その男、人の人生を狂わせるので注意が必要

いちごみるく

文字の大きさ
上 下
209 / 213
最終章

9-7

しおりを挟む
「ありがとう海吏。俺も、やっぱり海吏とするの好きだよ」


そう言って優しく微笑む隼先輩を、俺は一生近くで見ていたい。

だけどそんな俺たちの間にあるのは、何とも名付け難い関係性。

友達でも恋人でもただの先輩後輩でもない。

不思議な距離で、繋がっている。



「ほら!そろそろ戻らないとじゃない?今日も一日お疲れ様!」

「お疲れ様って言われるほど仕事はしてないですけどねw…まあ、ある意味は疲れました。ある意味《・・・・》ね…。」

「あーー分かったから!恥ずかしいから言わないで!」


相変わらず10代みたいな反応をする隼先輩は、さっきまでの自分の乱痴気姿に照れながら、俺の背中をグイグイと押す。


「もー先輩、押さないで下さいよー」

「だって早く戻らないと海吏が怒られるから!」

「いやだから怒られることは別に気にしないですって。それより俺はギリギリまで先輩といたいです!」

「もー……ダメだよ!ほら…そろそろ帰ってくるし…」

「あー!梨々先輩ですか?」


俺は隼先輩から押し出される形で玄関の外に出た。

俺の言葉に隼先輩は照れたようにはにかむ。


「先輩、今更ですけどご結婚おめでとうございます。」

「ありがと!式挙げるときは海吏も招待するからね!」

「まだ挙げてないんですか?てっきり挙げてるものだと…」

「まだお互い社会人4年目だからね…来年には挙げるつもりだよ。」

「そうですか…」


俺がフッと笑うと、隼先輩も釣られたように笑った。

美しいこの笑顔は、俺が近くで守り抜きたい。

梨々先輩のように戸籍上一緒になることは叶わないけど…。


俺はあの日救われた人生を、一生かけて隼先輩のために使いたいと思った。


……いや、隼先輩と、もう一人……





「海吏!あんたまた仕事サボってるでしょ!」



声の主にギクリとしながら、俺と隼先輩は同時にそちらを見たのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...