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2、魔獣飼育と新しい命
ウサギ、ヤケ笑い
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燃え盛る炎。赤に包まれる森。倒れる木々。逃げ惑う動物。
「あははは、全てを焼き払え」
そんな中、両手を広げて高笑いをする少女が1人。誰かがいたら何をしていると突っ込んでくれるだろうが、生憎とこの場にはイスカしかいなかった。狼ですら避難した大火事の中、満面の笑みを浮かべて、いや、ヤケクソで笑っている。
「はぁ、どうしょうこれ」
「・・・何が?」
「うわッ、いつの間に」
「・・・・・・」
燃え残っている枝の上にロンがいた。両手にはビニール袋いっぱいの買い物がある。
「そうだ。ロンって火事消せる術とかない?」
「・・・・・・」
「そんな都合のいいことってないか」
「・・・ある」
「そうそう、ってあるの」
ロンが向かったのはかなり大きなため池だった。その周りも火事が進んでおり、逃げてきた動物の姿もあった。
「で、どうするの?」
ロンが指差した先の水が膨らみ、持ち上がっていく。ため池の水全てが宙に浮くと、それを指先で弾き飛ばした。森から火が、いや樹が吹き飛んでいく。
「・・・ふう」
「あんたに任せてもある意味大惨事よね」
山火事にならなかったが、代わりに山半分が消し飛んでいる。
「な、何事どす!?」
レイカのいた小屋はギリギリ範囲から外れていたようだ。むき出しになった小屋からレイカとヘルハウンドが飛び出してきた。
「あ、レイカ。ちょっと山火事が発生していてね」
「どちらかというと土石流のような被害やけど」
「・・・消した」
「うん、きれいさっぱり消えてはるなぁ」
「・・・ミルク」
「あ、そうやった」
レイカが抱えていた赤ちゃんがぐずりだす。2人のお腹が鳴る。そこにヘルハウンドが肉を持ってきて地べたに置いた。
「この犬、妙に人に慣れているわね」
「せやろ。うちも助かって」
「・・・・・・」
肉をさっそく焼いて食べだしたイスカ。置いてある肉が果たして新鮮なのか悩むレイカ。作ったミルクを赤ちゃんにあげるロン。三者三様で小屋の中で過ごし始めた。
続く
「あははは、全てを焼き払え」
そんな中、両手を広げて高笑いをする少女が1人。誰かがいたら何をしていると突っ込んでくれるだろうが、生憎とこの場にはイスカしかいなかった。狼ですら避難した大火事の中、満面の笑みを浮かべて、いや、ヤケクソで笑っている。
「はぁ、どうしょうこれ」
「・・・何が?」
「うわッ、いつの間に」
「・・・・・・」
燃え残っている枝の上にロンがいた。両手にはビニール袋いっぱいの買い物がある。
「そうだ。ロンって火事消せる術とかない?」
「・・・・・・」
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「・・・ある」
「そうそう、ってあるの」
ロンが向かったのはかなり大きなため池だった。その周りも火事が進んでおり、逃げてきた動物の姿もあった。
「で、どうするの?」
ロンが指差した先の水が膨らみ、持ち上がっていく。ため池の水全てが宙に浮くと、それを指先で弾き飛ばした。森から火が、いや樹が吹き飛んでいく。
「・・・ふう」
「あんたに任せてもある意味大惨事よね」
山火事にならなかったが、代わりに山半分が消し飛んでいる。
「な、何事どす!?」
レイカのいた小屋はギリギリ範囲から外れていたようだ。むき出しになった小屋からレイカとヘルハウンドが飛び出してきた。
「あ、レイカ。ちょっと山火事が発生していてね」
「どちらかというと土石流のような被害やけど」
「・・・消した」
「うん、きれいさっぱり消えてはるなぁ」
「・・・ミルク」
「あ、そうやった」
レイカが抱えていた赤ちゃんがぐずりだす。2人のお腹が鳴る。そこにヘルハウンドが肉を持ってきて地べたに置いた。
「この犬、妙に人に慣れているわね」
「せやろ。うちも助かって」
「・・・・・・」
肉をさっそく焼いて食べだしたイスカ。置いてある肉が果たして新鮮なのか悩むレイカ。作ったミルクを赤ちゃんにあげるロン。三者三様で小屋の中で過ごし始めた。
続く
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