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11ー15、カメ、ちょっと驚く

エターナニル魔法学園特殊クラス

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「おい、武器作成持ってねー?」
「そんな便利魔法ないって」
「うち、使用武器これだけやから」
扇子を取り出し、開く。中央にある鏡がリルク先生を映し出す。どす黒い何かが纏わりついていた。
「何、これ?」
死の気配とか、瘴気の渦とかそういうものではない。言うなれば、殺気感情の気が映像化した感じだろう。問答無用も説明がつく。槍に雷属性が乗っている理由は・・・・わからないでもないか。槍からは黒い稲妻が発せられている。真眼鏡を通してだと見たくないものまで見える。
「それ、リング先生の、どすな」
「・・・・・・」
確か、リング先生は雷属性の魔法をよく使っていた。それが付加された魔槍。嫌な予感がする。
「リング先生どないしはりました?」
「あなたが、それを、聞きますかっ」
グィッと襟元を掴まれて移動させられる。触れてはならないところだったかとレイカはちょっと後悔した。普段リング先生の後ろで微笑んでいる、怪我した時は回復魔法をかけてくれるリルク先生が声を荒げるのはとても貴重なことである。貴重だが、良くはない。レイカに向かって繰り出される突きをジアルが全て捌いていく。ジアルの顔が笑っているのは気のせいではない。
「いなかったら、即死どすな」
「戦闘狂も役に立つんだなww」
カズと談笑できる程度にはレイカの精神は回復した。
「それにしても、リング先生と言う人の行方、レイカが知ってるって感じだけれど?」
「うち、あまりリング先生と関わりがない」
質問もリルクにしていた。体育会系のノリがちょっと苦手なのだ。
「なら、何らかの原因がレイカちゃんに関わっているって感じか・・・」
「ち、やはり英雄に素手はキツイぜ」
吹き飛んできたジアルを二人で支える。何とか転落死は免れた。
「英雄どすか?」
「有名っちゃ有名だぜ。魔族から宝玉を取り戻したエルフの英雄、Syougun、リムアルク・エッテシンガー」
「あの事件にあなたはまだ関係していなかったと思いますが」
「あー、絡みで知らされたってとこだ。歴史として」
「ひょっとして、ジアルはん、魔族なんどすか?」
「おう、生まれ変わりでも魔族だぜb」
「魔族の中でも超有名人だぜwww」
知らない奴はいない程の有名人らしい。魔族で有名人となれば、戦争を引き起こした怠惰の魔王と戦争を終結させた力の魔王がエターナニルでも名が知れている。失礼、知れているのは称号である。
「しっかし、思っていた以上に嫌悪ないな」
「うち、カーレントの生まれやから」
魔法が発達していないカーレントでは、魔族被害はそれ程ない。いや、歴史の裏面を見ると関与しているのだが。奇跡的に魔法に触れていたレイカでも存在を知っている程度だった。魔物や魔獣なら数度だけ戦ったこともあるが、その程度である。戦争までしていたエターナニルとは雲泥の差と言ってもいいだろう。
「そりゃいい。これからもよろしくな」
「はい、よろしゅうお願いしますぇ」
「っと、悠長にしてる暇はなさそうだぜ」
バチバチと青白い雷撃が槍だけでなくリルクの全身を覆っていく。身体能力強化魔法化と、全員が構える。そんな彼らに笑いかけて、リルクは歌い出した。透き通ったその美声で、不思議な歌を歌った。
「何だ?」
「魔導歌っぽいが」
「せ、精神効果系の魔導歌どす。この場にある魔法陣と同調させて、効果を倍増させはる」
「精神効果属性ってあれだろ。弱ってる奴しか効かないって」
「お、ジアルよく覚えてたな」
「リトアに教えてもらったから、なっ」
突如、ジアルが右に吹き飛んだ。リルクは歌い続けている。攻撃する手段などない・・・・・・いや、一つあった。その人物はカズも蹴り飛ばし、レイカを掴み、地面に叩き付けた。
「ダメですよ。この状況下で弱っている人を放っておいては」
「・・・・・・」
濁った目でレイカを見下ろすリルクの表情は、何もなかった。そう、表情が丸ごと死んでいたのである。これでは、生きた死体と変わりない。
「(あれ?この人・・・)」
どこかで見たことあるような、とレイカは思った。だが、そんな余裕はすぐになくなってしまった。かかった細い指でギリギリと首を絞められる。
「リ、リト、ア先、輩・・・・・・・」
呼吸困難になる前に握力による痛みで涙が出てきて視界が歪む。

                                  続く
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