97 / 118
2、魔獣飼育と新しい命
ロボット、心配する
しおりを挟む
保健室には珍しく保健医がいた。本来いるのが当たり前なのだが、ここの保健医はしょっちゅう無断外出しているため、簡単な怪我の治療は在中の保健委員か付き添った先輩が行なうことが多い。棚には優秀な魔法薬が山ほど置いてあるから掠り傷や軽度の火傷などはそれだけで治せる。それで治せないほどの怪我の場合、彼女は必ずここに所在しているので、彼女がいることは運ばれてきた負傷者が重傷だということだと生徒内でも実しやかに囁かれている1種の学園伝説みたいになっている。
いない方が喜ばれる女医など稀有な存在だろう。
「はぁ~、なんでいる時に限って来るかな」
それはあんたが重体を呼び寄せるからだと突っ込みたかったが、レイカの手当てをしてもらっている手前、イスカは言葉を発するのを何とか堪えた。
「しばらく痛むかもしれないけど、冷やしてれば問題ないわ。同じところを打たないように注意しててね。今度は倍以上痛いから」
「ありがとうございます」
「で、あなたは何ニヤニヤしてるの?」
「べっつに~。何でもないよ。速く治りそうでよかったって思っただけ」
標準語敬語で話すレイカを見ながらちょっと優越感に浸るイスカだった。
「この娘は特に問題ないわ。難題なのはこっちの生徒ね」
ベッドに横たわるロンの額に手を当てて熱を測ると手首をとって脈拍を量り始める。細い手首に指を当てたまま保健医は呟くように言った。
「何度確認しても信じられないわ。ここは学生職員共々十分な生活環境が整っている。カリキュラムだってどちらにとっても無理のない程度に抑えているはずよ」
「ソレデろんハドウナンダ?」
倒れてからここに運ばれてベッドに寝かされて、その間あのロンが無反応である。通常時ならどんなに疲れていても運ばれている途中でロンは必ず一度は目を覚ました。
しかし、今は手を当てられても起きる気配がない。同室だからかそのことを熟知しているのだろう。大人しく様子を見守っているロイズの表情にも焦りが見られる。
もっとも、顔は鉄板製なので彼の表情を読むのは結構熟練技だ。
「そういえばあなた達は彼が学園生活で珍しく作った友達だったわね」
「まあね」
正しくは、入学試験時にイスカが強引に行動を一緒している内に打ち解けてくれたと表現すべきだろうけど、とレイカは苦笑した。彼の強引さを少し分けてほしいとレイカが思うのも仕方がないことかもしれない。
「本来なら先生に報告することなのだけど、同じクラスだし、注意しておいてほしいから特別あなた達にも話しておきましょうか」
脈を取っていた手首から手を外すと保健医の口が信じられない単語を紡いだ。
「彼の症状は精神からもくる過労と栄養失調による身体疲労よ」
続く
いない方が喜ばれる女医など稀有な存在だろう。
「はぁ~、なんでいる時に限って来るかな」
それはあんたが重体を呼び寄せるからだと突っ込みたかったが、レイカの手当てをしてもらっている手前、イスカは言葉を発するのを何とか堪えた。
「しばらく痛むかもしれないけど、冷やしてれば問題ないわ。同じところを打たないように注意しててね。今度は倍以上痛いから」
「ありがとうございます」
「で、あなたは何ニヤニヤしてるの?」
「べっつに~。何でもないよ。速く治りそうでよかったって思っただけ」
標準語敬語で話すレイカを見ながらちょっと優越感に浸るイスカだった。
「この娘は特に問題ないわ。難題なのはこっちの生徒ね」
ベッドに横たわるロンの額に手を当てて熱を測ると手首をとって脈拍を量り始める。細い手首に指を当てたまま保健医は呟くように言った。
「何度確認しても信じられないわ。ここは学生職員共々十分な生活環境が整っている。カリキュラムだってどちらにとっても無理のない程度に抑えているはずよ」
「ソレデろんハドウナンダ?」
倒れてからここに運ばれてベッドに寝かされて、その間あのロンが無反応である。通常時ならどんなに疲れていても運ばれている途中でロンは必ず一度は目を覚ました。
しかし、今は手を当てられても起きる気配がない。同室だからかそのことを熟知しているのだろう。大人しく様子を見守っているロイズの表情にも焦りが見られる。
もっとも、顔は鉄板製なので彼の表情を読むのは結構熟練技だ。
「そういえばあなた達は彼が学園生活で珍しく作った友達だったわね」
「まあね」
正しくは、入学試験時にイスカが強引に行動を一緒している内に打ち解けてくれたと表現すべきだろうけど、とレイカは苦笑した。彼の強引さを少し分けてほしいとレイカが思うのも仕方がないことかもしれない。
「本来なら先生に報告することなのだけど、同じクラスだし、注意しておいてほしいから特別あなた達にも話しておきましょうか」
脈を取っていた手首から手を外すと保健医の口が信じられない単語を紡いだ。
「彼の症状は精神からもくる過労と栄養失調による身体疲労よ」
続く
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
イクメンパパの異世界冒険譚〜異世界で育児は無理がある
或真
ファンタジー
二十九歳、所謂アラサーのユウマはイクメンである。
料理?余裕。洗濯?ちょろすぎ。おむつ替え?簡単じゃん。
異世界転移?魔王退治?いや、ちょっとハードルが高いんだが。
どうしてか、我が子と一緒に勇者として召喚されたみたいだ。妻を我が家に残してるので一刻も早く帰りたいんだけど……出口は見当たらないな。
異世界に託児所はあるのだろうか。あるといいな。
イクメンパパが異世界で奮闘する物語。
※9/28男性向けHOTランキング二位!ファンタジー八位!ありがとうございます!
異世界召喚されたのは、『元』勇者です
ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。
それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
嵌められ勇者のRedo LifeⅡ
綾部 響
ファンタジー
守銭奴な仲間の思惑によって、「上級冒険者」であり「元勇者」であったアレックスは本人さえ忘れていた「記録」の奇跡により15年前まで飛ばされてしまう。
その不遇とそれまでの功績を加味して、女神フェスティーナはそんな彼にそれまで使用していた「魔法袋」と「スキル ファクルタース」を与えた。
若干15歳の駆け出し冒険者まで戻ってしまったアレックスは、与えられた「スキル ファクルタース」を使って仲間を探そうと考えるも、彼に付与されたのは実は「スキル ファタリテート」であった。
他人の「宿命」や「運命」を覗き見れてしまうこのスキルのために、アレックスは図らずも出会った少女たちの「運命」を見てしまい、結果として助ける事となる。
更には以前の仲間たちと戦う事となったり、前世でも知り得なかった「魔神族」との戦いに巻き込まれたりと、アレックスは以前とと全く違う人生を歩む羽目になった。
自分の「運命」すらままならず、他人の「宿命」に振り回される「元勇者」アレックスのやり直し人生を、是非ご覧ください!
※この物語には、キャッキャウフフにイヤーンな展開はありません。……多分。
※この作品はカクヨム、エブリスタ、ノベルアッププラス、小説家になろうにも掲載しております。
※コンテストの応募等で、作品の公開を取り下げる可能性があります。ご了承ください。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる