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8-12、カメ、カレーを食す
エターナニル魔法学園特殊クラス
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リトアの瞬間移動で飛空艇の操舵室に移ったロイズはケーブルで機械と自身を繋いだ。一泊置いて機械がうねりを上げて動き出す。このまま待合場所まで行くには目立ち過ぎるので近くの渓谷に舟を隠した。そこからダッシュで喫茶店まで行ったので着いた時には(一人を除き)全員汗だくだった。店員が運んできた水で回復する。トイレに近い角席にロンとリトアが、その隣の席に残りの3人が座った。
「イスカはんは借りんでよかったんどすか?」
イアホンを耳に当てながらレイカが尋ねる。
「自聴で聞けるから大丈夫よ」
「うさぎ族ハ伊達デハナイカ」
「種族騙してどうすんのよ」
「多かったらしいんよ、種族詐欺」
エルフ詐欺が多い。特に人身売買において。
「お、来たようだ」
キョロキョロと辺りを窺いながら男が二人入店してきた。1人はロイズが目印にと指定した薔薇の花束を持っている。普段着とのギャップに笑い出しそうになるのを3人は堪えた。他のお客様からクスクスと笑われているのに顔を赤くしながらも男二人はリトアとロンの席に座った。
「君が電話に出た子だよね」
「・・・そう」
「で、君が被害者の子だね。うんうん似ているね」
あ、落ちた。監視組にはそれがすぐにわかった。
「ど、どうも」
「それでは、さっそく要件に入ろうか?」
「えっと、確か盗撮されているのでしたか?」
「はい、これが証拠の写真です」
鞄から何か小さい紙が出てくる。写真ではなくコピーのようだ。
「見える?」
「チョット見辛イナ。持チ上ゲロ」
ヒソヒソ話程度の大きさだったロイズの呟きをロンが察知したのか、紙を持ってコテンと首を傾げた。
「・・・間違いない?」
「ええっと・・・そうですね・・・・・・僕、だと思います、かな?」
リトア先輩ももっとはっきり自分と言っていいんじゃないのとイスカが呟く。
「あれだけピンボケしていれば仕方あらへんなぁ」
遠視眼鏡を外したレイカがふぅと溜息を吐く。イスカも覗かせてもらったが、普通のA4用紙にコピーされているからか、かなりぼやけている。辛うじて裸の人が写っていると判断できるくらいだ。害があるのか微妙なところである。
「ソノ方ガ都合ガイイ」
衝立一枚しか間がないのであまり大きな声で話せない。しかし、ただいるだけという訳にいかず、イスカとレイカは料理を大量に注文した。ロイズはコーヒーを一杯頼んだ。
始めは男達の説明をリトアとロンは黙って聞いていた。元々話を聞くのが上手い二人である。男達は二人に乗せられてペラペラと喋った。
「話をまとめると著作権があるから削除できないってわけね」
「オ前、納得シテンノカ?」
「え、どこかおかしいの?」
著作権とは、自らの思想・感情を創作的に表現した著作物を排他的に支配する財産的な権利である(byウィキペディア)。
「この場合、問題になるのは肖像権ではないでしょうか?」
肖像権とは、人の姿・形及びその画像などが持ちうる人権のこと(byウィキペデイア)。
「りとあ、正解ダ」
日本では、盗撮行為を罰する法的根拠は迷惑防止条例となる。ただし、各地方公共団体が定めているものを使用しているため、規制はまちまちだったりする。寺院の巫女であるレイカにとってはちょっと縁遠い権利である。国内外からの観光客から写真を撮られまくっている。一緒に写ることもあった。ブログに掲載されていたよ、と友達から教えてもらったことも多々あった。これらのことがレイカの男性嫌いを拍車にかけたのは言うまでもない。
「こちらの肖像権はどのくらいなんどすか?」
「・・・場合ニモヨルガ、一般人ノ盗撮写真ハ論外ジャナカッタカ」
「じゃあ、問題なさそうね」
「ソウハイカナイミタイダゾ」
「それがですね。公開されているのがネット上であるため、削除料が発生しまして」
神妙な顔で若い方の男が言った。先程から説明しているのは若い男だけである。頬に小さな傷がある男は黙って二人を観察している。不安気にしているリトアの様子を見て満足そうに煙草に火をつけた。ロンが彼の傍に灰皿を置く。彼らが注文した飲み物が席に届く。
「・・・値段」
「そうですね。サーバー管理会社だけでも200銀貨はいるかと」
「高いんですね」
「最新の技術を使っていますから。警察も取り締まれていないので仲介料も含まれますし」
「あの辺はどうなの?」
「逆ダナ」
コーヒーを飲み、ロイズが答える。
「管理ねっとわーくガ犯罪ニ使ワレテイルコトヲ訴エレバ管理不十分トシテ迷惑料ガトレル、ガッツリ」
貴方はヤリ手の弁護士か。
「・・・他は」
「あとはサイト管理者への削除料と我々への依頼料となりますから・・・・・・合計700銀貨、くらいでしょうか」
自分達だって善意だけでやっていられませんから、と言って男はメロンソーダーを飲んだ。
「「・・・・・・」」
ハッキリと金額を明示しないと事を見るとふんだくれると思ったらさらに上乗せする気満々なのは思てとれた。黙って座っていた男が煙草をもみ消して席を立つ。どうやらトイレに向かうようだ。数分後、戻ってきた時にレイカは男のポケットから何かが転がったのを見た。小さなチャームのようなもので厳つい感じにXと彫ってある。
「まさかなぁ」
すぐに拾われたのでチラリとしか見えなかったが、それはレイカの数少ないお友達が持っているバッチにそっくりだった。時界が違う、時界が違うと自分に言い聞かせる。
「おら、ネーちゃんら、決まったか、ぁん?」
必要以上の凄味をきかせる態度、間違いない。頬に傷がある人はヤのつく自営業である。余計関わりたくない、そうレイカは思った。それも無理だろうな~と諦めながらカレーを口に運ぶ。
続く
「イスカはんは借りんでよかったんどすか?」
イアホンを耳に当てながらレイカが尋ねる。
「自聴で聞けるから大丈夫よ」
「うさぎ族ハ伊達デハナイカ」
「種族騙してどうすんのよ」
「多かったらしいんよ、種族詐欺」
エルフ詐欺が多い。特に人身売買において。
「お、来たようだ」
キョロキョロと辺りを窺いながら男が二人入店してきた。1人はロイズが目印にと指定した薔薇の花束を持っている。普段着とのギャップに笑い出しそうになるのを3人は堪えた。他のお客様からクスクスと笑われているのに顔を赤くしながらも男二人はリトアとロンの席に座った。
「君が電話に出た子だよね」
「・・・そう」
「で、君が被害者の子だね。うんうん似ているね」
あ、落ちた。監視組にはそれがすぐにわかった。
「ど、どうも」
「それでは、さっそく要件に入ろうか?」
「えっと、確か盗撮されているのでしたか?」
「はい、これが証拠の写真です」
鞄から何か小さい紙が出てくる。写真ではなくコピーのようだ。
「見える?」
「チョット見辛イナ。持チ上ゲロ」
ヒソヒソ話程度の大きさだったロイズの呟きをロンが察知したのか、紙を持ってコテンと首を傾げた。
「・・・間違いない?」
「ええっと・・・そうですね・・・・・・僕、だと思います、かな?」
リトア先輩ももっとはっきり自分と言っていいんじゃないのとイスカが呟く。
「あれだけピンボケしていれば仕方あらへんなぁ」
遠視眼鏡を外したレイカがふぅと溜息を吐く。イスカも覗かせてもらったが、普通のA4用紙にコピーされているからか、かなりぼやけている。辛うじて裸の人が写っていると判断できるくらいだ。害があるのか微妙なところである。
「ソノ方ガ都合ガイイ」
衝立一枚しか間がないのであまり大きな声で話せない。しかし、ただいるだけという訳にいかず、イスカとレイカは料理を大量に注文した。ロイズはコーヒーを一杯頼んだ。
始めは男達の説明をリトアとロンは黙って聞いていた。元々話を聞くのが上手い二人である。男達は二人に乗せられてペラペラと喋った。
「話をまとめると著作権があるから削除できないってわけね」
「オ前、納得シテンノカ?」
「え、どこかおかしいの?」
著作権とは、自らの思想・感情を創作的に表現した著作物を排他的に支配する財産的な権利である(byウィキペディア)。
「この場合、問題になるのは肖像権ではないでしょうか?」
肖像権とは、人の姿・形及びその画像などが持ちうる人権のこと(byウィキペデイア)。
「りとあ、正解ダ」
日本では、盗撮行為を罰する法的根拠は迷惑防止条例となる。ただし、各地方公共団体が定めているものを使用しているため、規制はまちまちだったりする。寺院の巫女であるレイカにとってはちょっと縁遠い権利である。国内外からの観光客から写真を撮られまくっている。一緒に写ることもあった。ブログに掲載されていたよ、と友達から教えてもらったことも多々あった。これらのことがレイカの男性嫌いを拍車にかけたのは言うまでもない。
「こちらの肖像権はどのくらいなんどすか?」
「・・・場合ニモヨルガ、一般人ノ盗撮写真ハ論外ジャナカッタカ」
「じゃあ、問題なさそうね」
「ソウハイカナイミタイダゾ」
「それがですね。公開されているのがネット上であるため、削除料が発生しまして」
神妙な顔で若い方の男が言った。先程から説明しているのは若い男だけである。頬に小さな傷がある男は黙って二人を観察している。不安気にしているリトアの様子を見て満足そうに煙草に火をつけた。ロンが彼の傍に灰皿を置く。彼らが注文した飲み物が席に届く。
「・・・値段」
「そうですね。サーバー管理会社だけでも200銀貨はいるかと」
「高いんですね」
「最新の技術を使っていますから。警察も取り締まれていないので仲介料も含まれますし」
「あの辺はどうなの?」
「逆ダナ」
コーヒーを飲み、ロイズが答える。
「管理ねっとわーくガ犯罪ニ使ワレテイルコトヲ訴エレバ管理不十分トシテ迷惑料ガトレル、ガッツリ」
貴方はヤリ手の弁護士か。
「・・・他は」
「あとはサイト管理者への削除料と我々への依頼料となりますから・・・・・・合計700銀貨、くらいでしょうか」
自分達だって善意だけでやっていられませんから、と言って男はメロンソーダーを飲んだ。
「「・・・・・・」」
ハッキリと金額を明示しないと事を見るとふんだくれると思ったらさらに上乗せする気満々なのは思てとれた。黙って座っていた男が煙草をもみ消して席を立つ。どうやらトイレに向かうようだ。数分後、戻ってきた時にレイカは男のポケットから何かが転がったのを見た。小さなチャームのようなもので厳つい感じにXと彫ってある。
「まさかなぁ」
すぐに拾われたのでチラリとしか見えなかったが、それはレイカの数少ないお友達が持っているバッチにそっくりだった。時界が違う、時界が違うと自分に言い聞かせる。
「おら、ネーちゃんら、決まったか、ぁん?」
必要以上の凄味をきかせる態度、間違いない。頬に傷がある人はヤのつく自営業である。余計関わりたくない、そうレイカは思った。それも無理だろうな~と諦めながらカレーを口に運ぶ。
続く
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