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冤罪少年の話

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「でもさー…小学生の頃と中身は変わってなくても、結局は昔イジメられてたんだろ?それって中学デビューしたとかそういう感じ?」

隼先輩の過去を知らなかった1人がそう言った。

「そーじゃね?まあ、あの頃から顔はカッコイイというか可愛かったけどさ」

「けど、なんかモサモサしてたよな。陰キャ感あったっつーか。」

「それ!今でこそ学校一のイケメンで陽キャみたいになってっけどねw」

「みんなに昔の隼先輩バラしてーわww今しか知らない女たちとかもみんな散るんじゃね?w」

「いいねそれww多少は惨めな思いもした方がいいと思うww」


再び下品に笑い合うそいつらから聞こえる声には、隼先輩への明らかな妬みが含まれていた。


隼先輩の変わらぬ凄さと、それを見て妬んでしまう自分たちの醜さを、まるで自覚しながらも必死に隠しているようだった。



俺はそれを分かっていたから、三人が可哀想だとすら思っていた。

だから部室で更に文句を言われたときに、俺は隼先輩含む3年生の先輩方の話を敢えてしたのだ。

お前らが妬んだり余計なことをしなくても、充分先輩方も傷つき悩み、苦しんできてるんだ…

そんなことを伝えようとしていたのだ。




だけど……


「愛莉さんは、隼先輩が好きすぎたからこそ…あいつらの話をそのまま受け取ってしまったんでしょうね」


あの話を聞いていた愛莉さんは、あいつらのことは何も知らない。

だから、俺のようにただ妬んでるだけだろうなと思って流すことができなかったのだ。

元々ストーカーするくらいに盲目的に隼先輩を愛していた人だ。

隼先輩を少しでも傷つける者は徹底して許すことができなかったのだろう。
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