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6-8、カメ、詰まる
エターナニル魔法学園特殊クラス
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裏道から外れた叢の奥に三人は身を隠していた。その視線の先には木の民家が建っていた。その窓辺には光り輝く黄金像が鎮座していた。
「あれが招き猫なのかな?」
「ああ、間違いない」
「間違いあらへんなぁ」
「なら、家の人に事情を説明して引き取らせてもらいましょう」
そう言って行こうとしたリトアを2人して茂みの陰に引き摺りこんで今に至る。
「盗賊達を操っていた人がまだいるかもしれへんのに」
「危ない人かもしれないだろ」
「彼らの頭はあの研究員でしょう。それに探しているということは持っている人は彼らの敵になるわけですし」
「表裏がそう簡単に決まったら苦労はしないっ!」
オコが声を抑えながらそう叫ぶ。
「では、念のため戦力確認しましょうか。私はアイテム使いやっています。変則武道も少しならできる・・・としていいのかな」
「いいだろ。俺は剣士だな。使っているのはこのライトソード。魔法はからっきし。あとオコジョの姿になれる」
「えっと魔法専門のカウンターファイターどす。まだ修行中の身やけど」
「大丈夫、みんな同じだ」
全員語幹に未が付く戦闘業だ。
「しかし、この時界での戦闘だとして魔法使える奴がいないのは辛いかな」
「魔法使いか・・・仲間に2人ほど当てはあるが・・・・・・」
メールの返事はすぐに帰って来た。どちらも任務中で手が一杯だそうだ。
「他の先輩に協力を求められへんのですか?」
「携帯まだ復活しないみたい。レイカちゃんのは?」
「うちのもまだダメどす」
もうすでに壊れているのかもしれない。ボタンをいくら押しても反応が返ってこない。蓋を開け閉めしていてもディスプレイが光ることもない。電池切れかもしれない。
「念のため・・・・・・」
何やら操作をしながらオコが首を傾げる。
「どうかしはりました?」
「いや、大丈夫だ」
携帯をしまうとオコは剣を抜いた。ゾロゾロ行くよりは誰か一人を行かせた方が警戒心が生まれない。クジはオコが嫌がったので(当たりを引き続ける可能性があるからだろう)話し合いになった。その結果、森を一人で歩いていてもおかしくない恰好をしているオコが行くことになった。家の裏側に隠れて中の様子を窺う。この辺に住んでいる樵なのだろう。おじさんが一人暖炉の掃除をしている。
「失礼するぞ」
オコは何の遠慮もなくズカズカと家の中に入っていった。
「おい、おじさん。あの置物貰っていいか?」
そして超直球でおじさんに詰め寄った。しかし、おじさんはフンと鼻を鳴らすと暖炉の清掃に戻っていった。
「貰ってくぞ」
オコが例の像に手をかけた、その時だった。おじさんが手にした火掻き棒を大きく振り上げてオコに襲い掛かった。
「伏せて!」
振り上げられた火掻き棒をリトアは拳銃で撃ち落とした。
「危ねー」
「うぇrちゅいお!」
「何語どすか?」
「この地方の言葉だと思うよ」
「ずらかるぞ!」
窓辺にあった招き猫を掴むとオコはそのまま飛び出した。リトアが銃弾で牽制するが、怯みはするが、止まりはしない。そこまで脅威に感じていないのだろう。何やら訳のわからない言葉を呟きながら三人を追いかけてきた。その眼は、正気ではなかった。明らかに何かに操られている濁った瞳が三人を捕らえて放さない。
「レイカちゃん、失礼します」
小脇にレイカを抱えてリトアは手近な木の枝の上までジャンプした。
「ほい、パス!」
「はい、取ったよ!」
オコが投げた黄金の招き猫像をリトアはキャッチすると変な違和感をもった。中に空間があるそんな感じだ。
「中に何かあるかな」
「え、本当どすか?」
「割ってみるか?」
いつの間にかレイカの隣に一匹のオコジョが座っていた。
「ひょっとしてオコはんどすか?」
「おう、そうだぜ」
「元に戻れないのですか?」
「服がねーんだよ」
誤解している人がなぜか多い秘密の一つがこれだ。獣人族やインセクターなど獣体や昆虫体に変身できる種族の服事情である。変身時に装備はその場に置いておいてしまう。その装備の中に衣類も含まれている。つまり・・・・・・
「今戻るとスッポンポンだぜ、俺」
レイカが返事に詰まったのは仕方がないことである。
「剣とか重要なものない?ないならこのまま町に行きたいんだけれど」
「この先に村があるぜ?」
「いや、できるだけ大きな町の警察に届けるべきだと思う」
リトアの手には虹色に光る拳大の石があった。中央に何かが映り込んでいる。
「それ何どすか?」
「魔宝石の一種だよ。本来は魔力を溜めておくものなんだけれど、これはそこに魂が入り込んでる。禁術の一つだね」
「それ知ってるぞ。前にリルクさんとリングさんと一緒に退治したことある」
「彼らうちの担任どす」
「へ~、そうなのか。元気してるか?」
「はい、双方ともに元気どすぇ」
意外な名前にレイカは驚きを隠せなかった。こっちのことを知っている風なのでてっきりロイズ辺りと知り合いなのだろうかと目星をつけていたのがいい意味で外れてしまった。
「二人とも急がないと今日中に獣都市に辿り着かないよ」
「その前にさ、村があるだろ。そこで一服しないか?」
装備を整えたいというオコの意見に賛同し、三人は地図に名前すらない村にて少し休憩を取ることにした。運良くその村には民宿があり、オコがどこからか調達してきた服を着て三人はお腹が空いたとご飯を食べることにした。
「ちょっと待て」
最初に口付けよとしたオコが食べようとした二人を制止する。
「これ、なんかやばい」
「何がどすか?」
「・・・・・・」
リトアはパンを千切ると近くの水槽の中に放り込んだ。魚がそれに群がり、食べた奴から腹を上に向けて浮かんだ。強力な睡眠薬がしみ込ませてあった。
「さすが、勘がいいね」
隠れながら三人は宿屋を後にした。
「まぁ、今のところそれしか取り柄ないからな」
照れながら笑うオコがある民家を見た時にピタリと足を止める。
「あれ、俺の剣だ」
「え、本当?」
「ああ、ちょっとわかりにくいが、魔法剣になってるんだ。間違いない」
「回収する?」
「いいのか?」
「まだばれていない感じだし、今のうちなら大丈夫じゃないかな」
辺りを確認してリトアが呟く。
「サンキュー、あれ結構いいやつなんだ」
窓ガラスを割ろうとしたオコの手にレイカはそっとガムテープを指し出した。窓ガラスを音を立てずに割ると、そこから手を差し入れて窓を開ける。完全に泥棒行為と一致している。オコが剣に触れた正にその時、
「おいうytれw?!」
「あ、今『そこで何をしている?!』と言いはりました」
「逃げるぞ!!」
続く
「あれが招き猫なのかな?」
「ああ、間違いない」
「間違いあらへんなぁ」
「なら、家の人に事情を説明して引き取らせてもらいましょう」
そう言って行こうとしたリトアを2人して茂みの陰に引き摺りこんで今に至る。
「盗賊達を操っていた人がまだいるかもしれへんのに」
「危ない人かもしれないだろ」
「彼らの頭はあの研究員でしょう。それに探しているということは持っている人は彼らの敵になるわけですし」
「表裏がそう簡単に決まったら苦労はしないっ!」
オコが声を抑えながらそう叫ぶ。
「では、念のため戦力確認しましょうか。私はアイテム使いやっています。変則武道も少しならできる・・・としていいのかな」
「いいだろ。俺は剣士だな。使っているのはこのライトソード。魔法はからっきし。あとオコジョの姿になれる」
「えっと魔法専門のカウンターファイターどす。まだ修行中の身やけど」
「大丈夫、みんな同じだ」
全員語幹に未が付く戦闘業だ。
「しかし、この時界での戦闘だとして魔法使える奴がいないのは辛いかな」
「魔法使いか・・・仲間に2人ほど当てはあるが・・・・・・」
メールの返事はすぐに帰って来た。どちらも任務中で手が一杯だそうだ。
「他の先輩に協力を求められへんのですか?」
「携帯まだ復活しないみたい。レイカちゃんのは?」
「うちのもまだダメどす」
もうすでに壊れているのかもしれない。ボタンをいくら押しても反応が返ってこない。蓋を開け閉めしていてもディスプレイが光ることもない。電池切れかもしれない。
「念のため・・・・・・」
何やら操作をしながらオコが首を傾げる。
「どうかしはりました?」
「いや、大丈夫だ」
携帯をしまうとオコは剣を抜いた。ゾロゾロ行くよりは誰か一人を行かせた方が警戒心が生まれない。クジはオコが嫌がったので(当たりを引き続ける可能性があるからだろう)話し合いになった。その結果、森を一人で歩いていてもおかしくない恰好をしているオコが行くことになった。家の裏側に隠れて中の様子を窺う。この辺に住んでいる樵なのだろう。おじさんが一人暖炉の掃除をしている。
