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冤罪少年の話

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だけど俺はそんな自分に安心した。

隼先輩を傷つけることを悦んでいる自分は、本当の殺人鬼みたいじゃないか…。

俺の中にもそういう一面が潜んでいて、今回罪を着ることで本当に殺人を犯す前に捕まることができるんじゃないか…

そして、他人の罪を着て捕まった自分を、ずっと正当化させられるんじゃないか……


俺は、自分を理不尽な平等から解放する為に罪を着ることにした。

しかしいつか、そんな自分の判断を後悔する日が来るのではないかという不安も少しはあった。

だけど、もし俺が本物のシリアルキラー、サイコパスならば、そんな後悔もしないで済むはずだ。


俺の中には、そんな気持ちからくる安心感が広がっていた。





「どっちにしろ……俺、あの日、あいつらを殴りかけたんですよ?」

俺があいつらから部室で散々悪口を言われた後。

俺は隼先輩から貰った言葉を思い出して、勇気を振り絞った。

忘れかけていたプライドと自信を必死に思い出し、湧き上がらせた。


そして先輩たちの本当の姿を……


普段俺達には見せない苦労や努力、辛い過去を、俺の知ってる限りあいつらに話した。


先輩方の威厳を考えれば、そんな話はしない方が良いのかもしれない。

だけど、あいつらにもわかってほしかった。

怖くて嫌われてて何の苦労もしてないように見える先輩たちも、みんな俺らと同じ中学生なんだということを。

そして、俺があの頃頑張ってた姿を見て褒めてくれたように、ちゃんと人のことを見てくれているんだということを。


一番怒られ、怒鳴られ、説教されてた俺だからこそ、先輩たちのそういう面も見る事ができた。


だからそれを、必死に伝えた。


あの日、俺は初めて自分を信じて、自分が正しいと思ったことをした。



それが少しは伝わったのか、あいつらは謝ってくれた。

俺はそれが嬉しくて、明日からも頑張ろうと思って部室を出た。

そして無事に取り返した鍵を開けて、自転車で帰ろうとサドルに跨った。


そのときに、部室棟から出てきた麻友と出くわしたのだった。
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