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2、魔獣飼育と新しい命

ウサギ、雨を心配する

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「具合はどう?どこか悪いところはない?」
覗き込む司書の瞳を真っ直ぐに見ながらロンは問題ありませんと呟いた。
「そう、それならいいんだけど。本当に大丈夫なの?心臓が止まっていたらしいけど」
「・・・心拍数が低下しただけ」
自分の事なのにどこか他人事のようにロンは話す。
「そう、それはよかった」
「・・・・・・よかったのか?」
「よかったに決まってるじゃない。でも、原因不明なのが気にかかるわね。念のために保健室で検査受けなさい」
「・・・拒否する」
キッパリと断られた。
「・・・身体に異常はありません。通常通り可動しています」
「あなたは魔法医志願でしたね。ならば、病気や怪我についても詳しいでしょう。ですが、その言葉はいただけないわ。身体はそんな言葉で片付けられるような単純じゃないことは知っているはず。この世界で生きていくために必要な物質体は人1人に1つだけ与えられた両親からの最初のプレゼントよ。それを治す仕事の人が自分の物とはいえ軽視するような発現は見過ごせないわね。自分の身体でさえ大切にできないままでは真の医者になどなれはしません」
「・・・わかりました。以後気をつけます」
司書の言葉にロンは随分アッサリと謝った。
「わかればよろしい。本の返却は終わったから気に入ったのがあったらまた借りなさい。旦那に返却期限を守るようにも言っておいてね」
「・・・伝言承知しました。失礼します」
「営業時間内なら何時でも歓迎するから遠慮なくいらっしゃい」
ペコリと頭を下げるとポケットに返してもらったカードをしまい、何事もなかったかのような静かな足取りでロンは扉から出て行った。あの様子だと保健室には向かいそうにない。
「相変わらず礼儀正しいのか無愛想なのかわからない子よね」
「そうかしら。あたくしはそうは思いませんわ。あの子、さり気なく親切ですもの」
ロンと入れ替わりに入ってきた生徒がカウンターに本を置く。燃えるようなイスカの赤髪とはまた違う夕日色に茶色の混じった赤髪の持ち主で、その妖麗な魅力も相まって歴代の生徒会長を凌ぐ人気を誇っている。学び名はルヴィ。6年生で、数少ない女子生徒の1人であり、今年度の生徒会長である。
「へぇ~、滅多に人を褒めない生徒会長さんが言うなんて。明日は雨かしら」
 レイカと一緒に並んでいたイスカがポツリと洩らした一言はルヴィに届いたらしい。
「全く褒めないわけじゃありませんのよ。あたくしだって実力がある人を素直に称賛するぐらいはいたしますわ」
受け取ったカードを口元にもっていくと鋭い眼光のまま微笑む。
「それに、非常に興味深い人でもありますし」
「その笑み、まるで悪の女王様よね」
「特殊クラスの赤い悪魔に言われたくありませんわね」
「あはははははは・・・」
「うふふふふふ・・・・」
お互い笑い合っているのに辺りに重い気配が充満する。耐え切れなくなったレイカが半歩下がって2人から距離をとった。


                              続く
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