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三、調査は進行して・・・いない!?
3ー23、全然わかってない。
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タイミングよく事務所の電話が鳴り出した。
「おい、電話だぞ」
だが、感動に打ち震えている仲間は鳴り響く電話に全く反応を示さない。仕方なく、もう起は受話器に手を伸ばした。
「何か用事か?」
この一言で孟起が電話係から外された理由が如実に表れている。
『夜分遅くに申し訳ございません。錦 孟起殿でしょうか?』
受話器から聞こえてきたのは聞き覚えのある声だった。
「おまえ、サードか」
『先日は危ないところを助けていただき誠にありがとうございました』
「まさか、お礼を言うためだけにかけてきたんじゃないだろうな」
『ええ、あの時は助けていただいたのにお礼も言えずに別れてしまったので直接とお礼に参ろうかと思いましたが、なかなか暇が見つからず・・・申し訳ありません』
「おい」
こいつは自分が置かれている状況をわかっているのだろうか?
否、全然わかってない。
小さなため息が孟起の口から洩れる。そういうところはあのシャオロンとそっくりだ。タバコを吸おうとしたが、こちらに気がついた玄劉に止められた。ついでと言わんばかりにスピーカーのボタンを押す。いつの間にか他のメンバーが静かになっている。
「じゃあ、お礼代わりにこっちの質問に答えろ」
『かまいませんよ。しかし、電話では失礼になりますので十二時に七海公園ブランコのそばでお会いしませんか?』
「「「「へ」」」」
突然の提案にその場にいた全員が驚きの声を上げた。
『それでは錦殿、お待ちしております。それと、徳田殿、雲長殿、タイラ殿もいらしてください。皆でお待ちしております』
「・・・・・・おまえ、何を考えている」
『各人で異なった質問があるかと思いまして。ぜひ、全員でいらしてください。よろしく御願いしますね』
「わかった。全員で行ってやる。そっちも全員来るのか?」
『元よりその予定ですが、あなた方が一人だけがいいと仰るのでしたらそう致します』
「いや、全員で来い。こっちもそのほうが都合がいい」
だろ、と孟起が振り向くと全員が首を縦に振った。
「じゃあ、十二時に七海公園のブランコの近くでな」
『はい、ではお待ちしております』
チンと電話が切れる音が響く。
「面と向かってご対面できるチャンスが来たぜ。俺は行くが、おまえらはどうするんだ」
「儂も行こう。一度会ってみたいと思っておったところだ」
『なら、私も行こう。すぐそっちに・・・・・・』
おいおい、ダメだろそりゃ。
「いや、兄者は行かない方がいいだろう。彼らが敵である可能性も完全に捨てきれない」
『だが・・・・・・』
「それに、奴らはこっちのことを調べている。サードが俺とタイラのことを知っているのはわかる。子龍と小龍に協力しているのならここのことを知っていても不思議じゃない。だが、会った筈のない社長や雲長のことまで知っていると言うことはそれなりに調べている証拠だ」
「ああ、しかも、儂のことを雲長と呼んだ。国籍に書かれた関 長治でない本命の方をだ」
「これで決まりだな。資料庫への不法侵入者は十中八九あいつらだな」
侵入方法は謎のままだが、それは聞き出せばいいだけの話。霊体で無理やり侵入した線が濃厚だ。孟起の口の端が上がる。面白がっている時の孟起の癖だった。
「なに、そんな重大なことを何故今まで黙っていたのだ?」
「今話しただろ」
「ふん、まあいい。タイラ、おまえは残れ」
「父上、何ででござるか?」
タイラの表情は非常にガッカリしていた。サードが井上 久美子と関係しているとわかったのだ。タイラとしては今度がわからない以上会える時に会いたいのだろう、が。
「おまえには儂らがいない間の事務所の留守を頼みたい。隙を付いて誰が襲ってくるかわからぬが、できるな」
他ならぬ尊敬する父の頼み。それも実力を認められてである。
「もちろんでござる」
タイラに断るの選択肢はなかった。
「では、行ってくる」
「吉報を待ってろ」
二人が事務所を出発したのはそれから間もなくだった。
続く
「おい、電話だぞ」
だが、感動に打ち震えている仲間は鳴り響く電話に全く反応を示さない。仕方なく、もう起は受話器に手を伸ばした。
「何か用事か?」
この一言で孟起が電話係から外された理由が如実に表れている。
『夜分遅くに申し訳ございません。錦 孟起殿でしょうか?』
受話器から聞こえてきたのは聞き覚えのある声だった。
「おまえ、サードか」
『先日は危ないところを助けていただき誠にありがとうございました』
「まさか、お礼を言うためだけにかけてきたんじゃないだろうな」
『ええ、あの時は助けていただいたのにお礼も言えずに別れてしまったので直接とお礼に参ろうかと思いましたが、なかなか暇が見つからず・・・申し訳ありません』
「おい」
こいつは自分が置かれている状況をわかっているのだろうか?
