどのスピードでノワルに近づく熊に対し、ノワルがした事といえば気怠そうに尻尾を振っただけ。

 ただそれだけでさっきまでは胴体に確かについていた頭が消し飛んだ。

「お前‥‥‥そんな危険な尻尾で俺の事叩いてたのかよッ!!」

 俺がその光景を見た時に一番最初に思った事がこれだった……というのは嘘で、本当は心配してた。

 けど、心配したらしたでまた頭を尻尾で叩かれるのは目に見えてたからな。それにしても、無人島にこんな熊なんていたか?

 よくよく森の中を見てみると、俺が居た無人島とはなんか違うな‥‥‥あれ?もしかして無人島から脱出した?

 先程通ってきた洞窟のある方を振り返るけど、もうそこには洞窟の入り口なんてものは無くなっていた。という事は、あの洞窟からの一方通行で一度森に出てしまったら戻れなくなるってことなんだな。

 考え込んでる俺の頭を再度尻尾で叩いて来るノワル。軽い衝撃で済んだのはやっぱりノワルは俺に手加減をしていた事に改めて気付いた。

「とはいっても、この熊どうする?このままにしてくわけにはいかないよな」

 俺の呟きを聞いたノワルはため息をはきながら熊の死骸を魔法で一瞬で燃やし尽くし、地面には骨と手のひらサイズの魔石だけを残した。

「ノワルって器用だよな。何種類も魔法使えて、お前って本当は凄い奴なのか?」

 澄ました顔をしてるのが若干腹が立つけど、今まで見た事ない大きさの魔石だけ拾って森から出ることにする。

「今何処に居るか分からんけど、あの文字が本当なんだとしたらゴンドワナ大陸に居るって事だよな。だとしたら、早速この森を出て人を探しにいくかッ!」

 なんとか無事に無人島から脱出できた俺は、次なる目標を決めて人が居る場所を目指す為に森から出る事にしたのであった。



■■■■■■■■■■■■■■




この森に来てからもう3日経つけど、未だに森から出れる様子がなかった。そう、俺達は森の中で絶賛迷子中だった。

「ノワル‥‥‥本当にこっちで合ってんのかなぁ?」

今日で何回目か分からないけど、俺がノワルに聞いて呆れた顔をされて尻尾で叩かれるまでが1セット。代り映えのない森の景色に結構な頻度で襲ってきてノワルに返り打ちにされる魔物達。

半ばルーティンになっている光景を繰り返す事3日、正直俺は森に飽きていた。

「ゴマは楽しそうでいいな。何がそんなに楽しいんだか」

楽しそうに森の中を駆け回っているゴマを見て、ゴマはあの無人島で生まれたからこの森は新鮮でたのしいんだろうなと考えていると、ノワルが立ち止まって耳をピンッと立てていた。

「ノワルどうした?」

今まで魔物が襲ってくる時でも、こんな状態になった事は無かったから何か異変があったんだろうと思ったけど、俺にはその異変がなんなのか分からなかった。

ヒュンといった空気を切り裂くような音が聞こえたかと思うと、ノワルは何かを手で払い落していた。ノワルの足元を見ると折れた矢が落ちていた。

「ノワルッ!大丈夫か!?」誰かに矢を放たれた事を理解した俺は焦ってノワルに近づいたけど、ケガなんかはないようでとりあえずは安心した。一体誰がこんな事を‥‥‥そう俺は思ってたら、


「馬鹿者ッ!!魔物に近づく出ないッ!!」

急に前方から人の声が聞こえてきたから驚いて声の方を見ると、女の人が弓を振り絞りながら構えているのが見えた。

髪はサラサラの金髪でボブ、キリッとした大きな目に形の良い唇。年齢は多分だけど20代前半くらいだろうか。あまりに整った容姿に思わず見とれていた俺だったけど、風が彼女の髪を揺らした時に長い耳が見えた。
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