エターナニル魔法学園特殊クラス

シロ

文字の大きさ
147 / 220
9ー17、カメ、石を砕く

エターナニル魔法学園特殊クラス

しおりを挟む
「逃がしたやつはいないか?」
「大丈夫だよ」
その辺に転がっていた人達をジアルとリトア2人で運び、テントに入れる。そうこうしているとまた火が近づいてきた。もたもたしているとまた戦闘になる。全員と箱に水弾きの魔法をかけて、川へ飛ぶ。川の上を全速力で上流に向かって駆け抜ける。
「よし、ここまでくればいいだろう」
10kmくらい走り、レイカがヘトヘトになった頃、ジアルがようやく足を止めた。断崖絶壁だったが、一っ跳びで上陸した。もちろん、あの箱を担いだままで。レイカがどうやって上がろうかともたもたしていると、リトアが抱っこして跳び上がってくれた。ほとんど音もなく着地する。すぐに少し離れた茂みの中に屈み込んでようやく一息つけた。
「ふぅ、ようやくひと段落どす」
「はぁ?何言ってんだ?これからが本番だぜ」
「どれくらい離れてもらった方がいいかな?最低でも10mはいる感じだったけれど」
「レイカはあっちに見える大樹の元にでもいろ」
何でと尋ねる前にレイカはジアルによってヒョイッと担ぎ上げられてその樹の元へ投げ捨てられた。唖然とするレイカを放っておいてジアルはリトアの元へと戻っていった。その後、しばらくしてからリトアがやってきてレイカの周りに簡易結界を張って戻っていった。
「なんや、戦闘でもあるような感じやなぁ」
そう呟いた次の瞬間、何かがぶつかった鈍い音と共に目の前が森から荒れ地に変化した。木々が薙ぎ倒される。後ろにあった樹にも何かによって抉られた新しい跡が付いていた。
「ち、思ったよりも馬鹿力だな」
「レイカちゃん、無事?」
「は、はい、何とか」
サーッと顔が青くなる。結界がなかったら全身打撲で死亡していただろう。
「い、一体何が?」
リトアに抱えられて移動する。2人が通った後を毟り取った跡がついてくる。
「攻撃を受けているんだよ」
「それはわからはります」
「物理攻撃だから出番はないと思うよ」
そうだと思っていた。魔法攻撃なら吸収して打ち返すことができる。だが、物理攻撃はどうしようもない。素早さも高くないので避けるもの苦手なレイカは大人しくリトアの腕の中に納まっていた。魔族はターゲットをレイカに決めたようで執拗に狙ってくる。間一髪でリトアが避ける。樹を薙ぎ倒しながら進んでいく魔族の勢いは止まることを知らない。川上に川上にと逃げる。
「くそ、触手邪魔ッ」
ジアルが何度も斬りかかるが、そのたびに無数の触手が彼の剣を弾く。攻撃の度に減った触手が再生される。なのに、反撃はない。不公平だと思いながらレイカは周囲を見渡した。森だから木の妖精が、川辺には水の妖精がいるのだが、魔族の瘴気に当てられて今は姿を隠している。
「火属性の妖精はんおらへんかいな?」
「火口近くに行かないといないと思うよ」
強制的に呼び出すこともできるが、そのためには魔法陣を描いて、呪文を唱える必要がある。止まった時点でアウトなのは目に見えている。何かないかなと懐を探っていると小さな巾着があった。上質な布で誂えられており、銀のタグが付いている。従姉が餞別に持たせてくれたものだ。
「珍しい物を持っているね」
中には色とりどりのビー玉が入っている。マジックアイテムで、それぞれの色にあった属性魔力が込められている一品だ。魔晶石の一種だと思えば話は早い。オハジキ型に加工された属性が決まっている魔晶石だ。
「どうやって使うんどすか?」
「持って呪文を唱えればいけるんじゃないかな」
使い方従姉に聞いてくれればよかったと思う。赤い石を握って念じる。
『AOMDYENF>DO?』
肩の上に小さな蜥蜴が現れた。炎を纏っているトカゲ、サラマンダーである。割とメジャーな低級の火の妖精だ。何か言っているようだが、レイカには妖精語がわからなかった。
「引」
「レイカちゃん、問答無用はどうかと思うよ」
「ごめんなぁ、できるだけ早ぅ覚えるから、堪忍なぁ」
妖精を吸収してその能力を得る力を持つレイカだが、実はまだ妖精語ができない。妖精語は4年生の言語で習うので、時期に覚えられるだろう。今までどうしていたかというと、今回の様に無理やり吸収してしまうのである。なので、カーレントの妖精達の間でレイカは歩く魔物と恐れられている。エターナニルでもそう呼ばれるのは遠くない。
「弾けろ、ファイヤーボール」
扇の上に生み出した火の玉を触手目掛けて投げつける。爆発燃え広がるかと思ったそれは、青い閃光によって消滅した。
「森でそれはダメかな」
レイカの体を支えている方とは反対の手に拳銃が握られていた。魔法無力化の弾(金貨4枚)を撃ったのだろう。金欠なのに・・・・正直すまないことをしたと思っている。
