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1、始まりの逃避とウサギの国での活劇
ロボット、正体を明かす
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崩壊した街を走り回りながらキョロキョロと辺りを見渡す。だが、イスカの目的人物はどこにも見当たらない。
そういえば、あの魔族が姿を現さなかったな、と地面に串刺し状態の祖父の兄を見て考える。魔族の目的が王国支配による恐怖や混乱でないとすると彼の手足となって働いていた理由はいったいなんだろう。プライドが高い魔族が他人の手足となるのは、その人に負けて手下となる契約をさせられたか、その者に尽くすことで何か価値があると判断したか。剣がなくなったからといって素手で孫に負けるような奴が上位魔族に勝ったとは到底思えない。
なら、後者が理由となるのだが、
「ドワーフじゃないから鉱脈って訳でもないよね」
協定結んでいるから鉱脈は彼らが自由に使っている。
「この国に伝わる伝説があるだろう。悪魔および神が出てくるやつな。奴の目的はそれさ」
角から魔犬を引き連れたロイズが現れた。
「あら、随分男前になったのね。魔族と間違えて殴りかかりそうだったわ。ってか、どう見ても美形悪人面よね。2頭身ロボットが実は鬼畜の王様とか。こんな奴の友達扱いされて黙ってるロンの趣味を疑うわ。意外と面食いとか?」
「それならいいんだが、生憎あいつにそんな偏屈な感情はねーよ。俺はまだ一緒にいても特に気にならない程度の存在なのだろうな。昔はもう少し素直だったんだがな。まぁ、損得勘定が感情に存在しないとこは変わってないが」
「おや、幼馴染とかだったのかなぁ。気の毒~」
ため息を吐くとロイズは魔犬に周囲警戒を命じて散らした。
「話を戻すぞ。あの魔族の狙いは十中八九この地に封印された自分の上司を復活させることだろう」
この国にそんな偉大な功績があったのか。イスカも初耳だった。
「魔王直属の4大貴族の1人で気性が激しいため爆炎の牙と呼ばれていた奴だ。同じ炎を司る龍神と勝負した時、周囲に及ぼす影響はそれは凄まじかったそうだ。結局、勝負がつく前に封じられたらしい」
「めでたしめでたしってことにはならなかったの?」
「封じられたのがそいつだけでな。その部下は今でもセヴァーニブルにいるってわけだ。しかも、困ったことに魔族ってのは1人の人物を気に入るとそいつを妄信したり激愛したり崇拝したりする癖があるからな。ついでに言うと目的のためには手段を選ばないのも特徴の1つだ」
だからこそ、多くの戦争が生まれた。
「彼らは自分の感情に正直なだけなのだが。兎も角、あのオブジェもその欲望を利用されただけだろう。魔族はセヴァーニブルに住む精神体に近い存在だから、こっちに寄り代がないと行動するのも儘ならないからな。それを除いても主は封印の際に物質体を奪われているから、その寄り代は絶対必須。つまり、レイカは指輪というネギを背負った鴨だったってわけだ」
「へ~、詳しいのね、魔族のこと」
「この体見てもわからなかったのか。俺も魔族だぜ」
くすんだ灰色の肌。鋼人にも見えなくない。そうイスカが考えた時、ロイズは目から薄いガラス状の何かを取った。
「これは有機だが、無機の寄り代で十分活動できるほど高等の、な」
そこには白目が黒く、瞳が赤く、瞳孔内が白い瞳が2つ。金色の瞳はカラーコンタクトで作られた偽物だった。セヴァーニブルの人型をとれる以上の実力のある者のみに稀に現れる魔族特有の邪眼。
授業でも触れられたこともあったが、文章のみで映像の記録がなかったのでイスカも半信半疑だったのだが。
「・・・本物よね、それ」
