ヤンデレ腹黒王子と私

モゴ

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幼少期編

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「庭師は何をしていた、また入られたのか?」

微笑むも目が笑っていないマクレーン家であり領主のオルガナ・マクレーンが扉から入ってきた

オルガナは平凡な顔つきで髪は蜂蜜色、目も蜂蜜色
楽天的で明るい性格をしていてクレアの性格は父譲りだ
クレアの頭をポンッと手をおき3人に視線を移した


「申し訳ございません旦那様家令である私がお屋敷を乱すなど」

セバスチャンは床で伏せっている息子の肩を抱き自身の肩を震わせながら涙目になっていた
屋敷にいる者は取り立てに全員が遭遇しており今更隠す必要がないもののガラの悪い男性達が屋敷に出入りする事にセバスチャンは心を痛めた
それを見たオルガナはセバスチャンに近づき今度はセバスチャンの肩をポンッと手を置いた

「辞めるなんて言うなよ、こんな貧乏貴族に長年仕えてくれる家令なんてそういない」
「ですが!旦那様!」
「私はセバスチャンや料理長、クレアが心配で腹を立てただけだ。頼むからビーが大きくなるまでは体に気を付けて頑張って働いてもらうぞ」

ニコっと微笑むオルガナ父様
そして毎回このやり取りである。セバスチャンはとてもよく気が付き私達兄弟に優しくも甘やかさいよく出来た人だった。
マクレーン家ばかり構い息子には余り構ってやれず怪しいお店で借金をこしらえてしまった。
その事を知って理解しているオルガナがセバスチャンを庇い雇っている
まだその事を理解していないクレアはオルガナ父様とセバスチャンは仲良しなのね!っとなっていたのだった

バンッ

と痛たんだ大きさだけはある古い玄関扉が勢いよく開いた

間もなくドタバタと走る音が聞こえ
庭師の低い声が響き近づいてきた

「旦那様ーー!旦那様ーー!」
「旦那様ーー!どこですかーー?!」


クレアは息を吸い込み
「ここよーーーー!」
と淑女には程遠い大きな声を出した


「クレアお嬢様!そんな大きな声で」
思わずセバスチャンが慌てた
その声をかき消すように庭師が厨房へと入ってきた

「だだだ旦那様!今そそそ外におお」
「何だ慌てずゆっくり落ち着いて」


「おっおっお」

「お?」


「王子御一行様がおいでだーーーい!」


「まさか」
「そんな」
「何ですと」
「王子?」

慌ててオルガナはセバスチャンを連れて玄関口へと向かい対応に追われた



庭師の口調に突っ込みを入れる者は誰もいなかった・・・


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ザラダイン王国の王には王子が2人、王女が1人いる
第一王子であるヘイリー・イングラム・ザラダイン王子
 誰もが認める眉目秀麗な顔立ちながら無表情で冷たく無気力だと言われている
第二王子と第一王女は双子

 産後のひだちが悪く王妃は双子を出産後1年もたたず旅立った
王は先立った王妃を思い新しく王妃を娶ることはないという
第一王子は10歳、第二王子と第一王女は8才だ

ザラダイン王国は大国には珍しく王族達はとても気さくで王権の権力争いもなく、不敬罪なんて言葉あったのかというくらい民と王族の壁は低い。
 王として真摯に統治すれば自ずと民は王を崇敬するというザラダイン王国の初代国王様のありがたーーいお言葉だ

とここまでは王都から離れている北のマクレーン領でも誰もが知っている情報だ

第二王子と第一王女は8才で私と同じだから来たのは第一王子かしら?
クレアは知っている情報を思い出し考えた


 王子御一行様は避暑地にある別荘に向かう途中大雨に見舞われ馬車は進まずこのマクレーン家の門を叩いた

王子の計らいで王子と側近以外は領内で宿をとり、補給もして潤してくれた、その突然きた近衛騎士やら上品な侍女に領内はざわついたが、懐が暖かくなった民達はホクホク顔だった

 マクレーン家は歴史だけは長く名ばかりの貴族だが、屋敷は大きく王子御一行様を出迎えるには充分な広さだ
 普段使っていない部屋は埃まみれだった為オルガナの指示でセバスチャン息子夫婦を労働に呼んだ

