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冤罪少年の話
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「そうだったんだね……」
俺の話を聞き終わった隼先輩は、大きな目を伏せて何かを考えていた。
「俺がギリギリまで迷っていたということは…俺が先輩と体を重ねた時にも、わかりませんでした?」
俺の発言に、監視している男が顔を引きつらせた。
「あの時、これからも先輩と定期的にしたいって言いましたよね?将来、そっち系の道に進むとか……冗談ぽくですけど、話したの覚えてますか?」
隼先輩はゆっくりと頷いた。
「そして隼先輩がしてくれるって言ったとき…俺、生きててよかったって言いました。あの気持ちは…本当なんですよね……」
ほんの一瞬、あの瞬間だけ、俺は自分の決断を変えようかと思ってしまった。
大好きな人と密着できるという理由だけで、自分で下した重い決断を簡単に変えるというのは浅はかに見えるのかもしれない。
だけど、あのときの俺にとっては、定期的に隼先輩から求めてもらえる……
そのことが、心から嬉しかったんだ。
「じゃあさ海吏……その時言ってたことを、本当にしてよ」
俺の様子を伺うような上目遣いで、隼先輩はしっかりと俺の目を捉えて言ってきた。
「……本当に、海吏とこれからも会いたい。もちろんここでじゃなくて」
隼先輩の儚い声が、俺の鼓膜を優しく震わせる。
「だから海吏……本当の事を話して、もうここから出よう。海吏は本当は無実なんだってこと…ちゃんと伝えよう」
縋るような隼先輩の目と、俺を捉えて離さない表情は、俺の中の全てを揺るがす。
「俺……海吏とあれからできなくて、本当はすっごい寂しいんだから…」
突然声を潜めて俺を屈ませたかと思えば、こんなことを耳に囁いてきた。
その甘く響く妖魔な囁きは、俺の仕舞い込んでいた感情に直接触れる。
なぜなら俺も、あの日の隼先輩を忘れることができなかったから……
今の隼先輩のこの発言が、俺を誘い出すための罠なのか、そんなことはどうでもいい。
ただ、一度溢れ出したこの人への情熱的な身体の火照りは、そうすぐには収まってくれそうにない。
「…隼先輩……相変わらずですね…」
俺がそう言わずにはいられなかった時、目の前にいる他人を狂わせる魔性の男は、ただ静かにその柔らかな唇に弧を描いただけだったのだ…。
俺の話を聞き終わった隼先輩は、大きな目を伏せて何かを考えていた。
「俺がギリギリまで迷っていたということは…俺が先輩と体を重ねた時にも、わかりませんでした?」
俺の発言に、監視している男が顔を引きつらせた。
「あの時、これからも先輩と定期的にしたいって言いましたよね?将来、そっち系の道に進むとか……冗談ぽくですけど、話したの覚えてますか?」
隼先輩はゆっくりと頷いた。
「そして隼先輩がしてくれるって言ったとき…俺、生きててよかったって言いました。あの気持ちは…本当なんですよね……」
ほんの一瞬、あの瞬間だけ、俺は自分の決断を変えようかと思ってしまった。
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だけど、あのときの俺にとっては、定期的に隼先輩から求めてもらえる……
そのことが、心から嬉しかったんだ。
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「だから海吏……本当の事を話して、もうここから出よう。海吏は本当は無実なんだってこと…ちゃんと伝えよう」
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なぜなら俺も、あの日の隼先輩を忘れることができなかったから……
今の隼先輩のこの発言が、俺を誘い出すための罠なのか、そんなことはどうでもいい。
ただ、一度溢れ出したこの人への情熱的な身体の火照りは、そうすぐには収まってくれそうにない。
「…隼先輩……相変わらずですね…」
俺がそう言わずにはいられなかった時、目の前にいる他人を狂わせる魔性の男は、ただ静かにその柔らかな唇に弧を描いただけだったのだ…。
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