「レーザーならええんどすか?」
火属性と光属性の複合魔法で、光線が当たった個所を熱傷することができる。狭い範囲を燃焼したい時にお勧めな魔法だ。白色のオハジキを取りだし、呼びだしたウォールウップスを吸収する。低級妖精なら5人(?)まで吸収可能なことまでわかっている。
「表面だけ焼けるのなら」
「無理どす」
貫通属性がある火光属性の攻撃魔法である。揺れている状態では狙いを定めるのも難しい。うっかりがあっては困る、どころではない。リトアが攻撃しないのも同様の理由だろう。
「リトア、そいつの動きを止めろ。3秒でいい」
「う~ん、ちょっと待って」
「あまり時間はねーぞ」
「こっちに何かあるんどすか?」
先程の町は川下にある。下ってはいないのだからそっちには向かっていない。
「一晩走り続けたら村がある」
「何で無関係な村に向かってるんどすか?」
「人に吸い寄せられるからな?」
「何して?」
「人の負の感情が瘴気と酷似しているからかな」
「食べてもらったらええんとちゃいます?」
負の感情がなければ、気分スッキリ快調である。
「そんな器用な食べ分けできるの淫魔くらいだぜ」
食べるとしたら本体ごとペロリだと言われ、レイカはそう言えばそうだったと今まで退治してきた魔族を思い出した。カーレントではモンスターや妖怪、悪魔などと言われている彼らの食事跡は無事だとはとても言えない。
「それにあくまで似てるだけだから」
食えど食えど満たれぬこの腹よ、状態に陥り、さらなる獲物を求めてさ迷い歩く。悪循環の始まりだ。
「何か、虚しいどすなぁ」
「異世界転移で衣食住が確保できなかったらこうなるかな」
食住が確保されていただけまだましな方なのだろう。それでもこっちの空気はジワリジワリと彼女を蝕んでいった。もはや、本当の女性なのかもわからない。その姿は四足の異様な化け物だった。
「ドリァッ!」
ジアルの重い一撃を相手はスピードを速めることで軽傷に抑えた。数十本の触手がその一撃でできたヒビの中でウネウネと畝っていた。もはや暴走となっているそれは、リトアに追いつく直前で透明な壁に阻まれた。すぐに反転したが、その地面にもナイフが突き刺さっており、またしても透明な壁にぶち当たる。リトアが作り出した結界だ。上へ逃げようと伸ばした触手をレイカの光線が焼き払う。
「これで終わりだ!」
樹を踏み台にして飛び込んだジアルの縦薙ぎは見事に魔族の核を切り裂いた。焼け爛れる様な臭いを発しながら爆走していた塊は湯気を立てて縮んでいった。
「・・・これ無事なんどすか?」
「斬れたのは狂気の部分だから症状は軽くなるんじゃないかな」
ジュワジュワと黒いものが溶けていく。中から出てきたのは・・・老婆だった。鷲鼻の物語に出て来そうな魔女風老婆である。
「ず、ずいぶんパラフルなお婆ちゃんどす」
「いや、そうでもなさそうだよ」
全身筋肉痛で動けなくなった老婆にリトアは回復魔法をかける。すると、彼女の表情が次第に柔らかくなっていく。
「あれ?魔族に回復魔法って効きはるの?」
「光は毒だけれど水ならセーフだよ」
闇属性である魔族にとって光属性である魔法は全て毒となる。怪我に塩を擦り込むのと同意味である。なので、魔族相手に光回復魔法をぶつける戦略が存在する。今回の様に回復させたい場合には、他の属性、水木属性のどれかの回復魔法に頼ることとなる。どちらも対象の回復力を増加させる方法しか取れないので、元の体力が少ないと回復量がガクリと落ちる。なので、リトアは何度も何度も老婆に魔法をかけていた。そのたびに、リトアが持つ魔晶石が音を立てて割れる。
「気前いいな」
「他に使える人がいないからかな」
「レイカ使えないのか?」
「火属性に代えたばかりだから無理、なはずだよ」
「うん、属性変更は一定時間経たへんと使えんの」
半刻くらいしか経っていないでのまだ使えない。妖精の変更は術者の体調に支障が出るし、取り込んだ妖精もただでは済まない場合がある。サラマンダーにお礼を言いながらレイカはふと思った。リトアにそのことを教えただろうか?こんな能力そうそういないので、教科書に載っているとも思えない。訊こうとしたが、老婆と何かを話している最中なので遠慮した。何語なんだろうか?と思っているとジアルが魔族界の交易共通語だと教えてくれた。
「で、カーレントの神子とは何時会えるんだ?」
「ええっと、あ、メール返ってきた」
簡潔なメールで中の森精霊樹広場前、10時とだけ書かれていた。短い指を必死に動かして『了解。またあとで』と打って送信した。
「中の森の精霊樹広場前ってところどす」
「中の森ってことは、黒髪エルフのところだな」
「エルフと獣人って仲悪いと聞いたけれど、大丈夫どすか?」
「仲の悪いのはあの事件があった霧白森だな」
何だろうと思っていると移動中にリトアが掻い摘んで説明してくれた。


