その男、人の人生を狂わせるので注意が必要

最終章

9-5

「なっ……可愛いって…！俺もう今年26なんだけど？？」

「いや歳とか関係ないですよ。可愛いものは可愛いです。」

「……もー、海吏はほんとに……」

「何ですか？俺はちゃんと警察官してますよ。先輩みたいに男をたぶらかしまくったりしてませんし…」

「俺もたぶらかしてはないからっ！」

「どこがですか……全く…せめて野外でするのは控えて下さいね。捕まりますよ？」

「え、野外？」

「はい。前にビルの隙間でやってましたよね？」

「……えっ！！っっ！」

「反応分かりやすいですねー先輩。それで変なチンピラに追い掛け回されてましたよね？俺、ちゃんとそいつのことも捕まえたんですよ？」

「え？えっ！そうなの！？」



俺の明かす色んなカミングアウトに、隼先輩は昔と一つも変わらない初心な反応をする。

そんな先輩にときめく俺の気持ちも、あの頃から何も変わらないのだった。


「そうですよ隼先輩。俺は、隼先輩の幸せを邪魔する奴は許さないって…あの日部室でも言ったじゃないですか。」


あの日……

俺が自分の人生を諦めた日。

隼先輩を恐怖と快感に陥れた日。

俺は隼先輩と、2つの約束をした。

一つ目は、今言ったこと。

そして二つ目は……


「隼先輩。何で俺が本当の事を話して出所したのか…忘れたんですか？」


隼先輩の瞳が揺れる。

瞬時に色を含んだその唇は、俺があの日感じた温もり。

1度きりの悦びを、俺はやはり忘れられないでいたのだが、それはきっと、隼先輩も同じなのだ。