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冤罪少年の話

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「面会に来てくれた人がいる。」


突然そう告げられた時、俺はまた真っ先に麻友を想像した。

あの件について、俺を説得でもしに来たのだろうと。


だけど……






「海吏っ……!!!」




目の前に現れた人を見たとき、俺は一瞬で頭の中で考えていたことが吹き飛ばされた。




「はや……と先輩………?」





俺を見て目に涙をためているのは、2年前俺が傷つけ犯し、狂おしいほど愛した人。



「隼先輩……?どうして……」

「海吏!久しぶりだね……元気だった…?」


2年前、逮捕された瞬間にあの場に置いてきたはずの感情。

背が伸びて筋肉がついて、さらにかっこよくなってる隼先輩は、高等部の制服を着ていた。

そんな先輩を見て、俺はこれまで頑なに秘めてきた決心が揺るいでしまうのを感じた。


「先輩……俺は、元気です…」

喉から絞り出すような掠れた声しか出せなかった。


どうして隼先輩が………?



「海吏と、本当はもっと早く会いたかったんだ。何回か手紙も出したんだけど……届いたかな?」


俺は黙って首を横に振った。


「そっ…か……やっぱり渡されてなかったか…」

少し残念そうに微笑む隼先輩。

先輩は、俺に手紙を出してくれていたというのか…


「不適切だと判断されると手紙も差し入れも面会も許されなくてさ。……だからなかなか会いに来られなかったんだ」


隼先輩の言葉が信じられないまま俺の脳に響く。

俺はあの日、隼先輩への感情も思い出も何もかも置いてきたというのに…

隼先輩は、俺に会いに来ようとしてくれていたのだ……


「先輩……どうして……」

俺の震える声があまりにも小さくて、隼先輩はそれを必死に聞き逃さないように耳をそばだてている。


俺は突然乱された感情を、すぐに整理することはできなかった。
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