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2、魔獣飼育と新しい命

ロボット、心配する

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 保健室には珍しく保健医がいた。本来いるのが当たり前なのだが、ここの保健医はしょっちゅう無断外出しているため、簡単な怪我の治療は在中の保健委員か付き添った先輩が行なうことが多い。棚には優秀な魔法薬が山ほど置いてあるから掠り傷や軽度の火傷などはそれだけで治せる。それで治せないほどの怪我の場合、彼女は必ずここに所在しているので、彼女がいることは運ばれてきた負傷者が重傷だということだと生徒内でも実しやかに囁かれている1種の学園伝説みたいになっている。
いない方が喜ばれる女医など稀有な存在だろう。
「はぁ~、なんでいる時に限って来るかな」
それはあんたが重体を呼び寄せるからだと突っ込みたかったが、レイカの手当てをしてもらっている手前、イスカは言葉を発するのを何とか堪えた。
「しばらく痛むかもしれないけど、冷やしてれば問題ないわ。同じところを打たないように注意しててね。今度は倍以上痛いから」
「ありがとうございます」
「で、あなたは何ニヤニヤしてるの?」
「べっつに~。何でもないよ。速く治りそうでよかったって思っただけ」
標準語敬語で話すレイカを見ながらちょっと優越感に浸るイスカだった。
「この娘は特に問題ないわ。難題なのはこっちの生徒ね」
ベッドに横たわるロンの額に手を当てて熱を測ると手首をとって脈拍を量り始める。細い手首に指を当てたまま保健医は呟くように言った。
「何度確認しても信じられないわ。ここは学生職員共々十分な生活環境が整っている。カリキュラムだってどちらにとっても無理のない程度に抑えているはずよ」
「ソレデろんハドウナンダ?」
倒れてからここに運ばれてベッドに寝かされて、その間あのロンが無反応である。通常時ならどんなに疲れていても運ばれている途中でロンは必ず一度は目を覚ました。
しかし、今は手を当てられても起きる気配がない。同室だからかそのことを熟知しているのだろう。大人しく様子を見守っているロイズの表情にも焦りが見られる。
もっとも、顔は鉄板製なので彼の表情を読むのは結構熟練技だ。
「そういえばあなた達は彼が学園生活で珍しく作った友達だったわね」
「まあね」
正しくは、入学試験時にイスカが強引に行動を一緒している内に打ち解けてくれたと表現すべきだろうけど、とレイカは苦笑した。彼の強引さを少し分けてほしいとレイカが思うのも仕方がないことかもしれない。
「本来なら先生に報告することなのだけど、同じクラスだし、注意しておいてほしいから特別あなた達にも話しておきましょうか」
脈を取っていた手首から手を外すと保健医の口が信じられない単語を紡いだ。
「彼の症状は精神からもくる過労と栄養失調による身体疲労よ」


                                続く
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