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最終章

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「えーもう……また?」

隼くんの部屋を担当する看護師にさっきあった出来事を伝えた途端、その看護師はそう言って溜息をついた。


「また…って…?」

「実は、あの子……醍醐隼くんの病室、既に2回移してるのよ。毎回同室になる男患者と何かあるの。……それでその男性側の奥さんや彼女さんに移してって頼まれるパターンよ。」



この看護師の言う通り、さっきも彼女と名乗る女が隼くんを「泥棒野郎」と罵っていた。

そして私に、部屋の移動を頼んできた…


「……とりあえずわかったわ。部屋に空きがないから隼くんを一人部屋に移動するのも難しいんだけど…ちょっと考えてみるわね」


そう言ってまた溜息をついた看護師は、その顔色からこの件で相当苦労しているのだろうということがわかる。

(隼くんと同部屋になると…男の患者さんが……ねぇ)


私は隼くんが私の勤める病院に入院していたことや、相変わらず男性を虜にする魅力を持っていたことに驚きながらも、未だに妙に速まる心臓の動きに慣れないでいた。



私は…

8年前、隼くんへのストーカー行為によって逮捕されたからだ。

婚約者だった春馬は、テニスの教え子である隼くんにぞっこんになり、私は春馬に捨てられた。

だけどその後春馬は私に対して殺人未遂を犯した。

その件で私は隼くんと定期的に連絡を取って話すようになった。

だけど気づいたら、私は隼くんに対して訳の分からない妄想や執拗なストーカー行為を働いていたのだ。


そしてその後、精神科に1年間通い、何とか看護師の仕事に復帰する事ができた。


それから6年ほど経っているので、まさかまたこんなタイミングで隼くんに会うとは思わなかった。


(隼くん……私を見たとき、相当驚いてたし怖がってるようにも見えた…)


あの頃のように精神的に壊れていない今だからこそ、隼くんの反応は当然のものであるということはすぐに分かる。


だけど私は、どうしてもこの件について気になって仕方なかったのである。
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