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最終章
4-5
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「五郎くんが……?」
「そう。だから俺、今日渚さんと一緒に帰ったんだ」
「え……?」
「普通に帰れそうならよかったんだけど…今日、渚さんだいぶ困ってたでしょ?だから…もしあのまま俺だけ帰ってたら、絶対五郎にも怒られてたと思うんだよね…w」
ちょっと笑いながら言う隼くんの言葉を聞きながら、私はさっきまでの飲み会を思い出す。
確かに私は今日、しつこい先輩の対応に困っていた……
「そう…だったんだね…」
隼くんが、あの時わざと酔ったふりをしたのか、それとも本当に酔っていたのかは分からない。
だけど、自分がフワフワに酔って、誰かと一緒に帰らなきゃ危ないという状況を作り出してから、多少無理矢理ではあったけど私と帰ろうとしてくれていたのは、意図してやってくれてたことだったんだ……
「ありがとう隼くん……」
五郎くんと隼くんの不器用すぎる優しさに、私は気がついたら感謝していた。
「どーいたしまして!…五郎がね、『渚は美人なことをあまり自覚してないから気をつけてほしい』って言ってたよ!まあ、渚さんはしっかりしてるから五郎の心配は杞憂だとは思うけど…」
「ええ、なにそれ……五郎くんがそんなこと…?」
「うん。想像つかないでしょ?本人には直接言わないだろうし」
「そうだね…言われたことすらない」
私は隼くんから又聞きした五郎くんの発言に、無意識に体が熱くなっていたのを感じた。
そんな風に思ってくれてたなんて……
「だから…これからも、もし渚さんの身に何かあったら俺が助けていくことになったんだ!五郎の代わりにね」
暑い夏の夜は、蒸し暑い空気が肌に染み込む。
そんな湿気を吹き飛ばすかのような爽やかな笑顔の隼くんは、あの頃と変わらないまま、優しく明るく私を包む。
「そっか……よろしくね隼くん!」
私の方もつられて気持ちがカラッと晴れ、素直に隼くんにそんなお願いをしていた。
成長すれば、少しはそりゃあ人は変わる。
けど、大事なところが変わってなければ…別にいいか。
そう思って、私は汗ばむ顔を拭くためにカバンからハンカチを取り出した。
すると全く同じタイミングで、隼くんも白いハンカチを取り出した。
意図せず起こった二人の偶然に、私たちはただ、恥ずかしそうに笑うしかなかったのだった。
「そう。だから俺、今日渚さんと一緒に帰ったんだ」
「え……?」
「普通に帰れそうならよかったんだけど…今日、渚さんだいぶ困ってたでしょ?だから…もしあのまま俺だけ帰ってたら、絶対五郎にも怒られてたと思うんだよね…w」
ちょっと笑いながら言う隼くんの言葉を聞きながら、私はさっきまでの飲み会を思い出す。
確かに私は今日、しつこい先輩の対応に困っていた……
「そう…だったんだね…」
隼くんが、あの時わざと酔ったふりをしたのか、それとも本当に酔っていたのかは分からない。
だけど、自分がフワフワに酔って、誰かと一緒に帰らなきゃ危ないという状況を作り出してから、多少無理矢理ではあったけど私と帰ろうとしてくれていたのは、意図してやってくれてたことだったんだ……
「ありがとう隼くん……」
五郎くんと隼くんの不器用すぎる優しさに、私は気がついたら感謝していた。
「どーいたしまして!…五郎がね、『渚は美人なことをあまり自覚してないから気をつけてほしい』って言ってたよ!まあ、渚さんはしっかりしてるから五郎の心配は杞憂だとは思うけど…」
「ええ、なにそれ……五郎くんがそんなこと…?」
「うん。想像つかないでしょ?本人には直接言わないだろうし」
「そうだね…言われたことすらない」
私は隼くんから又聞きした五郎くんの発言に、無意識に体が熱くなっていたのを感じた。
そんな風に思ってくれてたなんて……
「だから…これからも、もし渚さんの身に何かあったら俺が助けていくことになったんだ!五郎の代わりにね」
暑い夏の夜は、蒸し暑い空気が肌に染み込む。
そんな湿気を吹き飛ばすかのような爽やかな笑顔の隼くんは、あの頃と変わらないまま、優しく明るく私を包む。
「そっか……よろしくね隼くん!」
私の方もつられて気持ちがカラッと晴れ、素直に隼くんにそんなお願いをしていた。
成長すれば、少しはそりゃあ人は変わる。
けど、大事なところが変わってなければ…別にいいか。
そう思って、私は汗ばむ顔を拭くためにカバンからハンカチを取り出した。
すると全く同じタイミングで、隼くんも白いハンカチを取り出した。
意図せず起こった二人の偶然に、私たちはただ、恥ずかしそうに笑うしかなかったのだった。
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