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1、始まりの逃避とウサギの国での活劇
ウサギ、参上する
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「見つけたわよ、この人攫い魔族!」
上から降ってきた威勢のいい声で場の雰囲気が変わる。3人が見上げると崖になっている部分に誰かいた・・・・・・正体は丸わかりである。
「誰だ!」
魔族が律儀に聞き返す。
基本に忠実と言おうか。ノリがいいと言おうか。迷うところだと、イスカがポーズを決めている崖の下でロイズは苦笑いを浮かべた。
「バッカじゃないの。なんで声で分かんないかなー。この国の第一位王位継承者のイスカよ。イスカ」
自分で盛り上げた場を自ら玉砕した。すっかり壊れてしまった雰囲気をお構いなしにイスカはポーズのためだけに登った崖からジャンプする。レイカの目の前に降り立つと思いっきり抱きついた。
日本人ゆえにレイカが狼狽していると、
「元に戻らないかな・・・」
小さな呟きが聞こえた。イスカはレイカを自分の腕の中にすっぽりと納められないことが不満なのだ。
「ごめんなぁ。まだこの術解くわけにはいきまへん」
「そう言うと思ったわ」
その言葉を言った心境がレイカの心に届くことはなかった。この状況ではレイカの判断が適切なのはわかっている。
しかし、今の状態は友達2人というより久しぶりに再会した兄弟がハグしているといった感じで、微笑ましいが、イスカの臨んだシチュレーションではない。あいつを倒し終わればと、結構不純な動機で戦いに臨もうとしていた。
一方、ロンとロイズは、
「生きてんだったら連絡ぐらいしろ」
「・・・落ちる時、服から取り出す時間がなかった。報告ついでに連絡のつく人に頼んで用件だけは送った」
確かに、メールはきた。だが、本当で用件のみで頼まれたの1言もなかったのでてっきり他に協力者がいるものだとロイズは考えたのだ。
「なら、手紙を書け!それくらいの時間はあっただろう」
「・・・生きている証となりえる物を作ってしまっては隠密行動に支障が出る。無事届く確証もない」
あの短文メール送信が彼にとって最大の譲歩だったようだ。
「ええい、これからは何らかの形で自分が生きてることだけでも連絡を取れ!心配するだろうが!!」
「・・・メール」
「装置説明だけのメールで何をわかれってんだ。おまけに別人のアドレス使いやがって」
「・・・送ったの別人だからしかたがない。死人からのメールなど怪しくて見ないかと気を使ったのだろう」
お互い言っていることは正論なのだが、意見は平行線をたどって交わろうとしない。あの2人って実は頑固者同士なんじゃと抱き合ったままイスカとレイカは思う。
続く
上から降ってきた威勢のいい声で場の雰囲気が変わる。3人が見上げると崖になっている部分に誰かいた・・・・・・正体は丸わかりである。
「誰だ!」
魔族が律儀に聞き返す。
基本に忠実と言おうか。ノリがいいと言おうか。迷うところだと、イスカがポーズを決めている崖の下でロイズは苦笑いを浮かべた。
「バッカじゃないの。なんで声で分かんないかなー。この国の第一位王位継承者のイスカよ。イスカ」
自分で盛り上げた場を自ら玉砕した。すっかり壊れてしまった雰囲気をお構いなしにイスカはポーズのためだけに登った崖からジャンプする。レイカの目の前に降り立つと思いっきり抱きついた。
日本人ゆえにレイカが狼狽していると、
「元に戻らないかな・・・」
小さな呟きが聞こえた。イスカはレイカを自分の腕の中にすっぽりと納められないことが不満なのだ。
「ごめんなぁ。まだこの術解くわけにはいきまへん」
「そう言うと思ったわ」
その言葉を言った心境がレイカの心に届くことはなかった。この状況ではレイカの判断が適切なのはわかっている。
しかし、今の状態は友達2人というより久しぶりに再会した兄弟がハグしているといった感じで、微笑ましいが、イスカの臨んだシチュレーションではない。あいつを倒し終わればと、結構不純な動機で戦いに臨もうとしていた。
一方、ロンとロイズは、
「生きてんだったら連絡ぐらいしろ」
「・・・落ちる時、服から取り出す時間がなかった。報告ついでに連絡のつく人に頼んで用件だけは送った」
確かに、メールはきた。だが、本当で用件のみで頼まれたの1言もなかったのでてっきり他に協力者がいるものだとロイズは考えたのだ。
「なら、手紙を書け!それくらいの時間はあっただろう」
「・・・生きている証となりえる物を作ってしまっては隠密行動に支障が出る。無事届く確証もない」
あの短文メール送信が彼にとって最大の譲歩だったようだ。
「ええい、これからは何らかの形で自分が生きてることだけでも連絡を取れ!心配するだろうが!!」
「・・・メール」
「装置説明だけのメールで何をわかれってんだ。おまけに別人のアドレス使いやがって」
「・・・送ったの別人だからしかたがない。死人からのメールなど怪しくて見ないかと気を使ったのだろう」
お互い言っていることは正論なのだが、意見は平行線をたどって交わろうとしない。あの2人って実は頑固者同士なんじゃと抱き合ったままイスカとレイカは思う。
続く
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