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最終章

5-4

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「あ……奥山せ……さん……」


思い切り開けられたドアから出てきたのは、涙目になりながら私服のシャツを少しはだけさせた隼だった。


「隼……お前……」

「奥山さん……助けて下さい…」


入り口に立って驚いていた俺に、隼は小さな声でそう言って、震えながら抱きついてきた。


「え?おい隼……??!」

訳のわからない状況に、俺は驚きのあまり言葉が出てこない。

ふと目線を上げると、事務所の奥の方で気まずそうにこちらを見ている38歳男性の店長がいた。


「おい……これは…どういう状況だ?」

俺は隼と店長を交互に見て、2人に問いかけた。


「いや、何でもないよ。隼くん、気をつけて帰りなさい」


店長は笑顔を取り繕い、あたかもいつもと同じように隼を送り出そうとしている。


だけど、さっき聞いたものといい、俺にしがみつく隼の様子といい、何かがあったのは明らかだった。

「店長さん……俺、こういうこと続いたら…お店やめます……」


隼が俺の胸にしがみついたまま店長に向かって言った。

「え、辞めるのは困るよ隼くん!君がいないとバイトの質が一気に下がる…」

「でも……店長さんが無理矢理するから…」

「わかったごめんな!もうしないから!だからやめないでくれ!」


隼には相当辞めてほしくないのだろう。

店長があからさまに焦り出し、隼に何かを約束した。

「隼……お前大丈夫なのか…?」

よくわからないまま二人の会話を聞いていたが、俺から離れない隼が心配になってつい声をかけた。

「はい!店長さんが今後はしないって言ってくれたのでもう大丈夫ですよ!ありがとうございますっ」


俺の問に対して、隼は明るい声を出して笑顔を向ける。


「……ですよね?店長さん!もうしないって言ってくれましたもんね?」

「え?あ、ああ……」

「ありがとうございます!奥山さんが証人ですね」

「ん?ああ、まあそうだな…」

思わず店長も俺も、隼の言葉にそれぞれ頷く。


「じゃあ帰りましょ奥山さん!店長さんも、お疲れ様でしたー!」


隼はいつものような元気で爽やかな挨拶をし、事務所にした。


「おい、隼……?」

俺は隼の行動にただ驚くばかりで、理解が追いついていない。

混乱のまま、隼と並んで店を出た。
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