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4-26、ウサギ、茶を頂く
エターナニル魔法学園特殊クラス
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からかえると言ったが、彼女の言葉から考えると、自分達の実力を測っていたのは明確だ。自分は合格したのだろうか。未だに不利な立場にいるので、身内からも手を伸ばしていきたいザリだった。
「こっちは似てるわよね、目の柄以外」
だから、普通に会話しているイスカが羨ましかった。
「ふふ、うちは陰陽の紋が入っとるからなぁ」
「レイカは綺麗な灰色だもんね」
「不思議どすなぁ」
「従姉妹ってことは当然双子ってわけじゃないよね?」
「もちろんやわ。両親は双子やったけど」
「成程、兄妹と姉弟が結婚したのね」
「何故捻りはったん?」
「普通兄弟と姉妹がと考えるぞ」
「あ、挨拶がまだでしたなぁ。はじめまして、ウサギ族と蛍族の少年達。ご存知と思わはるけど、改めまして、うちがレイカの従姉の黒鐘 幽稀といいます。そちらの表記やとユーキ・クロガネにならはるやろか」
先程までの羅刹はどこへやら、ニッコリと微笑んでユーキ丁寧にお辞儀した。
「ほな、あんさんらの身元もわからはったから、茶でもいかがどす?」
通された和室は独特の雰囲気を持った空間だった。けして華やかではないが、存在感があり、命の温かさに囲まれた落ち着きのある一室である。
「さぁ、まずは一息つきましょ」
スッと出された湯呑みには見覚えのある薄緑色の液体が入っていた。先に飲んだザリが眉を顰めた。飲みなれていない人にとって日本茶は苦いだけで、お世辞にも美味しいといえないだろう。
「この苦味を美味しいと思えないとはまだまだお子様・・・・・・・苦ッ」
予想外の不味さにイスカは噴出しそうになった。咄嗟に口を押さえたので何とか防げたが、そのせいで味覚が麻痺しそうなほど強烈なお茶が味覚を支配する。何とか飲み込めたが、あまりの味に体中が痺れて動かない。
「あ・・・れ・・・・・・?」
おかしいな?本当に動かない。
「はぁー、今の学生はだらしないなぁ。ちょっちい殺気隠しただけで油断しはる」
この人、本当に毒盛りやがった?!×2
「な、なんで・・・・」
「あの子、どこやらはったん?」
笑顔が怖いとはこのことだ。目だけ笑っていない。視線で殺されそうだ。
「・・・・もしかして、レイカ・・・のこと・・・・・・」
「もしかせえへんでも、うちの大切な従妹、本来ここに一緒におらなおかしい人物やわ」
それだけで、お茶に痺れ薬を入れるだろうか。ユーキの普通ではあるらしい。こういう時は身近な人に説得してもらうに限る。必死で視線を動かしてザリはある人を探した。
「カノウ先輩、止め・・・・・・られなかっんですね」
何とか首を伸ばして見たザリの視線の先の廊下には力なく床に落ちている尻尾×6があった。小刻みに痙攣している。自分より痺れ具合が酷いような気がする。
そして、ユーキもレイカと似たような能力を持っているようだ。発動条件が何かはわからないが、身体を成長する術があるらしい。大人になった彼女は凄味が増した。日本美人な分、目だけ笑っていない笑みの向こうに漆黒の般若が見える。
「なんで来てへんのやろうなぁ。来れんようなことでも起こったんやろか」
「そ、そうなんで」
「バカ!」
「そうなんどすな。この前貰った手紙には優しゅうて優秀な方ばかりやと書いてはりましたけど・・・・・・もう少し見る目鍛えさせへんといかんやろなぁ」
言葉はちょっときつくなった程度だが、雰囲気は一転した。背景が真っ暗だ。純日本の部屋はユーキが発する怒気に呑まれ、墨に染まってしまった。
和が彼女の怒りに負けた。
レイカの上手に人を褒める才能は従妹への手紙でも遺憾なく発揮されたようだ。
「ええ時期やと思うたけど、定め間違えるなどうちらしゅうない失敗やわ」
「自分をそこまで責めなくても・・・・・・」
「イスカ、違う」
あれは自分を落としているわけではない。自分を落としているようで、しっかりと自分達はレイカの同級生として友達として相応しくないと否定されているのだ。
ついこの間までいじめていたが、その何故に気がついたばかりのザリにとってこの状況は好ましくなかった。誰だってそうかもしれないが、ザリの場合いじめていた後ろめたさもあり、レイカの従姉の怖さも相まっていつもより声を抑えてしまう。
「名目上うちはあの子の保護者ってことにならはるけど、何か言いたいことあります?」
「「「ごめんなさい」」」
「彼女の優しさがわからなくて怖くて拒絶していた」
「時々こっそり覗いていました」
「油揚げ食った」
上げられない視界が畳の模様で埋まったままザリとイスカは自分にかかる負荷が少し軽くなった気がした。それに、声が一つ多かった。
恐る恐る顔をあげて見ると、そこには夜叉とかした大人の女性と痺れた体に蛇をくっつけながら逃げ惑う6尾の狐がいた。
「多かった、声」
「彼のだったみたいね」
仲間割れにしては一方的に狐がやられている。レイカの笑顔は太陽のようだが、ユーキの笑顔は月のようだ。あってもなくても恐ろしい。
続く
「こっちは似てるわよね、目の柄以外」
だから、普通に会話しているイスカが羨ましかった。
「ふふ、うちは陰陽の紋が入っとるからなぁ」
「レイカは綺麗な灰色だもんね」
「不思議どすなぁ」
「従姉妹ってことは当然双子ってわけじゃないよね?」
「もちろんやわ。両親は双子やったけど」
「成程、兄妹と姉弟が結婚したのね」
「何故捻りはったん?」
「普通兄弟と姉妹がと考えるぞ」
「あ、挨拶がまだでしたなぁ。はじめまして、ウサギ族と蛍族の少年達。ご存知と思わはるけど、改めまして、うちがレイカの従姉の黒鐘 幽稀といいます。そちらの表記やとユーキ・クロガネにならはるやろか」
先程までの羅刹はどこへやら、ニッコリと微笑んでユーキ丁寧にお辞儀した。
「ほな、あんさんらの身元もわからはったから、茶でもいかがどす?」
通された和室は独特の雰囲気を持った空間だった。けして華やかではないが、存在感があり、命の温かさに囲まれた落ち着きのある一室である。
「さぁ、まずは一息つきましょ」
スッと出された湯呑みには見覚えのある薄緑色の液体が入っていた。先に飲んだザリが眉を顰めた。飲みなれていない人にとって日本茶は苦いだけで、お世辞にも美味しいといえないだろう。
「この苦味を美味しいと思えないとはまだまだお子様・・・・・・・苦ッ」
予想外の不味さにイスカは噴出しそうになった。咄嗟に口を押さえたので何とか防げたが、そのせいで味覚が麻痺しそうなほど強烈なお茶が味覚を支配する。何とか飲み込めたが、あまりの味に体中が痺れて動かない。
「あ・・・れ・・・・・・?」
おかしいな?本当に動かない。
「はぁー、今の学生はだらしないなぁ。ちょっちい殺気隠しただけで油断しはる」
この人、本当に毒盛りやがった?!×2
「な、なんで・・・・」
「あの子、どこやらはったん?」
笑顔が怖いとはこのことだ。目だけ笑っていない。視線で殺されそうだ。
「・・・・もしかして、レイカ・・・のこと・・・・・・」
「もしかせえへんでも、うちの大切な従妹、本来ここに一緒におらなおかしい人物やわ」
それだけで、お茶に痺れ薬を入れるだろうか。ユーキの普通ではあるらしい。こういう時は身近な人に説得してもらうに限る。必死で視線を動かしてザリはある人を探した。
「カノウ先輩、止め・・・・・・られなかっんですね」
何とか首を伸ばして見たザリの視線の先の廊下には力なく床に落ちている尻尾×6があった。小刻みに痙攣している。自分より痺れ具合が酷いような気がする。
そして、ユーキもレイカと似たような能力を持っているようだ。発動条件が何かはわからないが、身体を成長する術があるらしい。大人になった彼女は凄味が増した。日本美人な分、目だけ笑っていない笑みの向こうに漆黒の般若が見える。
「なんで来てへんのやろうなぁ。来れんようなことでも起こったんやろか」
「そ、そうなんで」
「バカ!」
「そうなんどすな。この前貰った手紙には優しゅうて優秀な方ばかりやと書いてはりましたけど・・・・・・もう少し見る目鍛えさせへんといかんやろなぁ」
言葉はちょっときつくなった程度だが、雰囲気は一転した。背景が真っ暗だ。純日本の部屋はユーキが発する怒気に呑まれ、墨に染まってしまった。
和が彼女の怒りに負けた。
レイカの上手に人を褒める才能は従妹への手紙でも遺憾なく発揮されたようだ。
「ええ時期やと思うたけど、定め間違えるなどうちらしゅうない失敗やわ」
「自分をそこまで責めなくても・・・・・・」
「イスカ、違う」
あれは自分を落としているわけではない。自分を落としているようで、しっかりと自分達はレイカの同級生として友達として相応しくないと否定されているのだ。
ついこの間までいじめていたが、その何故に気がついたばかりのザリにとってこの状況は好ましくなかった。誰だってそうかもしれないが、ザリの場合いじめていた後ろめたさもあり、レイカの従姉の怖さも相まっていつもより声を抑えてしまう。
「名目上うちはあの子の保護者ってことにならはるけど、何か言いたいことあります?」
「「「ごめんなさい」」」
「彼女の優しさがわからなくて怖くて拒絶していた」
「時々こっそり覗いていました」
「油揚げ食った」
上げられない視界が畳の模様で埋まったままザリとイスカは自分にかかる負荷が少し軽くなった気がした。それに、声が一つ多かった。
恐る恐る顔をあげて見ると、そこには夜叉とかした大人の女性と痺れた体に蛇をくっつけながら逃げ惑う6尾の狐がいた。
「多かった、声」
「彼のだったみたいね」
仲間割れにしては一方的に狐がやられている。レイカの笑顔は太陽のようだが、ユーキの笑顔は月のようだ。あってもなくても恐ろしい。
続く
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