否、全然わかってない。
小さなため息が孟起の口から洩れる。そういうところはあのシャオロンとそっくりだ。タバコを吸おうとしたが、こちらに気がついた玄劉に止められた。ついでと言わんばかりにスピーカーのボタンを押す。いつの間にか他のメンバーが静かになっている。
「じゃあ、お礼代わりにこっちの質問に答えろ」
『かまいませんよ。しかし、電話では失礼になりますので十二時に七海公園ブランコのそばでお会いしませんか?』
「「「「へ」」」」
突然の提案にその場にいた全員が驚きの声を上げた。
『それでは錦殿、お待ちしております。それと、徳田殿、雲長殿、タイラ殿もいらしてください。皆でお待ちしております』
「・・・・・・おまえ、何を考えている」
『各人で異なった質問があるかと思いまして。ぜひ、全員でいらしてください。よろしく御願いしますね』
「わかった。全員で行ってやる。そっちも全員来るのか?」
『元よりその予定ですが、あなた方が一人だけがいいと仰るのでしたらそう致します』
「いや、全員で来い。こっちもそのほうが都合がいい」
だろ、と孟起が振り向くと全員が首を縦に振った。
「じゃあ、十二時に七海公園のブランコの近くでな」
『はい、ではお待ちしております』
チンと電話が切れる音が響く。
「面と向かってご対面できるチャンスが来たぜ。俺は行くが、おまえらはどうするんだ」
「儂も行こう。一度会ってみたいと思っておったところだ」
『なら、私も行こう。すぐそっちに・・・・・・』
おいおい、ダメだろそりゃ。
「いや、兄者は行かない方がいいだろう。彼らが敵である可能性も完全に捨てきれない」
『だが・・・・・・』
「それに、奴らはこっちのことを調べている。サードが俺とタイラのことを知っているのはわかる。子龍と小龍に協力しているのならここのことを知っていても不思議じゃない。だが、会った筈のない社長や雲長のことまで知っていると言うことはそれなりに調べている証拠だ」
「ああ、しかも、儂のことを雲長と呼んだ。国籍に書かれた関 長治でない本命の方をだ」
「これで決まりだな。資料庫への不法侵入者は十中八九あいつらだな」
侵入方法は謎のままだが、それは聞き出せばいいだけの話。霊体で無理やり侵入した線が濃厚だ。孟起の口の端が上がる。面白がっている時の孟起の癖だった。
「なに、そんな重大なことを何故今まで黙っていたのだ?」
「今話しただろ」
「ふん、まあいい。タイラ、おまえは残れ」
「父上、何ででござるか?」
タイラの表情は非常にガッカリしていた。サードが井上 久美子と関係しているとわかったのだ。タイラとしては今度がわからない以上会える時に会いたいのだろう、が。
「おまえには儂らがいない間の事務所の留守を頼みたい。隙を付いて誰が襲ってくるかわからぬが、できるな」
他ならぬ尊敬する父の頼み。それも実力を認められてである。
「もちろんでござる」
タイラに断るの選択肢はなかった。
「では、行ってくる」
「吉報を待ってろ」
二人が事務所を出発したのはそれから間もなくだった。
続く
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