28 / 220
4-28、ウサギ、学園に戻る
エターナニル魔法学園特殊クラス
しおりを挟む
「すっかり変わっりはったなぁ」
「変わりすぎだろ」
イスカ達が暮らしている学園は彼らにとって溜息が出るほど違う物になってしまっているらしい。カノウは苦笑いしているが、ユーキはしきりに厳しい目で辺りを見回している。
「どうだ?何か感じるか?」
「何か、ですか?」
笑顔に促されてザリは目を閉じて周囲を洗ってみた。
別だって不信な気はない。
「特にありませんが?」
「・・・だとよ」
「そのようどすなぁ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ユーキとカノウは黙って笑い合った。何故かその間には火花が散っているように見えるイスカは首を傾げる。傍から見たら自分とレイカの方がまだ親しそうに見えるだろう。方や同棲しているカップルに方や自己の性別を偽っているルームメイトの友達同士。仲の良さなら明らかに前者が上である。なのになんだろう。この異様な緊張感は、
「そういえば、」
「「は、ハイなんでしょう!?」」
「二人ともそんな緊張せえへんでもええのに」
だったら、目から笑ってくださいと瞳で訴えるイスカとザリだったが、眩しいばかりの笑顔で拒否された。
「また、皆でピクニック行きたいなぁ」
「ああ、またセッティングするか」
あれ、何か違和感が・・・・・・?
「ザリどうかしたの?」
「あの二人、変な感じしませんか?」
「同居人同士にしては変な緊張感があるわよね。まるで狐の化かし合い」
「き・つ・ね・・・・・・あれがそうなのか?」
獣人族。満月の夜に獣化する一族の総称とされるが、別に満月ではなくても特定の獣の姿になれる。四年に一回来る赤い月を見ると凶暴化する。種族を見分けるポイントである耳は、獣人族の場合少しトガリ気味で上部に少しだが毛が生えている。色はなれる動物の毛と同色となる。
本に載っていたことを思い出しながらザリはチェックする。毛ある。色は・・・・・・小麦色、狐の夏毛の色だ。
「特徴はあっていると思うのよね」
「ピッタリだよ。少なくとも文献の種族選別では獣人族には間違いない。狐族かまではわからないけれど」
「つまり、書物情報だけだと彼は獣人族で間違いない、か」
「けど、なんだろう。変に引っ掛かる」
勘に頼るなど今までのザリにはありえないことだった。
「あいつ、何か怪しい」
イスカが睨んでいる。科目が底辺争いしている彼女の言葉に論理的解釈は付加されていない。完全に勘だ。普段はザリも勘など信用しない。根拠がないからだ。
ただ、最近ザリも自分の感性も満更ではない、と特殊クラスの連中と一緒に行動してからそう思えてならなくなってきた。
「俺もそう思う」
「あら、珍しいじゃない」
「俺だって変わるんだ」
じっくり視ても自分達の勘以外で他におかしいところが見当も付かない。
「ほな、そっちも上手くやりぃ」
「ああ、そっちこそ上手くやれよ」
双方貼り付けた笑顔のまま会話は終了したらしく、カノウはユーキに手を振ると狐に姿を変えて海へと駆けていく。そのまま、波に飲まれた。
駆け寄ろうとしたイスカとザリをユーキが止める。彼女の刺した波間から黒い塊が飛び出すと大きな鷹になって雲の中に消えていった。
「・・・カノウ先輩って」
「・・・いったい」
「あの馬鹿じゃあらへんよ」
「じゃあ、彼は?」
「学生時代に仲良うなった人の一人。うちに近い方の」
「つまり、性悪の方ね」
慌ててイスカの口を押さえるが、ユーキにはばっちり聞こえていたようだ。ニッコリと微笑まれた。
「そうどす。あの様子やとまた相方に何かあらはったんやなぁ」
「何でそう思うの?」
「うちに似てはるからなぁ。考えある程度ならわかります」
「もしかして、その相方ってのは」
「従妹に似てはるもの」
「「男嫌い」」
「本当かは本人に訊いてみなはれ」
この様子では従妹の男性恐怖症はまだ克服できていないらしい。
続く
「変わりすぎだろ」
イスカ達が暮らしている学園は彼らにとって溜息が出るほど違う物になってしまっているらしい。カノウは苦笑いしているが、ユーキはしきりに厳しい目で辺りを見回している。
「どうだ?何か感じるか?」
「何か、ですか?」
笑顔に促されてザリは目を閉じて周囲を洗ってみた。
別だって不信な気はない。
「特にありませんが?」
「・・・だとよ」
「そのようどすなぁ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ユーキとカノウは黙って笑い合った。何故かその間には火花が散っているように見えるイスカは首を傾げる。傍から見たら自分とレイカの方がまだ親しそうに見えるだろう。方や同棲しているカップルに方や自己の性別を偽っているルームメイトの友達同士。仲の良さなら明らかに前者が上である。なのになんだろう。この異様な緊張感は、
「そういえば、」
「「は、ハイなんでしょう!?」」
「二人ともそんな緊張せえへんでもええのに」
だったら、目から笑ってくださいと瞳で訴えるイスカとザリだったが、眩しいばかりの笑顔で拒否された。
「また、皆でピクニック行きたいなぁ」
「ああ、またセッティングするか」
あれ、何か違和感が・・・・・・?
