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最終章

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「お前…これは…」

「みんなから、先生への気持ちです。それと、俺たちはここまで来られたんだっていうのを少しでも伝えたくて、全てを1冊に綴じました。」

隼の言葉にみんなも頷き微笑むのを、俺は驚いて見ていた。

そしてそのまま、目線を手元の冊子へと移す。


その冊子には……

目の前にいる4人を筆頭に、俺が教えていた男子ソフトテニス部のみんなからの直筆のメッセージと、彼らの成長が見てわかるような沢山の写真が綴られていた。


「隼………」

「佐伯先生。俺たちは、もう大人になりました。……あの頃できなかった事も、沢山できるようになりました。……こうして先生に気持ちを伝えることも…きっと今だからこそできるんです。あの頃の未熟で子供な俺らのままでは、きっとこんなことできませんでした。」


隼の言う通り、穏やかな声の奥には強くて揺るぎない信念のようなものが感じられる。


「だから、俺たちよりもずっと大人な先生は…俺たちよりも、もっとずっと色んなことができるはずです。自分を信じさえすれば、先生なら何だってできると思います」

俺の目を射抜くかのような真っ直ぐな眼差しは、強く優しい言葉と共に俺に響く。

同意するかのように隼の後ろで頷く3人の目の色もまた、俺を素直に信じ、期待し、ついてきてくれてたあの頃と変わらないものを宿していた。

「先生………本当に、お世話になりました」

何も言えないでいる俺に、隼が言う。

そしてその言葉と共に、4人全員が俺に礼をする。


まるであの頃…

俺はこの光景に、こいつらが中学生だった頃に戻ったような錯覚を起こしてしまった。


まだまだ子供で幼くて、未熟で発展途上のこいつらを、愛しく思っていたあの頃の自分に戻ったみたいだった。


だけど、それは幻想に過ぎない。


俺はあの頃のまま……

こいつらの成長を勝手に止めていたのだ。

頭の中で思い描くのは中学時代のこいつらで、そこに混ざって共に部活をして汗を流す、あの頃の俺だった。

だけど、もう俺もこいつらも……



「大人になったな、お前ら。……卒業おめでとう」



背が伸びたとか、声が低くなったとか、体つきがガッシリしてきたとか、そんなことだけではない。

俺は今、目の前にいるこいつらに流れた月日と成長をひしひしと感じるしかなかった。



「ありがとうございます!」

そう言って満面の笑顔を向けるこいつらは、きっとこれからいくらでも成長していける。


俺があの日壊して崩した信頼関係を、こいつらは自分たちの力で築き上げることが出来たのだから。


そう思うと、素直に笑みが零れた。


俺はこれから、俺なりのやり方でこいつらと向き合っていけばいいんだ…


そう思うことができたからだった。
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