ヤンデレ腹黒王子と私

モゴ

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収穫祭編

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王子御一行様がさってから2ヵ月程たった


もうすぐマクレーン領の唯一のお祭り
収穫祭が始まる

お肉を食べる他に人気の催しがある
マクレーン領のみで取れる、白く小さな花びら。
中心は黄色になっていて、可憐で可愛い花 、領内にある野原で手軽に取れるのこの花は、領民にとってとても親しみのある花だ

この花で冠を作り、好きな人と焚き火のまわりで踊り
愛の告白をすると告白が成功するという言い伝えがある

ザラダイン王国は男性女性に関わらず、同性でも、愛し合っていれば婚約、結婚できる。

 同性との結婚は認められていなかった時代。

 女性同士の二人が皆の前で高らかに愛を告白し、冠をつけて二人で踊り、最後まで共に愛し合い過ごした二人。
 逆境を乗り越え、一生を誓い合い、仲睦ましく愛し合って過ごした。
 そんな二人にあやかり、願いも込めて言い伝えになったのだ

 いや誘いを受けた時点でほぼ付き合えるとう
野暮な突っ込みはしない、異性も同性もない今は、私の恋人はこの人です!と主張する為に踊るのだ。
そんな祭りを2週間後に控えていた



母マリアと姉ソフィは上がった税収で花を飾るようになった
すぐに雪の季節に入る為、少しの間の贅沢な趣味だ

「こんにちは!!お花お持ちしました!!」

色とりどりの花を持ってきたのは街で花屋を営んでいる夫妻の五男、ベンジャミン
笑顔で入ってきたベンジャミンは11歳の働き者で、髪は蜂蜜色と目は黒で顔立ちは平凡だ

「こんにちは!ベンジャミンさん」
「こんにちはクレアちゃん、お花は何時もの場所に置いておくね!」
「はーい」

「クレアちゃんは収穫祭の冠を渡す相手は決まった?」
「んーいないよ!」
「そっか…」
「ベンジャミンさんは誰と踊るの?」

「その...もし!!誰とも決まってなかったら僕の作った冠をつけて踊ってほしい!」
「いいよ」


「いいの?」
「うん!いいよ相手いないし」

気持ちに温度差がある気がする
ガクッと項垂れたがいいといったのはクレアだ
ベンジャミンは気持ちを持ち直した

「楽しみにしてるね」
「お肉1年ぶり!」
「そっそうだね」

お花を置き終わったベンジャミンはクレアに手を振り帰っていった
すれ違うようにお手伝い中のクレアの元に家令のセバスチャンが来た


「クレアお嬢様、先程ベンジャミン君が来ていたようですが」

「セバスチャン!いつもの場所にお花置いていったよ」

「左様でございますか、ベンジャミン君と冠のお話をされてましたか?」

「そうだよ!ベンジャミンさんが冠を作ってくれるって!」

「なんですと!!なな何故ですか!ベンジャミン君とお付き合いされるおつもりですか!?」
セバスチャンは大きく目を見開いた

「お付き合いまでは考えてなかった!でもベンジャミンさん好きかも?」

クレアの好きの判断基準は遊んで構ってくれるか、くれないかによっている
だがまだそれを知る者はいない

「好き!?好きと!?」
セバスチャンの顔色は青ざめふらっと倒れかけた

「おおげさよーセバスチャン、私も淑女なのよ!恋の一つや二つ」
フフッとドヤ顔のクレアにセバスチャンはさらに青ざめた

「ダメです、今すぐ、今すぐお断りをいれて下さい」
セバスチャンの開いた目から微かに光るものが見えた

「ベンジャミンさんでいいじゃない!ここのお掃除終わったから寝室のお掃除してくる」
掃除道具をもったクレアはドタバタと寝室へ向かった

「でしたら、私のほうからお断りをお伝えします!よろしいですか?」
去るクレアに向かい、珍しくセバスチャンは大きな声をあげた

「もーー!好きにして!」


セバスチャンの息子が良からぬ所からした借金。
王子が去った後、完済した。
セバスチャンは迷惑をかけたと、領主である父オルガナや母マリアに謝罪し、姉妹達にも怖い思いをさせたと謝ったのであった。

