その男、人の人生を狂わせるので注意が必要

最終章

8-1

「やっと捕まえたぞ醍醐……」


一切の光もない暗い暗い工場の中。

既に廃墟と化しているここは、日中であっても外の光は一切届かない。


俺の前には、8年前のあの日……

俺の娘を自殺に追い込み、俺の元妻と体を重ね……

そして……

俺の不正を暴き、俺を誘っておいて罪に問わせた男がいる。


当時高校2年生で17歳だったあいつは、今25歳の社会人となっている。

結婚もしていて、都内の1等地に大きな家を建てて幸せな家庭を築いている。


だけど……


俺の刑事としての人生を終わらせ、世間からの冷たい目を浴びさせ、全てを奪ったこいつが……

自分だけ幸せに生きていることなど、到底許されない。



だから俺は……



ここの廃墟にこいつを追い込み、一瞬の隙を見て気を失わせ、体を縛って口を塞いでいる。


俺に気づいたこいつは涙目になりながら必死に暴れている。


「醍醐。お前は俺だけの人生を壊したのではない。駅のヤサグレ野郎たちも、あの担任教師も、あの顧問も、その婚約者も……愛莉も俺の元妻も……そして藤井海吏も……みんなお前のせいで、人生を狂わされたんだよ！」


俺はそう言いながら醍醐の体を思い切り蹴る。

仕事帰りを襲ったため、こいつは真っ黒なスーツに身を包んでいる。


俺が何度か蹴るたびにうめき声を上げるこいつは、まるで俺があの日部屋でこいつを犯したときのような……


哀しくてどこか艷やかな目をしていた。