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収穫祭編
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しおりを挟む収穫祭当日になった。
開始の挨拶はオルガナが行っている為、セバスチャンと幼いビクトリアを連れてマクレーン夫妻は屋敷を開けていた。
そこに珍しく着飾った姉、ソフィがクレアに話しかけてきた。
「クレアは誰かと踊る予定なの?」
「今日は調子が悪いみたいだから横になってる」
クレアはヘイリーから逃げるために、仮病を使ってやり過ごそうとした
「ふーん、食べ過ぎじゃないの?」
「そっ!そんな事より、その服どうしたの?」
「貰ったの!一回ぐらい本人の前で着ないとねー」
「へー…」
驚く事なかれ、ソフィは異常な程モテるのだ。
顔つきやピンクのふわふわとした髪はとても可愛いが、だからと言って街一番かと言われればそうではない。何故モテるのか、全くわからないクレアだった
そして何故だか
姉ソフィがモテる相手は全て女性だ。
「ついにその人と冠を?」
「踊らないわよー、特定の人作ると大変なの」
「踊らないの!?誰とも!?」
「ええ、お祭りから離れて、二人だけの世界で過ごすのって特別だと思わない?」
「言われてみれば特別な過ごし方かもしれない」
それはそれでロマンチックな気さえしてくると頷くクレア
「クレアは騙されやすいのね」
「え?何か言った?」
「ううん!何でもない。じゃぁ私収穫祭に行くから、無理しないで横になってなさい、料理長と庭師には伝えておくわ」
「ありがとうお姉様!収穫祭楽しんで!」
ソフィとクレアは別れ、クレアは昼寝するべく自室へ向かった。
ガチャ
「クー?」
「嬉しいクーから僕のも」
バタン
やってしまった。
前回同様、ヘイリーにはクレアの寝室を明け渡していた、毎日の習慣でクレアは間髪入れず開けてしまい、頭を抱えた。
ガチャ
「クー、収穫祭へ行こう」
「いえ、私は体の具合が思わしくないので、お休みを頂きます。」
「大丈夫?心配だよ、なら今日はクーの看病をする。」
「いえ、ご心配には及びません。」
ヘンリーは優しく微笑むとクレアの手を引いて入室した。
「へっ!!ヘンリー様!!」
「ふふ、そんな大きな声をだして…体調、悪いのだろ?」
「それはもう!!すっごく!!」
ヘイリーはベットを指して
「横になって」
クレアは目を見開いたてヘンリーに顔を向けた。
これはいけないと思ったクレアはヘンリーと繋いだままの手を引っ張りソファーに腰を下ろし、手を素早く離した
ベットを免れたと安心して一息ついたクレアだったが、仮にも自分を好いてくれているヘイリーの前でベットに入るなど、危険極まりない状況に、二人きりで部屋に居る淑女らしからぬ行いは、すっかり頭から飛んでいた
「収穫祭は出なくても二人で過ごしたい。出られないのは少し残念だけどまた次もあるしね」
ヘイリーは少し寂しそうに笑った
クレアは意を決して、前回言えなかった婚約について、ハッキリとお断りを入れる為、話を切り出した。
「ヘイリー様大事なお話があります」
「うん?」
「ヘイリー様との婚約の話なのですが」
「ふふ、もう結婚したい?」
「違います!その...婚約は出来ません!もちろん結婚も!」
ヘイリーは目を臥せってしばらく黙ってしまった、一息つき、ゆっくりと顔を上げ、ソファーに座ったままクレアと対面するように体の向きを変えた。
「何故だか聞きたい」
「まず身分が違いすぎます。私には教養も容姿もヘイリー様に相応しくありません。それに...気持ちが...ヘイリー様に気持ちが向いておりません!」
「身分や教養なんてどうとでも成る、容姿だってクー以上にかわいい子なんていない。クーは可愛いよ、とても」
「かっ可愛くはありません!」
「ほら、可愛いじゃないか」
クレアは照れ、ヘイリーは悲しい表情をした。
「気持ちが向かないのは寂しいよ。でも残念だけど、クーを手放す事なんて出来ない、クーでなくてはだめなんだ。」
「何故ですか?分かりかねます!王宮には綺麗だったり可愛いかったり、身分の高い方が沢山いらっしゃると聞きました!」
「クーが好きだから。クーを愛しているから。」
「すっすき!?ああああいあい愛してる!?」
「きづいてなかった?言い忘れていたのか、これからはちゃんと言葉で伝える」
「でっですが!私は...」
「すぐに僕の事を好いてくれとは言わないよ、でも必ずクーの気持ちを向かせてみせる」
「え?え?私は...」
真っ直ぐ見つめて、真剣にクレアに向かうヘイリー
その正直で真っ直なヘイリーにクレアの心臓はバクバクとなり顔を真っ赤に染めた。
「クーは誰にでも同じように接するし、沢山いい所がある。だけど僕は...ダメな所ばかりだ、早くクーに相応しい男にならないと」
「ヘイリー様は立派です!とても気さくですし」
ヘイリーは悲しい表情をしたままだったがクレアに安心させるように必死に笑った。
自分に向けて笑顔をしたヘイリーを見たクレアは何回も見たはずなのに胸がチクチクと傷んだ。
「もしも何年も会えなくなったら僕の事忘れる?」
「そんな事ありません!ヘイリー様は一度見たら忘れません!」
「でも僕の事は好きではないのだろ?それなのに忘れないの?」
「はい!だって、ヘイリー様とは色々ありましたし、それに!沢山お話もしました。」
「そっか、クーがそう言ってくれると何にでも頑張れる。」
「はい!ヘイリー様は本当はすごい方なのです!私達に見せつけて下さい!!」
力拳を作り右手を真っ直ぐに突き上げて、クレアは大きな声を出した。
ヘイリーは思わず笑ってしまい、愛おしそうにクレアを見つめた。
「正直に話すよ、今はまだクーを王宮に呼ぶのは難しい、だけど必ず呼ぶ。それまで僕の事を忘れずにいたら、結婚してほしい。」
「ですが、ヘイリー様簡単に求婚など」
「簡単ではないよ、クーだからだ!直ぐには迎えに行けそうにないんだ、お願いだから...いいと言って」
語尾は小さくなり、クレアに言うよりは、願い事のように聞こえた
「...............はっ...はい」
「きゃ」
ガバっとクレアを抱きしめたヘイリー
クレアは急に体を抱き寄せられ、声をあげてしまった。ヘイリーの体は震えていた
ヘイリーはクレアの好きな所を何回も呟き、クレアの心臓はドキドキしてヘイリーの顔を見れなくなっていた、顔を真っ赤にし急に挙動不審になったクレアに気づいたヘイリーは、体調が悪かったのを思い出し、移動したクレアの寝室までエスコートした。
「忘れないで僕の事」
「忘れません!」
キスまでしたのに!と耳まで赤く染めたクレアにヘイリーは優しく微笑んだ
「約束だよ」
そして去り際に愛してると呟き頬にキスをした。
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