172 / 213
最終章
2-2
しおりを挟む
「ありがとうございます。でも僕は……この日記は、ぜひあなたに持っていて貰いたいです」
私の予想に反して、朗らかな笑顔をした隼くんがそう言ってきた。
「確かに僕は、ずっと菜摘さんのことも愛莉さんのことも……自分のせいだと思って責めていました。だけど……この日記を読んで、菜摘さんの気持ちを知って、はっきりとそれが否定されたので…僕はもうそれだけで満足です」
時々目を日記の表紙に遣り、柔らかに言葉を紡ぐ。
「でも…菜摘は隼くんに持ってて欲しいと思ってるんじゃないのかな…?」
日記に書かれているのは、溢れんばかりの隼くんへの愛情。
ありふれた日常の中に散りばめられる、たった1度きりの奇跡のような時間。
偽りのないありのままの気持ちに、2人で描く未来への希望。
どれをとっても、あの頃の菜摘が、いかに隼くんに思い焦がれていたのかが分かる。
「菜月さん…僕は…」
はっとするような美しい声で私の名前を呼ぶ。
突然のことに、私は思わず息を呑む。
「僕は……もう、前を向いて歩いているんです」
瞬きすらもできないくらいの強い眼差しが私に注がれる。
隼くんが纏う優しげで柔らかい雰囲気が、一瞬だけ他の色に染まった気がした。
「僕には今、大好きな人がいます。大切に思う友達や後輩がいます。尊敬する先輩や大人がいて、憧れや夢もあります。それは全部、あの頃菜摘さんに救われていたおかげなんです。あの頃もし、僕を好きになってくれたり、優しく声をかけてくれたりしていなかったら…僕はきっと、今をこんなに幸せに過ごせていないです。」
真っ直ぐに胸に刺さる隼くんの言葉には、嘘はなかった。
だけどその目線は、私よりもずっと奥…
遠く前を見つめていた。
私の予想に反して、朗らかな笑顔をした隼くんがそう言ってきた。
「確かに僕は、ずっと菜摘さんのことも愛莉さんのことも……自分のせいだと思って責めていました。だけど……この日記を読んで、菜摘さんの気持ちを知って、はっきりとそれが否定されたので…僕はもうそれだけで満足です」
時々目を日記の表紙に遣り、柔らかに言葉を紡ぐ。
「でも…菜摘は隼くんに持ってて欲しいと思ってるんじゃないのかな…?」
日記に書かれているのは、溢れんばかりの隼くんへの愛情。
ありふれた日常の中に散りばめられる、たった1度きりの奇跡のような時間。
偽りのないありのままの気持ちに、2人で描く未来への希望。
どれをとっても、あの頃の菜摘が、いかに隼くんに思い焦がれていたのかが分かる。
「菜月さん…僕は…」
はっとするような美しい声で私の名前を呼ぶ。
突然のことに、私は思わず息を呑む。
「僕は……もう、前を向いて歩いているんです」
瞬きすらもできないくらいの強い眼差しが私に注がれる。
隼くんが纏う優しげで柔らかい雰囲気が、一瞬だけ他の色に染まった気がした。
「僕には今、大好きな人がいます。大切に思う友達や後輩がいます。尊敬する先輩や大人がいて、憧れや夢もあります。それは全部、あの頃菜摘さんに救われていたおかげなんです。あの頃もし、僕を好きになってくれたり、優しく声をかけてくれたりしていなかったら…僕はきっと、今をこんなに幸せに過ごせていないです。」
真っ直ぐに胸に刺さる隼くんの言葉には、嘘はなかった。
だけどその目線は、私よりもずっと奥…
遠く前を見つめていた。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
聖也と千尋の深い事情
フロイライン
BL
中学二年の奥田聖也と一条千尋はクラス替えで同じ組になる。
取り柄もなく凡庸な聖也と、イケメンで勉強もスポーツも出来て女子にモテモテの千尋という、まさに対照的な二人だったが、何故か気が合い、あっという間に仲良しになるが…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
青春日記~禁断の恋だとしても、忘れられない日常を綴ります~
いちごみるく
青春
主人公の隼は、ふと見たニュースで教師と生徒の不適切な関係が明るみになった不祥事を知る。
世間的には厳しくなっていく一方であるそのような関係性。
しかし、隼は15年前に恋していた25歳の国語教師・菜摘のことを思い出す。
小学生と中学の教師という、決して許されざる恋。
二人ともその恋がもたらす苦汁をこれでもかというほど味わいながらも、想いが止むことはなかった。
しかしそんな二人は、ある日、唐突に引き裂かれる……
抗えない運命に絶望していた時、隼は菜摘の日記の存在を知る。
そこに描かれていたのは……?
ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした
黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。
日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。
ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。
人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。
そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。
太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。
青春インターネットラブコメ! ここに開幕!
※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。
俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる