上 下
7 / 16
1章 孤独との闘い

五品目 アジフライのタルタルソース添えを編集

しおりを挟む
 天は青く心地のいい潮風が俺に寄り添うように吹いていて、暖かな日差しに包まれている中、俺は極度の集中状態にあった。

 目の前を風に纏われ飛んでいる木の葉の葉脈の1本1本が確認できる程に俺の時間はゆっくりと流れている。そんな中俺は動かず真っすぐと正面を見据え、機会チャンスを伺っている。

 ‥‥‥ぴくッ。

「ぬぅおぅぅッ!!次こそ必ず仕留めてみせるッ!!」

 これが最後の機会チャンス。絶対にミスは許されない。でも焦るな。ゆっくりでいいんだ‥‥‥圧倒的に俺の方が有利な事には違いない。

「威勢がいいのは最初だけみたいだなッ!人を外見だけで判断するからこういう事になるんだ。さあッ!ラストスパートだッ!!俺の‥‥‥勝ちだッ!!」

 3時間にも及んだ激闘・・・最後は俺の勝利で終わった。両手を大きく腕を振り上げて空に舞い上がった魚は俺の背後に落ちていった。

 そう‥‥‥俺は魚釣りをしていた。



 
 ー魚釣りの数時間前ー


 この島に来てもう3か月か。ノワルとゴマもあの日からずっと俺の傍にいて、今も一緒にすごしている。動物の成長は早いとか言うけど、ゴマもこの3か月で馬くらいでかくなったよ。

 身体は大きくなったけどまだまだ子供みたいで、俺にじゃれついてくるんだけど、ゴマと遊ぶのも必死だよ。馬が俺に飛び掛かってくるようなもんだぞ?上に乗っかられた時は内臓が口から飛び出るかと思ったよ。

 俺は2匹の料理担当のようで、ゴマに狩りの仕方を教えるついでにいつも俺に仕留めた獲物を持ってくる。俺は魔物の料理人になりたいんじゃなくて、古民家レストランを開業したいんだが。

 まぁ‥‥‥そんな俺の夢も人っ子1人いない島を脱出しないとそもそも叶わない夢なんだけどな。

 勿論俺も料理を作ってるだけじゃなくて、あれから森の中を探索したりしてみたけど、なんの進展もなかった。やっぱり頼みの綱は頂上にある洞窟なのかもしれない。そろそろ覚悟を決めていくしかないか。

 だけどその前に俺にはどうしてもやりたい事がある。ノワルが狩ってきてくれるのは猪とかウサギとか、肉ばっかなんだよ。ノワルのお陰で食料に困らないし、魔石だって十分すぎる位に集まってありがたいんだけどさ。こうも毎日肉と帆立ばっかりだと飽きてくるんだよ。

 だから俺は魚が食いたい。魔石で調達すればいいとか野暮な事は言うなよ?俺が釣った魚で料理を作りたいんだ。

 せっかくこんな綺麗な海に囲まれた島に居るんだ。俺の釣りデビューには持って来いだろ。そんなわけで釣り道具を魔石で調達っと。

 初めての釣りだからルアーなんて洒落たのじゃなくて餌釣りでいいな。餌は帆立の貝柱を小さくしたのを付けるとして、場所は魚が潜んでそうな岩場が多い所でやってみるか。

「ノワル、俺はちょっと釣りをしてくるけどどうする?またゴマに狩りを教えに森に行くか?」

 日陰で横になって休んでるノワルに聞いてみたら、立ち上がって近くによってきたから、どうやら俺の釣りに付き合ってくれるらしい。ついでにゴマも尻尾を振りながら付いて来ている。頼むからはしゃぎ過ぎて崖から海に落ちるなよ?

 そうして1人と2匹で砂浜を歩いて少し崖になっている所に到着した俺は、人生初の釣りをする事にした。始めてとは言っても釣りの番組を見てたりしたから知識だけはあるからな。今日はいっぱい魚を釣って魚料理を堪能するんだッ!!




 そう思ってた時期が俺にもありました。魚は居るみたいなんだけど、俺の竿をあげるタイミングが悪いのか餌だけ取られちゃうんだよ。意外と難しいぞ。

 最初は興味深々で2匹は俺のやってることを見てたけど、今じゃもうノワルは日陰で休んでるし、ゴマは近くの砂浜を走り回って遊んでるわ。

 なんか段々と悔しくなってきたな。もう少し応援してくれればいいのに‥‥‥釣れたら絶対に俺だけで食ってやる。さぁ気を取り直してどんどんいくぞッ!!



 くッ!!また餌だけ取られる・・・これは俺が悪いんじゃなくてきっとこの世界の魚が賢いんだ。ノワルだって言葉を理解してるし、きっとそうなはず。そうであってほしい!じゃないと納得できるか!もうこのでっかいホタテが無くなる位、餌だけ食われてるぞ!?

「あいつらは呑気だな。料理担当がこんなに頑張ってるのに。ノワル!!お前狩りしないと今日の昼飯は抜きだからなッ!!」

 日陰で優雅にお休みになってるノワルを見たら、ちょっとイラッとしたから言うと、ノワルはめんどくさそうに立ち上がって俺の近くにきた。

 尻尾で俺の事をグイッとどかしてきたので多分、どけって事なんだろうな。素直に場所をノワルに譲って何をするのかと見ていたら、海からでっかい水の玉が出て俺たちの後ろに落ちた。

 中には10匹程の魚がピチピチと地面を跳ねている。

「ノワル‥‥‥お前魔法を使えたのかよ」驚いた俺は呟くと、ノワルは俺の方を横目でチラッとみながら鼻息を鳴らしてまた日陰に戻っていった。

 こんな簡単な事も出来ないの?と言われているような態度にとてつもない敗北感を感じた俺は、地面を跳ねる魚を拾い集めるのだった。

「魚は集まった‥‥‥だが、俺は釣りあげたいッ!!1匹だけでもいいからなんとか釣るッ!!」


 後ろからはノワルの呆れたような視線。そんなのは気にするな。集中しろ‥‥‥俺は自然の一部。



 ◇
 ー3時間後ー

 魚との死闘を繰り広げてなんとか最後に勝利をもぎ取った。このやり切った感は今まで味わった事がない感情だな‥‥‥けど暫く釣りはいいな。もう満足だ。

 砂浜で遊んでたゴマももう飽きてしまったみたいで、クーラーボックスに入ってる魚の匂いを嗅いで珍しそうにしていた。

 俺が釣った魚は見た目はクロダイに近いんだよな。ノワルが卑怯な手で獲った魚も、地球で似ているのを見た事あるから大丈夫だと思うけど、毒とかないよな?

 今更ながらその事に思い当たった俺だけど、そこはノワルが解決してくれた。魚の匂いを嗅いで食べれない魚は海に放り投げていた。


 行きとは違い重くなったクーラーボックスを担ぎながらなんとかテントまで戻ってきた俺は、とりあえず魚を捌いてどんな料理に合いそうか確認する事にした。

 俺が釣った魚が1匹。ノワルが卑怯な手で捕まえた魚が9匹で全部で10匹だな。俺が釣ったクロダイみたいなのは40センチ位あるな。こいつは刺身で食う事確定だな。

 アジみたいなのは全部アジフライにしてタルタルソースでいいし。一番数が多いメバルみたいなのは煮つけにでもするか。

 まずはクロダイとアジを3枚におろして、クロダイは刺身だから皮を剥がして柵にして切れば完成だな。

 アジの前に少し時間がかかる、メバルの煮つけから作ろうか。まずは鱗から取って次に内臓を取り、綺麗に水洗いをする。ちゃんと水洗いしないと臭いが残ったりするから注意だな。

 水洗いをしても完全には臭いが残ってるから、沸かしておいたお湯をメバルにサッとかけて臭いを撃退しよう。これで、メバルの下処理は終わりだな。

 次は鍋に水、酒、みりん、砂糖、後はショウガをいれて沸かしていう。分量は正直メバルの大きさや量によるからそこはなんとなくでやってくか。

 煮立ってきた鍋にメバルを入れて、落し蓋をして12~3分中火で煮込んでから、醤油を最後に加えてさらに5分落し蓋をして完成ッ!!