悩みが消えて心が軽くなったのか
最近はクレアの教育に力を注いでいる、口うるさく言われているクレアは正直ウンザリしていた。

さらにセバスチャンは古い友人という
高齢の男性で、聡明でおっとりとした性格の家庭教師
マッケンジー先生を連れてきた

王都にある学校に通えない姉ソフィとクレアは文字から始まり、歴史、教養、算段、世界情勢などありとあらゆる知識を叩き込まれた

姉ソフィは『これを上手く利用すれば、(大金に)化けるわね』とぶつぶつ言い
クレアは母マリアとセバスチャンから逃げられる口実ができたと、大変喜び
二人はメキメキと吸収し頭角を表していった

始め、セバスチャンが連れてきた謎の家庭教師マッケンジーをよく思わなかったのは母マリアだ。
家庭教師など付ける必要などないと考えていた。

しかしセバスチャン曰く
マッケンジーは昔、王宮で働いてたそうでなんと王妃の親類にあたるという。
本当か嘘か、見分けられなかったマリアだか
週に一回、王都から珍しいお菓子やお花、小物などが送られてきており、きっとそうに違いない、大変なお金持ちに違いないと勝手に判断していた。

さらにマッケンジーはこのマクレーン領が気に入り、お屋敷に住まわせる代わりに家庭教師をすると言ってきたのだ。
破格の値段にマリアは恐縮したが、二言押し問答を続けるとすぐに了承した。




そんな忙しい毎日を送っていた。
収穫祭を前日に控えた日、屋敷の外から馬の走る地鳴りが聞こえマクレーン家は騒然とした。

地鳴りは屋敷の前で止まり、仕立てのいい上品な身なりをした美丈夫。ヘイリー王子が颯爽と門から入ってきた。

地鳴りを聞きつけてマクレーン夫妻とソフィ、セバスチャンは玄関まで駆けつけるており、庭師はヘイリー王子を見ると挨拶をして玄関へと案内した。


「お久ぶりです。」
キラキラと眩しい笑顔みせたヘイリー

「お久ぶりです、ヘイリー王子。」

やや引きつった笑顔をした、オルガナは戸惑っていた。
ヘイリーは前触れもなく現れたのだ。

王族が領地へ視察する際は、手紙のやり取りをしながら日取りや視察箇所など、予定を予め決めてから行う。
何の連絡もなく、ましてや騎乗して来るなど前代未聞だ。
そんなヘイリーの考えを全く読めないオルガナは何と話していいか図りかねていた
先に口を開いたのはヘイリーだ


「クレアはいますか?前、世話になったので挨拶をしたいのですが」
周りを見渡しながら問うているヘイリー

「確か草むしr...庭で植物の生態を勉強しているはずですわ、ヘイリー王子」
クレアのお手伝いを管理しているマリアはすぐさま答えた

「分かりました。挨拶をしてきます。」
ヘイリーはニコリと笑い挨拶もそこそこに玄関を出て庭へと歩き出した


庭を歩いていると以前、二人でキス(おでこに)した事を思い出し、ニヤケながらヘイリーは奥へと進んで行った。
暫く進むと話し声が聞こえた、はやる気持ちを抑えながらも足早に声の出どころへと向かった。


