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10ー28、カラス、眠らせる
エターナニル魔法学園特殊クラス
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「おはよう、まだ居たんだ」
「おはようございますぇ」
「・・・・・・」
結局、二人が目を覚ましたのは真夜中になってからだった。鳴るお腹×2を五月蠅く思ったロンによって再度眠らされた。睡眠薬によって。ここは剣と魔法の世界である。錠剤は珍しいのだろう。あっさり飲んだレイカと違い、イスカが怪訝そうな顔をした。しかし、睡眠薬(液状)はあいにく持ち合わせがない。子守唄(ララバイ)は音属性魔法なのでロンが苦手とするところだった。
「・・・・・・」
その分、忍び歩きや隠密は得意中の得意である。風の様にイスカの背後に回ると、手刀を首筋に一閃落とした。イスカはわかる間もなく気絶した。
翌日
『えー、今日は晴天。絶好の体力測定日和となりました。今回の結果がのちの成績にも大きく関わってきます。それぞれのチームで仲良く節度持って行動するように』
「何であんたとチームなのよ」
「・・・・・・」
「え、えっと、あの・・・・・・」
校長の話もなんのその。明らかにイライラをぶつけるイスカに、表情を一ミリとも変えないロン。間にいる少女が気の毒だと、新入生達は思った。
「大体、あんた入学式どこにいたのよ」
「・・・体育館」
「でしょうね。そこであってたんだから」
『レクリエイション風にしてある。どこから回ってもいいが、今日中に全て回り終えること。終えない場合は退学の可能性もあると思え』
10分も話していた好調とは違い、リング先生の説明は端的だった。そして、恐ろしかった。予想外の言葉にイスカが固まる。そうだろう。今までの経験でなかったことだ。
『ほい、スタート』
小さな破裂音と共に新入生は全員走り出した。
「よっと、飲まれるんじゃないわよ」
「ありがとう、えっと・・・・・・」
イスカの表情が曇る。記憶継続されてないとは知らされているはずだ。よって、あの表情になることはおかしい。
「・・・・・・ロン。よろしく」
イスカの横に立ち、レイカには見えないように尻を抓る。痛みで正気に戻ったのだろう。
「、学生名イスカよ。これから6年間よろしくね」
まだ少し引きつっているが、笑顔にはなった。
「えっと、レイカ・クロガネ。学生名レイカどす。よろしゅうに」
疑問に思ってはいるが、特に問題なく受け入れている。レイカの緊張も解けたようだ。素の京言葉が出ている。
「最初、どこ行く?」
50m走、反復横跳び、高跳び、腕力測定、握力測定。それぞれの場所まで行くのに持久力測定と言ったところだ。学園島中に散らばってはいるが、小島なので回り切れないことはない。
「うちは何所でも」
「・・・・・・」
そう言う奴らだったわ、とイスカがため息を吐く。
「なら、あたしが一番得意としてるやつで」
「ほな、高跳びからどすな」
高跳びがあるのは、島北西部。寮がある場所だ。ここからだと5km程。一走りで届く距離である。さっそく、ひとっ走りして行く。
「いらっしゃい、スタート地点から結構遠い部類に入るここを選んだのはあなた達が初めて・・・・・・お水いる?」
チェック地点ではリムル先生が待っていた。軽いジョギング気分で走っていた。イスカとロンは。到着時にはレイカはすっかり息切れしていた。全力疾走で二人についてきたのだ。歩幅の関係で。
「あ、ありがとうございます」
震える手でコップを掴む。落としそうになったのをイスカが拾って差し出す。水温4度上昇。イスカもエネルギーを放出しているようだ。
「ここではジャンプの高さを測定するよ。これは全ての測定に共通しているけれど、魔法は一切禁止。今後の教育方針を決めるのにも使うので全力で頑張って」
そう言ってリムル先生が指したのは上限が見えない空を突き抜けるような棒だった。埋めているのではなく生えているようだ。見る限り真っ直ぐに地面と垂直に伸びている。目盛りは50cm感覚で振ってある。精密に測定する訳ではないようだ。
「1番、イスカ。いっきます」
足に力をいっぱい込めて、地面を蹴る勢いで弾け飛ぶ。風がない時を見計らっての跳躍は雲に届いた。戻った時、地面にヒビが入った。
「2番、レイカ。いきますぇ」
棒に衝突する勢いで飛び出したレイカは30cmもいかない内に棒に本当に衝突した。
「・・・最後」
音もなく1m飛び上がって軽くタッチするとまた音もなく下り立った。
「きっちり1m、か」
「絶対本気じゃないでしょ」
「・・・そんなことない」
死んだ魚の様な深い青色の瞳は面倒臭いと言っていた。1mは跳べるエターナニルの種族の運動性の高さよ。
「ロンはすでに測ってあるから大丈夫だね」
「うん?入学前に身体測定したってこと?」
「・・・似たようなもの」
1ヶ月に1度、ロンは身体能力を測定してロイズに提出している。事情は多々あるが、1番の目的は身体能力の低下がないかどうか調べるためだ。ない訳ではないが、落ちている場合、主に報告しなければならない。彼は心配性だから。
「さて、次は・・・・・・」
「順当に行くとしたら、ジャンプ系終わらせはる?」
「・・・・・・」
「なら、幅跳びね」
続く
「おはようございますぇ」
「・・・・・・」
結局、二人が目を覚ましたのは真夜中になってからだった。鳴るお腹×2を五月蠅く思ったロンによって再度眠らされた。睡眠薬によって。ここは剣と魔法の世界である。錠剤は珍しいのだろう。あっさり飲んだレイカと違い、イスカが怪訝そうな顔をした。しかし、睡眠薬(液状)はあいにく持ち合わせがない。子守唄(ララバイ)は音属性魔法なのでロンが苦手とするところだった。
「・・・・・・」
その分、忍び歩きや隠密は得意中の得意である。風の様にイスカの背後に回ると、手刀を首筋に一閃落とした。イスカはわかる間もなく気絶した。
翌日
『えー、今日は晴天。絶好の体力測定日和となりました。今回の結果がのちの成績にも大きく関わってきます。それぞれのチームで仲良く節度持って行動するように』
「何であんたとチームなのよ」
「・・・・・・」
「え、えっと、あの・・・・・・」
校長の話もなんのその。明らかにイライラをぶつけるイスカに、表情を一ミリとも変えないロン。間にいる少女が気の毒だと、新入生達は思った。
「大体、あんた入学式どこにいたのよ」
「・・・体育館」
「でしょうね。そこであってたんだから」
『レクリエイション風にしてある。どこから回ってもいいが、今日中に全て回り終えること。終えない場合は退学の可能性もあると思え』
10分も話していた好調とは違い、リング先生の説明は端的だった。そして、恐ろしかった。予想外の言葉にイスカが固まる。そうだろう。今までの経験でなかったことだ。
『ほい、スタート』
小さな破裂音と共に新入生は全員走り出した。
「よっと、飲まれるんじゃないわよ」
「ありがとう、えっと・・・・・・」
イスカの表情が曇る。記憶継続されてないとは知らされているはずだ。よって、あの表情になることはおかしい。
「・・・・・・ロン。よろしく」
イスカの横に立ち、レイカには見えないように尻を抓る。痛みで正気に戻ったのだろう。
「、学生名イスカよ。これから6年間よろしくね」
まだ少し引きつっているが、笑顔にはなった。
「えっと、レイカ・クロガネ。学生名レイカどす。よろしゅうに」
疑問に思ってはいるが、特に問題なく受け入れている。レイカの緊張も解けたようだ。素の京言葉が出ている。
「最初、どこ行く?」
50m走、反復横跳び、高跳び、腕力測定、握力測定。それぞれの場所まで行くのに持久力測定と言ったところだ。学園島中に散らばってはいるが、小島なので回り切れないことはない。
「うちは何所でも」
「・・・・・・」
そう言う奴らだったわ、とイスカがため息を吐く。
「なら、あたしが一番得意としてるやつで」
「ほな、高跳びからどすな」
高跳びがあるのは、島北西部。寮がある場所だ。ここからだと5km程。一走りで届く距離である。さっそく、ひとっ走りして行く。
「いらっしゃい、スタート地点から結構遠い部類に入るここを選んだのはあなた達が初めて・・・・・・お水いる?」
チェック地点ではリムル先生が待っていた。軽いジョギング気分で走っていた。イスカとロンは。到着時にはレイカはすっかり息切れしていた。全力疾走で二人についてきたのだ。歩幅の関係で。
「あ、ありがとうございます」
震える手でコップを掴む。落としそうになったのをイスカが拾って差し出す。水温4度上昇。イスカもエネルギーを放出しているようだ。
「ここではジャンプの高さを測定するよ。これは全ての測定に共通しているけれど、魔法は一切禁止。今後の教育方針を決めるのにも使うので全力で頑張って」
そう言ってリムル先生が指したのは上限が見えない空を突き抜けるような棒だった。埋めているのではなく生えているようだ。見る限り真っ直ぐに地面と垂直に伸びている。目盛りは50cm感覚で振ってある。精密に測定する訳ではないようだ。
「1番、イスカ。いっきます」
足に力をいっぱい込めて、地面を蹴る勢いで弾け飛ぶ。風がない時を見計らっての跳躍は雲に届いた。戻った時、地面にヒビが入った。
「2番、レイカ。いきますぇ」
棒に衝突する勢いで飛び出したレイカは30cmもいかない内に棒に本当に衝突した。
「・・・最後」
音もなく1m飛び上がって軽くタッチするとまた音もなく下り立った。
「きっちり1m、か」
「絶対本気じゃないでしょ」
「・・・そんなことない」
死んだ魚の様な深い青色の瞳は面倒臭いと言っていた。1mは跳べるエターナニルの種族の運動性の高さよ。
「ロンはすでに測ってあるから大丈夫だね」
「うん?入学前に身体測定したってこと?」
「・・・似たようなもの」
1ヶ月に1度、ロンは身体能力を測定してロイズに提出している。事情は多々あるが、1番の目的は身体能力の低下がないかどうか調べるためだ。ない訳ではないが、落ちている場合、主に報告しなければならない。彼は心配性だから。
「さて、次は・・・・・・」
「順当に行くとしたら、ジャンプ系終わらせはる?」
「・・・・・・」
「なら、幅跳びね」
続く
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