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最終章

6-1

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「この………泥棒野郎っっっ!!!」


夜19時の病棟。


女性の怒りをにじませた声が、廊下に響き渡る。


(何事……!?!?)



私はその声のする方へと駆け出す。



「死ね!お前みたいなホモ野郎………死ねばいいんだっっっ!!!」



声のする病室に着くと、一人の若い女性が入口側のベッドに向かって叫んでいた。


「落ち着いてください!何があったんですか?」


私は慌てて病室に入る。


その女は髪を振り乱し、鬼の形相でこっちを見てきた。

「いったい何が……」





そう言って叫んでた女と叫ばれてるベッドの上の患者を見たとき…………

私は思わず声を止めた。



なぜならそこには……



「隼……くん………??」



物が散乱したベッドに座り、目を潤ませていた隼くんが私を見ていた……




「……優香さん……ですか…?」




隼くんも、私を見て驚いたように口を開けている。


「ちょっと看護師さん、この男今すぐ部屋変えてよ」


私と隼くんが突然の再会に驚いていると、さっきまで隼くんに向かって叫んでいた女が私にそう言ってきた。


「病室を簡単に変えることはできません。何があったのか、お話してくれませんか?」


真っ赤に充血させた目で睨んでくる女を私も睨み返し、努めて冷静に言う。



「……この男…私の彼氏を取ったの」



その女が隼くんを指差した後、隼くんの向かいのベッドで気まずそうに黙ってこちらを見ていた20代半ばくらいの男の方を見た。


「え…彼氏を?」

「そうよ。私がさっきお見舞いに来たら、この男と私の彼氏が……シてたのよ」



女の言葉に、隼くんも向かいの男も何も言えずにいる。


「……そう……」


私は何となく、頭の中で物事を考えるのを辞めたまま、そう答えるだけにした。


「とりあえず私はここの科じゃないので、詳しい話は聞けないです。……担当の看護師を呼んできますので、少し待っててください」

私はそう言って、隼くんたちの病室をあとにした。


突然目の前に現れた隼くんに後ろ髪を引かれながら……
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