「ああ、正真正銘血統書付きの本物だぜ。こればかりは隠しようがなくてな。ちなみに、ここに封じられてる奴とも知り合いだ。そいつの部下までは興味がなかったからあいつのことは知らなかったがな」
続く
そういえば、あの魔族が姿を現さなかったな、と地面に串刺し状態の祖父の兄を見て考える。魔族の目的が王国支配による恐怖や混乱でないとすると彼の手足となって働いていた理由はいったいなんだろう。プライドが高い魔族が他人の手足となるのは、その人に負けて手下となる契約をさせられたか、その者に尽くすことで何か価値があると判断したか。剣がなくなったからといって素手で孫に負けるような奴が上位魔族に勝ったとは到底思えない。
なら、後者が理由となるのだが、
「ドワーフじゃないから鉱脈って訳でもないよね」
協定結んでいるから鉱脈は彼らが自由に使っている。
「この国に伝わる伝説があるだろう。悪魔および神が出てくるやつな。奴の目的はそれさ」
角から魔犬を引き連れたロイズが現れた。
「あら、随分男前になったのね。魔族と間違えて殴りかかりそうだったわ。ってか、どう見ても美形悪人面よね。2頭身ロボットが実は鬼畜の王様とか。こんな奴の友達扱いされて黙ってるロンの趣味を疑うわ。意外と面食いとか?」
「それならいいんだが、生憎あいつにそんな偏屈な感情はねーよ。俺はまだ一緒にいても特に気にならない程度の存在なのだろうな。昔はもう少し素直だったんだがな。まぁ、損得勘定が感情に存在しないとこは変わってないが」
「おや、幼馴染とかだったのかなぁ。気の毒~」
ため息を吐くとロイズは魔犬に周囲警戒を命じて散らした。
「話を戻すぞ。あの魔族の狙いは十中八九この地に封印された自分の上司を復活させることだろう」
この国にそんな偉大な功績があったのか。イスカも初耳だった。
「魔王直属の4大貴族の1人で気性が激しいため爆炎の牙と呼ばれていた奴だ。同じ炎を司る龍神と勝負した時、周囲に及ぼす影響はそれは凄まじかったそうだ。結局、勝負がつく前に封じられたらしい」
「めでたしめでたしってことにはならなかったの?」
「封じられたのがそいつだけでな。その部下は今でもセヴァーニブルにいるってわけだ。しかも、困ったことに魔族ってのは1人の人物を気に入るとそいつを妄信したり激愛したり崇拝したりする癖があるからな。ついでに言うと目的のためには手段を選ばないのも特徴の1つだ」
だからこそ、多くの戦争が生まれた。
「彼らは自分の感情に正直なだけなのだが。兎も角、あのオブジェもその欲望を利用されただけだろう。魔族はセヴァーニブルに住む精神体に近い存在だから、こっちに寄り代がないと行動するのも儘ならないからな。それを除いても主は封印の際に物質体を奪われているから、その寄り代は絶対必須。つまり、レイカは指輪というネギを背負った鴨だったってわけだ」
「へ~、詳しいのね、魔族のこと」
「この体見てもわからなかったのか。俺も魔族だぜ」
くすんだ灰色の肌。鋼人にも見えなくない。そうイスカが考えた時、ロイズは目から薄いガラス状の何かを取った。
「これは有機だが、無機の寄り代で十分活動できるほど高等の、な」
そこには白目が黒く、瞳が赤く、瞳孔内が白い瞳が2つ。金色の瞳はカラーコンタクトで作られた偽物だった。セヴァーニブルの人型をとれる以上の実力のある者のみに稀に現れる魔族特有の邪眼。
授業でも触れられたこともあったが、文章のみで映像の記録がなかったのでイスカも半信半疑だったのだが。
「・・・本物よね、それ」
「ああ、正真正銘血統書付きの本物だぜ。こればかりは隠しようがなくてな。ちなみに、ここに封じられてる奴とも知り合いだ。そいつの部下までは興味がなかったからあいつのことは知らなかったがな」
続く
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