「失礼するぞ」
オコは何の遠慮もなくズカズカと家の中に入っていった。
「おい、おじさん。あの置物貰っていいか?」
そして超直球でおじさんに詰め寄った。しかし、おじさんはフンと鼻を鳴らすと暖炉の清掃に戻っていった。
「貰ってくぞ」
オコが例の像に手をかけた、その時だった。おじさんが手にした火掻き棒を大きく振り上げてオコに襲い掛かった。
「伏せて!」
振り上げられた火掻き棒をリトアは拳銃で撃ち落とした。
「危ねー」
「うぇrちゅいお!」
「何語どすか?」
「この地方の言葉だと思うよ」
「ずらかるぞ!」
窓辺にあった招き猫を掴むとオコはそのまま飛び出した。リトアが銃弾で牽制するが、怯みはするが、止まりはしない。そこまで脅威に感じていないのだろう。何やら訳のわからない言葉を呟きながら三人を追いかけてきた。その眼は、正気ではなかった。明らかに何かに操られている濁った瞳が三人を捕らえて放さない。
「レイカちゃん、失礼します」
小脇にレイカを抱えてリトアは手近な木の枝の上までジャンプした。
「ほい、パス!」
「はい、取ったよ!」
オコが投げた黄金の招き猫像をリトアはキャッチすると変な違和感をもった。中に空間があるそんな感じだ。
「中に何かあるかな」
「え、本当どすか?」
「割ってみるか?」
いつの間にかレイカの隣に一匹のオコジョが座っていた。
「ひょっとしてオコはんどすか?」
「おう、そうだぜ」
「元に戻れないのですか?」
「服がねーんだよ」
誤解している人がなぜか多い秘密の一つがこれだ。獣人族やインセクターなど獣体や昆虫体に変身できる種族の服事情である。変身時に装備はその場に置いておいてしまう。その装備の中に衣類も含まれている。つまり・・・・・・
「今戻るとスッポンポンだぜ、俺」
レイカが返事に詰まったのは仕方がないことである。
「剣とか重要なものない?ないならこのまま町に行きたいんだけれど」
「この先に村があるぜ?」
「いや、できるだけ大きな町の警察に届けるべきだと思う」
リトアの手には虹色に光る拳大の石があった。中央に何かが映り込んでいる。
「それ何どすか?」
「魔宝石の一種だよ。本来は魔力を溜めておくものなんだけれど、これはそこに魂が入り込んでる。禁術の一つだね」
「それ知ってるぞ。前にリルクさんとリングさんと一緒に退治したことある」
「彼らうちの担任どす」
「へ~、そうなのか。元気してるか?」
「はい、双方ともに元気どすぇ」
意外な名前にレイカは驚きを隠せなかった。こっちのことを知っている風なのでてっきりロイズ辺りと知り合いなのだろうかと目星をつけていたのがいい意味で外れてしまった。
「二人とも急がないと今日中に獣都市に辿り着かないよ」
「その前にさ、村があるだろ。そこで一服しないか?」
装備を整えたいというオコの意見に賛同し、三人は地図に名前すらない村にて少し休憩を取ることにした。運良くその村には民宿があり、オコがどこからか調達してきた服を着て三人はお腹が空いたとご飯を食べることにした。
「ちょっと待て」
最初に口付けよとしたオコが食べようとした二人を制止する。
「これ、なんかやばい」
「何がどすか?」
「・・・・・・」
リトアはパンを千切ると近くの水槽の中に放り込んだ。魚がそれに群がり、食べた奴から腹を上に向けて浮かんだ。強力な睡眠薬がしみ込ませてあった。
「さすが、勘がいいね」
隠れながら三人は宿屋を後にした。
「まぁ、今のところそれしか取り柄ないからな」
照れながら笑うオコがある民家を見た時にピタリと足を止める。
「あれ、俺の剣だ」
「え、本当?」
「ああ、ちょっとわかりにくいが、魔法剣になってるんだ。間違いない」
「回収する?」
「いいのか?」
「まだばれていない感じだし、今のうちなら大丈夫じゃないかな」
辺りを確認してリトアが呟く。
「サンキュー、あれ結構いいやつなんだ」
窓ガラスを割ろうとしたオコの手にレイカはそっとガムテープを指し出した。窓ガラスを音を立てずに割ると、そこから手を差し入れて窓を開ける。完全に泥棒行為と一致している。オコが剣に触れた正にその時、
「おいうytれw?!」
「あ、今『そこで何をしている?!』と言いはりました」
「逃げるぞ!!」
続く
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