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10ー27、カラス、託される

エターナニル魔法学園特殊クラス

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 視界端にあった雲が中央に来た時、熱源反応を感知した。風をなくし、炎の通り道を消す。ゆっくりと顔を向けると、イライラ顔のイスカと目が合った。
「あんた誰?」
「・・・・・・」
答える義理はない。
「レイカの側にいないで」
ドアの方に移動するとイスカはドカリとベッドに再度横になった。本当にレイカに近かったことが気に入らなかったらしい。寝息を立てて眠り出した。イスカは自国の問題を事前解決し、反対を押し切って入学している。レイカは休学生である従姉の力を借り、時流壁を超えてやってきた。到着時に依頼を持ちかけられた。どちらも疲れているのだろう。疲労数値が限界値を超えている。これでは夕食まで起きることはないだろう。
「そうだ。ロンに頼みがある」
「・・・・・・」
しばらくするとリムル先生が戻ってきた。日が沈みかけている。体育館から新入生が寮に移動している。寮、か。
「人数が足りなくて3人チームが作れないから彼らのチームに臨時に入ってもらいたいのだが、用事はあるか?」
「・・・ない」
懐から算盤を取り出し、弾く。
「少し少ないよ」
それにリムル先生がちょいちょいと弾き加える。
「これくらいは出せるけれど、どう?」
「・・・受理した」
「ありがとう。依頼内容は二人の護衛。ただし、テストには手を出さないこと」
そう言えば、明日は体力測定があった。二人の力を暴走させないための見張り。そして、暴走した時のストッパー。成程、確かにイスカとの属性相性はいい。適任だと思われる。
「そうだ。お前もついでに受けとけ」
窓から顔を覗かせたリング先生に言われた。新3年生の体力測定はロンが戻ってくる前に終わったそうだ。ロンが戻ってきたのは入学式前日の真夜中。
「仕事もいいが、学業を疎かにするなよ」
「・・・・・・」
「わかればいいんだよ。リムル、そろそろ行くぞ」
「はい・・・・・・ロン、二人をよろしくお願するよ」
こうして、自分は3人の人からこの二人の身辺警護を任されたことになる。正直面倒臭いが、依頼は依頼である。他の二人からなら無視するという最近覚えた手を使うのだが、最初の依頼人は主である。内容はちょっと違うが、役目は全うする。それがロンの存在理由であるからだ。


                            続く
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