「ザリどうかしたの?」
「あの二人、変な感じしませんか?」
「同居人同士にしては変な緊張感があるわよね。まるで狐の化かし合い」
「き・つ・ね・・・・・・あれがそうなのか?」
獣人族。満月の夜に獣化する一族の総称とされるが、別に満月ではなくても特定の獣の姿になれる。四年に一回来る赤い月を見ると凶暴化する。種族を見分けるポイントである耳は、獣人族の場合少しトガリ気味で上部に少しだが毛が生えている。色はなれる動物の毛と同色となる。
本に載っていたことを思い出しながらザリはチェックする。毛ある。色は・・・・・・小麦色、狐の夏毛の色だ。
「特徴はあっていると思うのよね」
「ピッタリだよ。少なくとも文献の種族選別では獣人族には間違いない。狐族かまではわからないけれど」
「つまり、書物情報だけだと彼は獣人族で間違いない、か」
「けど、なんだろう。変に引っ掛かる」
勘に頼るなど今までのザリにはありえないことだった。
「あいつ、何か怪しい」
イスカが睨んでいる。科目が底辺争いしている彼女の言葉に論理的解釈は付加されていない。完全に勘だ。普段はザリも勘など信用しない。根拠がないからだ。
ただ、最近ザリも自分の感性も満更ではない、と特殊クラスの連中と一緒に行動してからそう思えてならなくなってきた。
「俺もそう思う」
「あら、珍しいじゃない」
「俺だって変わるんだ」
じっくり視ても自分達の勘以外で他におかしいところが見当も付かない。
「ほな、そっちも上手くやりぃ」
「ああ、そっちこそ上手くやれよ」
双方貼り付けた笑顔のまま会話は終了したらしく、カノウはユーキに手を振ると狐に姿を変えて海へと駆けていく。そのまま、波に飲まれた。
駆け寄ろうとしたイスカとザリをユーキが止める。彼女の刺した波間から黒い塊が飛び出すと大きな鷹になって雲の中に消えていった。
「・・・カノウ先輩って」
「・・・いったい」
「あの馬鹿じゃあらへんよ」
「じゃあ、彼は?」
「学生時代に仲良うなった人の一人。うちに近い方の」
「つまり、性悪の方ね」
慌ててイスカの口を押さえるが、ユーキにはばっちり聞こえていたようだ。ニッコリと微笑まれた。
「そうどす。あの様子やとまた相方に何かあらはったんやなぁ」
「何でそう思うの?」
「うちに似てはるからなぁ。考えある程度ならわかります」
「もしかして、その相方ってのは」
「従妹に似てはるもの」
「「男嫌い」」
「本当かは本人に訊いてみなはれ」
この様子では従妹の男性恐怖症はまだ克服できていないらしい。
続く
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
あれ?なんでこうなった?
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、正妃教育をしていたルミアナは、婚約者であった王子の堂々とした浮気の現場を見て、ここが前世でやった乙女ゲームの中であり、そして自分は悪役令嬢という立場にあることを思い出した。
…‥って、最終的に国外追放になるのはまぁいいとして、あの超屑王子が国王になったら、この国終わるよね?ならば、絶対に国外追放されないと!!
そう意気込み、彼女は国外追放後も生きていけるように色々とやって、ついに婚約破棄を迎える・・・・はずだった。
‥‥‥あれ?なんでこうなった?
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
お姉さまは酷いずるいと言い続け、王子様に引き取られた自称・妹なんて知らない
あとさん♪
ファンタジー
わたくしが卒業する年に妹(自称)が学園に編入して来ました。
久しぶりの再会、と思いきや、行き成りわたくしに暴言をぶつけ、泣きながら走り去るという暴挙。
いつの間にかわたくしの名誉は地に落ちていたわ。
ずるいずるい、謝罪を要求する、姉妹格差がどーたらこーたら。
わたくし一人が我慢すればいいかと、思っていたら、今度は自称・婚約者が現れて婚約破棄宣言?
もううんざり! 早く本当の立ち位置を理解させないと、あの子に騙される被害者は増える一方!
そんな時、王子殿下が彼女を引き取りたいと言いだして────
※この話は小説家になろうにも同時掲載しています。
※設定は相変わらずゆるんゆるん。
※シャティエル王国シリーズ4作目!
※過去の拙作
『相互理解は難しい(略)』の29年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の27年後、
『王女殿下のモラトリアム』の17年後の話になります。
上記と主人公が違います。未読でも話は分かるとは思いますが、知っているとなお面白いかと。
※『俺の心を掴んだ姫は笑わない~見ていいのは俺だけだから!~』シリーズ5作目、オリヴァーくんが主役です! こちらもよろしくお願いします<(_ _)>
※ちょくちょく修正します。誤字撲滅!
※全9話
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる