その男、人の人生を狂わせるので注意が必要

いちごみるく

文字の大きさ
上 下
170 / 213
最終章

1-3

しおりを挟む
「海吏……麻友さんが俺に勇気を出して本当の事を話してくれたことから始まったんだ。あの日、海吏が麻友さんたちを守ったように…麻友さんも、海吏のことを守り抜いたんだよ」


隼くんの優しい声が届く。

海吏くんはその言葉に、涙を流していた。


「隼先輩……麻友…」


震える声で私たちの名前を呼ぶ彼から伝わるのは、この2年間、私たちに伝えたかったであろう沢山の気持ち。


だけどそれらは、これからゆっくり伝え合っていけばいい。



「ありがとうございます…」


海吏くんは私と隼くんに頭を下げる。

そこから零れ落ちる涙の粒は、地面に落ちて染み込むように広がる。



「海吏、帰ろう……」


低くなってる海吏くんの背中を優しく叩き、隼くんが囁いた。


海吏くんは顔を上げ、今まで見た中で、最も美しい笑顔で頷いた。





あの日、自分と隼くんと、海吏を信じてよかった……


私はあの日の自分を心から褒めた。


そして、空を見上げる。



(愛莉……私たちは、もう前に進むよ……だから愛莉も一緒に……)


最後の最後の瞬間に、全てを思い出し自分の罪を責め、亡くなってしまった愛莉に心の中で話しかけた。



青く済んだ秋空は、涼しい風を運んできた。



その風に乗ってほんの一瞬私の脳裏を掠めたのは、全力で恋して傷ついてふざけて笑い合った私と愛莉の姿。


同じ中学の制服を着て、部室に忍び込みスリルを共有したあの日の思い出。



今までは思いだすことすら避けてきた2人の姿を、私は頭に浮かべて微笑むことが出来た。






まだまだ、これからだ………





私の新しい人生は、今日また改めてスタートしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

夕立ち〈改正版〉

深夜ラジオ
現代文学
「手だけ握らせて。それ以上は絶対にしないって約束するから。」  誰とも顔を合わせたくない、だけど一人で家にいるのは辛いという人たちが集まる夜だけ営業の喫茶店。年の差、境遇が全く違う在日コリアン男性との束の間の身を焦がす恋愛と40代という苦悩と葛藤を描く人生ストーリー。   ※スマートフォンでも読みやすいように改正しました。

風が告げる未来

北川 聖
現代文学
風子は、父の日記を手にしたまま、長い時間それを眺めていた。彼女の心の中には、かつてないほどの混乱と問いが渦巻いていた。「全てが過ぎ去る」という父の言葉は、まるで風が自分自身の運命を予見していたかのように響いていた。 翌日、風子は学校を休み、父の足跡を辿る決意をした。日記の最後のページには、父が最後に訪れたとされる場所の名前が書かれていた。それは、彼女の住む街から遠く離れた、山奥の小さな村だった。風子は、その村へ行けば何か答えが見つかるかもしれないと信じていた。

処理中です...