                              続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

落ちこぼれの【無属性】魔術師、実は属性そのものを定義する「概念魔法」の創始者だった

風船色
ファンタジー
「魔法とは才能(血筋)ではなく、記述されるべき論理(ロジック)である」 王立魔導学院で「万年最下位」の烙印を押された少年、アリスティア・レイロード。属性至上主義のこの世界で、火すら出せない彼は「無属性のゴミ」と蔑まれ、ついに卒業試験で不合格となり国外追放を言い渡される。 しかし、彼を嘲笑う者たちは知らなかった。アリスティアが、既存の属性魔法など比較にならないほど高次の真理――世界の現象を数式として捉え、前提条件から書き換える『概念魔法(コンセプト・マジック)』の使い手であることを。 追放の道中、彼は石ころに「硬度:無限」の概念を付与し、デコピン一つで武装集団を粉砕。呪われた最果ての森を「快適な居住空間」へと再定義し、封印されていた銀嶺竜の少女・ルナを助手にして、悠々自適な研究生活をスタートさせる。 一方、彼を捨てた王国は、属性魔法が通用しない未知の兵器を操る帝国の侵攻に直面していた。「助けてくれ」と膝をつくかつての同級生や国王たちに対し、アリスティアは冷淡に告げる。 「君たちの誇りは、僕の昼寝より価値があるのか?」 これは、感情に流されない徹底した合理主義者が、己の知的好奇心のために世界の理を再構築していく、痛快な魔導ファンタジー。

処理中です...