 めっちゃいい匂いしてきたわ。この島に来てから初めての魚だから滅茶苦茶楽しみだ。後ろで尻尾を振りながら待ってる2匹に最初は食わせてやるか。

「これが【メバルの煮つけ】だッ!!味わって‥‥‥早ッ!!もうない。俺の分ものこしておけよッ!!」

 速攻で2匹の胃袋に煮つけが収まってしまった。早い物勝ちといわんばかりの顔をしてこっちを見やがってッ!!

「まぁしょうがないか。次はアジフライにタルタルソースでも作るか。これは絶対に俺も食べるぞ」

 最初におろしておいたアジには塩と胡椒を振っておいたんだけど、これは絶対にやった方がいいぞ?塩コショウを振って10分ぐらい置いておくと、アジの身に良い感じに塩気が入って、さらに生臭さが感じにくくなるからな。

 アジフライに関してはこんなもんだな。後は揚げ物をする時のいつものメンツを付けて、こんがりキツネ色になるまであげれば完成だな。

 脂っぽいのが苦手な人でもキャベツと大葉の千切りしたのを混ぜ合わせると、大葉の香りのおかげでさっぱりとアジフライが食べれるからおススメだ。

 後はタルタルソースを作るんだけど、まずは玉ねぎをみじん切りにして塩をまぶして5分くらい待つ。そうすると塩の効果で玉ねぎの水分がでてくるから、水分をしっかりとること。これをしないとタルタルにした時、結構水っぽくなっちゃくからきおつけてな。

 ボウルにゆで卵と玉ねぎ、刻んだピクルスとマヨネーズを入れて混ぜていく。良い感じになってきたら、レモン汁とパセリをいれて軽く混ぜ合わせて完成ッ!!

 あいつらに食われる前にまずはタルタルをつけないで1つ食べておこう。これ最高に美味い。揚げたてだからサクッとした触感で、噛むと中からアジのブリッブリの身がこんにちわッ!!してきて最高に美味い。タルタルがなくてもアジの身が強烈に主張してきて、噛めば噛むほど甘みと旨みが口の中に広がってくるわ。

 それじゃあタルタルもつけて一口‥‥‥これも最高だ。若い時は無限に食えた揚げ物も、歳を重ねるにつれて全然食えなくなってきたけど、このタルタルさえあれば無限に食えそうだ。

 ほら、お前らも【アジフライのタルタルソースがけ】食わないか?これ滅茶苦茶に美味いぞ?

 後ろで大人しくしていたノエルとゴマだったけど、俺が呼ぶと近づいてきて幸せそうな顔をしながら食ってくれた。こういう顔を見たらやっぱり料理作って良かったって思うよな。

 残りのアジフライはノエルとゴマにあげて、俺は刺身でも食べるか。うおッ!!醤油に少し刺身を付けただけなのに脂が醤油に一気に広がっていく。

 すんごい弾力だ‥‥‥脂が少しきついかなって思ったけどそんなことはなかった。噛むとこの魚の甘みと旨みが、丁度いい感じにマッチして口の中で魚が踊ってるわ。


 魚料理を堪能した俺は、明日には崖の上の洞窟でも行ってみようと思っていたけど、魚料理にハマってしまったノエルとゴマが次の日から魚を取って来るようになり、ノエル達が満足するまで崖の上に行くことは出来なかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

え?私、最強なんですか?~チートあるけど自由気ままに過ごしたい~

猫野 狗狼
ファンタジー
神様の手違いで転生してしまう主人公ナナキ、ちょっとボケた神様はステータスすらとんでもないことにしちゃって…!?ナナキの所に神様やら聖獣やら精霊王やら集まってくるけど、周りの人達のおかげで今日も今日とて元気に暮らせます。そして、自分からやらかすナナキだけどほとんど無自覚にやっています。そんな女の子が主人公の話です。 表紙は、左上がハデス、真ん中がナナキ、右上がゼウス、ナナキの隣がアポロ、右下がヘファイストスです。 ド素人な私が描いた絵なので下手だと思いますが、こんな感じのキャラクターなんだとイメージして頂けたら幸いです。他の人達も描きたかったのですが、入りきりませんでした。すいません。 稚拙ですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。 お気に入り700人突破!ありがとうございます。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

処理中です...