エターナニル魔法学園特殊クラス

シロ

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9ー11、ウサギ、先行する

エターナニル魔法学園特殊クラス

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「・・・何で?」
ようやく絞り出した声は震えていた。
「わからない。あたしだって突然の出来事で動けなかったんだもん」
ダメね、守るって決めたのに・・・・・・。軽い口調とは裏腹に、イスカは悔しそうに歯軋りした。
「そんなら、うちは死んだんどすか?」
「リトア先輩が庇ってくれたけれど、多分無理ね」
リング先生の槍が二人の胸を貫いていたのをイスカははっきりと覚えている。そしてそこまでだった。そこから世界は嘆きの闇に呑まれた。
目を開けるとイスカはハンダリ国の超高層タワーの展望室に突っ立っていた。学園に行く2ヶ月前に上った記憶がある。時間が巻き戻ったとわかったイスカの行動は迅速だった。実家に母の叔父のことを連絡し、用意を整えると、先手必勝とアジトに乗り込んだ。ジャーマンスープレックスで叔父を黙らせると背後にいた魔族サザエガルドを呼び出させ、封印されている王の魂と会話する機会を与えることを約束した。その時にレイカに連絡しようとしたのだが、携帯のメモリーもリセットされていたので勝手に約束したのだ。いざとなれば破る気満々で。
祖国の無事を確認してから学園にやってきた。そして、クラス分けで特殊クラスになり、ロイズとロンと再開して今に至る。クラス分けの時能力を暴走させて発火したところは変わらない。ただ、水をかける人がいなかったので講堂が一つなくなる火事となった。今それがあった場所は花が植えられ、ちょっと広い休憩所になっている。
「心配せぇへんでも、傷はないぇ」
胸に手を当ててにっこり微笑むとイスカも安心したのかホッと息を吐いた。事実、レイカはイスカからこの話を聞くまで自分の身に何かあったなど考えすらしなかった。時間が巻き戻ってから何回も自分の身体を見ているのにである。
「けれどなぁ、リング先生が・・・・・・」
「先生達が敵だなんて・・・・ただでさえ味方がいないのに」
「味方になってくれそうなの・・・ロンはんくらい?」
「ロイズが敵だったらこっちの情報筒抜けね」
ロンの情報収集能力は高い。尋ねないと答えない癖はあるが、それはロイズ以外の話だろう。おそらくだが、ロイズに対してだけロンの報連相は完璧な可能性がある。少なくとも、引き篭もりが学園の情報通と言われるくらいに情報を上げている。
「リトア先輩は・・・・自分のことで手一杯だろうし」
記憶喪失に加え、何やら学業以外で忙しそうな様子。それに優等生のリトアのことだ。先生に相談してみたらと言われるだろう。下手をするとそこから先生に行きかねない。
「どうしよう。八方塞よね、これ」
「わかったのは殺人犯の正体だけどすか・・・・・・」
そこまで言ってレイカは思い至った。一回目、正確に最初なのかはわからないが、レイカにとっての一回目の時、先生達はいただろうか?スタートウに転移している最中に殺されたとも考えられるが、それならば最後に飛び込んだだろうロンが気付いていてもおかしくはない。一回目と二回目(これも定かではない)、巻き戻しの要因とは何なのか?そもそもどうして巻き戻しなどという珍現象が起こったのだろうか。
「偶発とは思えへんよ」
「確かに偶然って言うには、ね」
「時期はどうどすか?」
「う~ん、同一日ではなかったはず」
日数制限とかかなとも思ったが、どちらも入学後、期末試験前としか言いようがなかった。厳密に言えば、一回目は6月中旬の、二回目は7月初めの出来事である。
「ロンがどれだけ覚えてるかよね」
「・・・呼んだ?」
「うわッ」
「何時からいたんどすか?」
レイカの斜め前、イスカの背後から無機質にも似た声が聞こえる。慌てて振り返るイスカ。レイカに至っては急にロンの姿が湧いて出たように錯覚してしまう。ロンが立っていたそこはこれといって視覚障害がある場所ではなかった。
「ロン、気配消して近づかないでって何度言ったらわかるの?!」
「・・・?」
イスカの言葉もこれで何回目だろうか?ロンとしては普通に歩いてきただけなのだろうが、彼の普通は音も立てなければ気配もない。忍者としては正しい在り方だが、常日頃それではいけないとロイズからも注意されていたはずだ。小首を傾げたということは注意されていないのか、はたまた理由がわかっていないのか。
「ロンはん、時間が巻き戻った一回目と二回目の日にちってわからはる?」
「・・・?」
ロンは答えずに首をさらに傾げるのだった。
「えっと、うちらをスタートウに繋がる穴に落とした時とうちが死んだ時なんどす」
「・・・新暦2884年6月24日、新暦2884年7月3日」
「やっぱり別々やね」
「期限切れとかじゃなさそうね」
「・・・ない」
「ロンはんは何の条件で巻き戻されているか知ってはります?」
「・・・・・・ない」
「まぁ、そう簡単に、って何?」
ロンがイスカに手渡したのは透明な石だった。上の方に掛けるための金属が付けられている。レイカはすぐにそれがロイズから貰ったペンダントについていた宝石だとわかった。慌てて確認するといつの間にか紐だけになっていた。
「ちょっと貸して。溶接するから」
紐に通してから加熱して接続部分を溶かす。調整を失敗して紐が燃えた。何とも言えない沈黙が下りた後、ロンが新しい紐を取り出した今度のは耐熱性が高いらしく燃えることなく無事くっ付けることができた。首に掛けてあげるとレイカが嬉しそうに弄るのでイスカまで嬉しくなる。その様子を見ているのがロン以外だったら、プレゼントちゃうやろ、と的確なツッコミを入れてくれた、かもしれない。

                           続く
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