そこには親身な面持ちのベンジャミンとオドオドしたクレアが屋敷を盾にして隠れた位置にいた

「クレアちゃんが僕の事、只のお兄さんのように思っているのは分かってる。だけど諦めたくはないんだ、1度はいいって言ってくれたよね、だから僕の冠をつけてほしい」

真剣な眼差しでクレアを見据えているベンジャミン

「そんな事ない、ベンジャミンさんをお兄さんなんて思ったことないわ!でもセバスチャンが...」

生まれた時から一緒に過ごしたセバスチャンはクレアにとっては家族同然でもある。クレアを大切にしてくれるセバスチャンの言葉を無下にはできない。

「ダメならダメでクレアちゃんの言葉で聞きたい」
悲しい表情も出しながらしっかりと言った



「他に好きな人がいるんだよ」



カバっと二人は声の主に勢いよく顔を向けた

「ななっなんでいるの?」
「どちら様ですか?」

クレアは驚き、ベンジャミンはムッとした
優雅な立たずまいで近づきクレアの横まで来た。

「久しぶりクレア、クレアは愛を誓い合った人がいるはずだが」

ヘイリーは立ち止まるとクレアの髪を愛おしそうに撫で始めた
突然現れたヘイリーに空いた口が塞がらず、クレアは成されるがままだった。
それを見たベンジャミンは苛立ちを露わにした

「今二人で話している所だから、少し待って下さいませんか」
「まだ話す事があるの?」
「はい、見てわかりませんか?外して下さい。」
「君はクレアに振られた、セバスチャンをこえられない君に望みはない。もう下がっていいよ」

向かい合う二人の間に割って入ったヘイリーはベンジャミンに背を向けてクレアから視線を外さないまま答えた

「クレアちゃん...僕は」
「呼ぶな。君がクレアの名を呼ぶな。下がれ!」
「僕はクレアちゃんと話をしたいんだ、君こそ下がってくれないかな?そう言う君は誰?街でも見かけた事ないし...」

クレアは焦った、ベンジャミンが知らないとはいえ相手は王位継承権第一位のヘイリーだ。何とかやり過ごそうとない頭を必死に考えて答えを出した。


「ベンジャミンさん!!!私とこの方は!!浅からぬ仲なの!!」


「クレアちゃん?」
ベンジャミンは固まり、ヘイリーはニッコリ笑った
クレアの肩を片手で抱き、クレアの横に並びベンジャミンに対面した。

「君の出番はないよ、さぁ仕事に戻るといい」
クレアに視線を戻し、肩を抱いたまま庭の奥へと歩き出した

「.....ッ....」
ベンジャミンは顔を歪ませて二人の背中を見た。
振り返らない、クレアの気持ちに気づき、目に涙を浮かべながら去っていった



「クレア寂しい思いをさせてしまったね。でもまさか、焼きもちを焼かせて僕を呼び寄せるなんて」

立ち止まり向き合う二人。
ヘイリーは久しぶりに会うクレアを前に全身を舐めるように見た。

「いえ、寂しくはなかったです。」
「頼むから拗ねないでクレア、久しぶりなんだクレアの笑顔が見たい」
「ヘイリー様とは浅からぬ仲なので。」
「ふふ、婚約者と言って欲しかったけど今はそれでいいよ」
「浅い間柄ですので浅からぬ仲でいいのです」
「クレア、浅からぬ仲は浅くはない間柄の事だよ、さっきのいい方だと深い関係なんだと宣言したようなものだね」

なんて事を!目を大きく見開きヘンリーを見た。

「かわいいクレア」

壊れ物を扱うようにクレアの両手をにぎった

「勉強はどう?字はかけた?」
「え?はっはい、読み書き出来るようになりました」
「そう...よかった、僕もクレアに相応しい男になるよ。二人で励もう」

父様が言ったな!余計な事を!
筒抜けなら気を付けなければと気合いを入れた

「明日までは一緒に過ごせる、収穫祭があるのだろ?一緒に踊ろう」
「心配には及びません。」
「踊らなくていいのなら今度はクレアに本を読んでもらおうかな」
「............」
「クレアと一緒なら何をしてもいい」

クレアは黙ってやり過ごす技をマッケンジー先生から習っていた、まさかそうそうに役に立つとは、これからはもっと真剣に取り組もうとクレアは決意した。

門のほうから足音が聞こえ、慌てて手を離した

「クレアー!いるのー?」
「ソフィ姉様!います!」

「ではヘイリー様、御機嫌よう」
淑女の礼をとり、逃げた。

突然現れたヘイリーのお陰で、屋敷は慌ただしかった。
王都から馬車で一週間かかる道のりをわずか五日間で来た御一行様は夜にはクタクタになり、そうそうに就寝した。
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