上 下
152 / 213
元いじめっ子の話

14

しおりを挟む
「隼くん……私のこと、どうして何も言わないの?」


ある日の放課後。

私は思い切って隼くんをあの日再会したス○バに呼び出した。


「……早く言ったほうがいいのかなって俺も思ったんだけどね……」

少し悲しげな笑顔で、隼くんは私を見る。

「渚さん……俺、本当にあのことはもう何も思ってないよ。だって、渚さんは何も悪くないでしょ?」

「それはさすがに嘘だよ。私のこと、恨んでないの?」

「恨んでないよ。むしろあの件に関しては渚さんは被害者だから」

「そうじゃなくて……」


優しい隼くんなら、こういうことを言うとは思っていた。

だけど、それはきっと本音ではない。

私は本心を聞きたかった。



「あの日……せっかく隼くんは私を送ろうとしてくれたのに……私、隼くんになんて言ったか覚えてる……?」


何度思い出しても過去の自分を殴りたくなる。

幼さを言い訳にはできない非道な発言を、私は許せていない。


「………多分、ああいう状況だったら誰でも同じことを言うと思うんだ……」


自分に腹が立ち今にも泣きそうな私の目を見て、隼くんは信じられないくらい優しい声を出す。


「自分を守るためには、ああするしかなかった。それは仕方ないことだと思うよ」

「だとしても……!いくら自分のためとはいえ、隼くんを傷つけてもいい理由になんかならないよ!」

「傷ついてないよ。ほんとに渚さんの言う通りだなって自分でも思ったから。納得しちゃってたくらいだよ?」

「そうじゃなくてっ!!……」


隼くんは、どこまでも私を責めない。

あの日の私の過ちを、決して認めてくれない。

どうして……


いっそのこと、私を蔑み忌み嫌ってくれた方が、ずっとマシなのに……



思わず溢れた涙に、私は腹が立つ。


泣きたいのは、私じゃないのに…!

泣いていいのは、私じゃない!!


自分の全てにムカついて、それに対して更に涙が止まらなくなった。


だけどその時、ふと目の前に差し出されたものを見て、私は息が止まりそうになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【R18】今夜、私は義父に抱かれる

umi
恋愛
封じられた初恋が、時を経て三人の男女の運命を狂わせる。メリバ好きさんにおくる、禁断のエロスファンタジー。 一章 初夜:幸せな若妻に迫る義父の魔手。夫が留守のある夜、とうとう義父が牙を剥き──。悲劇の始まりの、ある夜のお話。 二章 接吻:悪夢の一夜が明け、義父は嫁を手元に囲った。が、事の最中に戻ったかに思われた娘の幼少時代の記憶は、夜が明けるとまた元通りに封じられていた。若妻の心が夫に戻ってしまったことを知って絶望した義父は、再び力づくで娘を手に入れようと──。 【共通】 *中世欧州風ファンタジー。 *立派なお屋敷に使用人が何人もいるようなおうちです。旦那様、奥様、若旦那様、若奥様、みたいな。国、服装、髪や目の色などは、お好きな設定で読んでください。 *女性向け。女の子至上主義の切ないエロスを目指してます。 *一章、二章とも、途中で無理矢理→溺愛→に豹変します。二章はその後闇落ち展開。思ってたのとちがう(スン)…な場合はそっ閉じでスルーいただけると幸いです。 *ムーンライトノベルズ様にも旧バージョンで投稿しています。 ※同タイトルの過去作『今夜、私は義父に抱かれる』を改編しました。2021/12/25

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

処理中です...