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最終章
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「普通…なんですか…?だけど…僕、あなたの声で…すごく安心しました。…ありがとうございます。」
相変わらず目はいつもより虚ろ気味だが、口元には安堵したような笑みを浮かべて優しい表情で俺に礼を言った。
「……俺の声……聞いたことがあるからじゃないですか……?」
鳴り響くサイレンの音と、燃え上がる炎と煙、そして集まる野次馬。
俺と醍醐隼の周りは、聴覚的にも視覚的にも、正確な情報を瞬時に把握できない混乱が広がっている。
とはいえ……
「酷いですよ……隼先輩……こんなに気が付かないなんて……」
俺は痺れを切らして、ついに忘れられない過去へと自ら引き戻した。
「……え…?」
キョトンとしながら俺を見る隼先輩は、本当に気が付かなかったみたいだ…。
俺は帽子を取って、隼先輩を見る。
「俺です。……海吏ですよ、隼先輩。俺、先輩を守るために…ここに来たんです。」
隼先輩が、驚きのあまり口を大きく開けて固まっている。
俺はあれから、隼先輩のような人や……かつての俺のような人を守るために、警察官になったのだった。
「海吏………うそ!海吏なの!?」
隼先輩は大きな声を出して、俺の頬に手を添えながら驚いている。
「はい。海吏ですよ隼先輩。正直とても焦りましたけど、隼先輩が無事で良かったです」
俺は隼先輩の手に自分の手を更に重ねる。
「海吏……ありがとう海吏……!」
ポロポロと涙を流す隼先輩は、俺が愛してやまなかったあの人のままだった。
「どういたしまして。…先輩。俺がいる限りは…先輩の安全は保証されていると思っておいて下さい。俺は……どんな時でも、隼先輩を守りますから。」
隼先輩は、俺の言葉に何度も頷いてくれた。
隼先輩の暖かくて澄んだ目から溢れる涙は、中学で共に過ごした時、何度も俺のために流してくれたものと何も変わらなかった。
あの日恋して慕った人は、俺の未来を作ってくれた。
その未来で、今こうしてまた会うことが出来た。
「先輩……俺の人生、最高です。」
心からそう言える。
生きていて、本当によかった…。
相変わらず目はいつもより虚ろ気味だが、口元には安堵したような笑みを浮かべて優しい表情で俺に礼を言った。
「……俺の声……聞いたことがあるからじゃないですか……?」
鳴り響くサイレンの音と、燃え上がる炎と煙、そして集まる野次馬。
俺と醍醐隼の周りは、聴覚的にも視覚的にも、正確な情報を瞬時に把握できない混乱が広がっている。
とはいえ……
「酷いですよ……隼先輩……こんなに気が付かないなんて……」
俺は痺れを切らして、ついに忘れられない過去へと自ら引き戻した。
「……え…?」
キョトンとしながら俺を見る隼先輩は、本当に気が付かなかったみたいだ…。
俺は帽子を取って、隼先輩を見る。
「俺です。……海吏ですよ、隼先輩。俺、先輩を守るために…ここに来たんです。」
隼先輩が、驚きのあまり口を大きく開けて固まっている。
俺はあれから、隼先輩のような人や……かつての俺のような人を守るために、警察官になったのだった。
「海吏………うそ!海吏なの!?」
隼先輩は大きな声を出して、俺の頬に手を添えながら驚いている。
「はい。海吏ですよ隼先輩。正直とても焦りましたけど、隼先輩が無事で良かったです」
俺は隼先輩の手に自分の手を更に重ねる。
「海吏……ありがとう海吏……!」
ポロポロと涙を流す隼先輩は、俺が愛してやまなかったあの人のままだった。
「どういたしまして。…先輩。俺がいる限りは…先輩の安全は保証されていると思っておいて下さい。俺は……どんな時でも、隼先輩を守りますから。」
隼先輩は、俺の言葉に何度も頷いてくれた。
隼先輩の暖かくて澄んだ目から溢れる涙は、中学で共に過ごした時、何度も俺のために流してくれたものと何も変わらなかった。
あの日恋して慕った人は、俺の未来を作ってくれた。
その未来で、今こうしてまた会うことが出来た。
「先輩……俺の人生、最高です。」
心からそう言える。
生きていて、本当によかった…。
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