 セバスチャン息子夫婦は労働を喜び娘を預けて、精一杯務めてくれたが、王子御一行様には姉妹の部屋があてがわれた為、姉妹達は不満顔だった


 みな掃除に夕食にと精を出していたが、クレアは年も近いという事で、王子の下僕もとい、お話相手を担当させられた
 応接間にご休憩なさっている王子御一行様に挨拶をするべく一張羅の花柄ワンピースに着替えクレアは足早に向かった

コンコンとしっかりと扉を叩き入室の相づちを待った

「入れ」

 おっとここの家主はマクレーン家のはず
と心で呟きながら入室し礼をとる
 中には王子と側近らしき少年と騎士が一人、それぞれが両脇に立っていた

「オルガナ・マクレーンの次女クレア・マクレーンと申します以後お見知り置きを」

カクカクブルブルでスカートを摘み淑女の例をとった
淑女とは程遠いとは誰も言わない

「ヘイリーだ、世話になる」

それだけ?こんなに騒がしく王子の為に準備しているのにとムッとしてヘイリーの顔をまじまじと見てハッとした
 髪は見事な金で柔らかく動くたびに、緩やかに揺れていて輝いている
 目は吸い込まれそうなほど美しい青色をしていた
あまりの端整な顔立ちに思わず息を飲んだ

「すごい・・・」

口に出してしまった!クレアはつかさず、両手を口に当てて目を逸らした

顔まじまじと見られたヘイリーは小さくため息をつき不機嫌の空気を纏った

言われ慣れているのかそうでしょうよ

「用がある際は何なりとお申し付け下さい」

クレアは慌てて練習していた礼を改めて取り直した
側近らしき少年はヘイリーのだした不機嫌の空気を読み口を開いた

「ヘイリー様の友人、レイブン・サミュエルソンです。急なお願いにも関わらず、良き対応に王子は大変感謝しておられます」

肩まで伸ばし切りそろえられている黒髪に、夜のような黒い瞳をしていた、女性と言われても納得しかねない顔立ちだ、友人と名乗った辺り、歳はヘイリーと変わらなそうだ
 にこりとレイブンは笑をこぼした

いやいや言ってないでしょうこの空気

「ヘイリー様の騎士フィン・マルティネスです。」

父様よりは若くみえるガッシリとした長身の保護者、もとい騎士様も整った顔立ちである

ヘイリーは終始無表情でニコリともしない
そんな空気を諸共せずレイブンは

「本日はヘイリー様もお疲れのようですので、夕食を取ったらそのままお休みを頂きます。」

「はい分かりました。」


「では!」


長居してこれ以上ボロは出せないとばかりにすぐ様扉へと向かった。
 淑女教育を殆ど受けていないクレアは挨拶や話し方など大人びているが所詮下級貴族だ、すぐにボロがでる
 それを見込んで父オルガナは挨拶だけでもいいと言ってきたのだ

扉の前へきて顔だけを振り返り手をドアのぶにかけたまま

「すぐにお持ちします」

とぺこりと礼をして扉を開きバンっと勢いよく閉めた
 女性が勢いよく扉を閉める様を初めてみたレイブンとフィンは目をパチくりさせてクレアの去った扉を見つめた

フッと微かに笑う声がしてレイブンとフィンは目を見開いてヘイリーに勢いよく顔を向けた

「先程昼を回ったばかりだぞ」

ヘイリーはボソリと言った

そうまだ夕食までは早すぎる・・・早すぎたのだった


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「今から夕食か?早すぎだろ」

料理長の言葉に思わずハッとしたクレアは項垂れ頭を抱えた

「持っていくって言っちゃったもん」
「ならこれでも持ってけ」

動物の形をした色とりどりのクッキーをクレアに渡した。
クレアとビクトリアが大好きな可愛いクッキーは食べると甘かったり酸っぱかったり、見た目も味も最高なクッキーだ

「お上品に頼むぞクレアお嬢様」
「むう」

なぜお上品でないのが料理長にバレてしまったのか
うーんとうねりながらヘイリーのいる応接間に向かった

 コンコンとしっかりと叩き部屋の中に響くように大きな声を出しながら

「クッキーお持ちしました!」
言いながら扉を開いた

ヘイリーは相変わらず無表情のまま視線を合わせず窓の外を立って見ていた

入口にいたフィンはニコっと微笑みそっとクッキーとお茶が乗ったワゴンをかわりに持ってくれた

「ヘイリー様、クレア様がクッキーを持ってきて下さいました」

ヘイリーは無表情のままチラリと目線をクッキーに移した
それと同時にクレアはクッキーに熱い視線を注いだ
それはもうギラギラと

レイブンはクレアの熱い視線を感じて同席するよう促した

「お茶をいれますね」
「いえ私が!」
「王都から珍しい茶葉を持ってきているので私がいれます、どうぞお座り下さい」

珍しい!と聞いて座らないクレアではない
スッと素早く着席した。それを見たヘイリーは微かに口角を上げてからゆっくりと着席した。

「こちらに読んでもいい本はある?」

ヘイリーは優雅で上品にお茶を飲みながらクレアに話しかけた
クレアは人差し指を顎にあてうーん考えて

「あるにはあります」
「見せて貰えるかな」
「はい!ヘイリー王太子様」
「・・・王太子様?」

珍しい敬称にヘイリーは眉間に皺を寄せてからまたすぐに無表情に戻り

「ヘイリーでいい」

レイブンとフィンは目を見開いて顔だけ勢いよくヘイリーに向けた
その視線を気にせずヘイリーは無表情のままだ

「ではヘイリー様!私はクレアとお呼び下さい!」
お友達が出来た勢いよく軽くクレアは宣言をした

「愛称は?」
「え?愛称?特にはありませぬが」
「ならクーでいいね」
「え?お会いしたばかりです!愛称はまだ」
「食べ終わってからでいい、クー本の所へ案内して」

えーと何て事だ

 ザラダイン王国では家族や夫婦、婚約者以外は愛称は呼び合わない風習がある

古い風習なので最近では守る者も少ないとセバスチャンは言っていたはずだ
 だが幼なじみや親友ならまだしも会ったばかりのヘイリー様が愛称で呼ぶのは如何なものかと
でもまぁいっかっと軽く頷き考えるのを止めた

クレアはクッキーをキレイにお腹に収めてから父に承諾を得て本のある父の書斎へとヘイリーを案内した


 書斎に入るとクレアが両手を広げた幅程度の書棚があり、そこに数冊の本があるが全て農業の本だった

クレアは動かないヘイリーを見て思わず

「ヘイリー様読まれるのはありましたか?」

「本はこれだけ?」
「はい、本は高いので買えません」
「そう」

王宮には図書館なるものがあると父に聞いた事を思い出しクレアはヘイリーの期待には全く答えられなかったと悟りしょんぼりとした
 クレアは本棚の方へ顔を向けるとボロボロの植物図鑑が目に入った

そうだ!と目を輝かせクレアは植物図鑑を指さした

「ヘイリー様この図鑑読んで下さい」

「読むの?」
「はい!私字が読めないので父はよく読んでくれますが」
「字が読めないか・・・いいよ」

ヘイリーは植物図鑑を手に取りレイブンに敷物をと伝えると後ろに控えたレイブンはさっと豪華な厚手の布を床に置きそこにヘイリーは腰を落とした
隣をぽんぽんと叩いて

「クーここに」

いや、敷物が豪華過ぎて恐れ多い・・・だか座ってみたい
クレアはゆっくりと腰を落とした
座ったのを見計らってレイブンは2人の前にお茶を出した

「レイブン様!ありがとうございます!」
「クーと本を読むから2人は出て行って」

「へへへヘイリー様!!」
「ヘイリー様!?」
「え?」

思わず騎士からぬ声をあげたフィンは一呼吸おき優しくヘイリーに問いかける

「未婚の女性と2人きりとは如何なものかと、出来かねます」
「未婚も何も、僕もクーも子供だよ?2人きりになると結婚しなければいけないの?」
「いえ、そういう理由では」
「なら問題はないね」

「・・・・・・くっ・・・はい・・・」

いやいやフィン様ダメです。

未婚の女性が異性と2人きりがいい訳ない、そんな事、淑女教育の基礎中の基礎だ。
だがこの場にヘイリーに勝てる者は居らず、期待していたレイブンは目も合わせず部屋を出ていった




「静かになったね読むよ」
と無表情のままヘイリーは本を開いた


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