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元いじめっ子の話

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「渚さんっ!!!」


私を取り囲んでいる男たちの間を割って入った声の主は、隼くんだった……


「……隼くん……?」

「お?何?知り合い?」

私の反応に男たちの興味は隼くんへと向かう。

「やめてください…その子を放してください」

隼くんは怖気づく様子もなく彼らに向かって言った。


「おいおいおいww放せって言われてそーですかで放すわけないだろ?」

「てか坊ちゃん、アンタその服高そーなの着てんじゃん。もしかして金持ち?」

「マジ?金くれんの?」


この男たちは金に困っているのだろう。

お金の話が出た途端、一斉に隼くんの方へと向かっていった。


「渚さん!今だよ逃げて!!」

彼らの興味が私から隼くんへと向かった瞬間、隼くんは私に向かって叫んだ。

「あっオイ!!」

咄嗟に一人の男が私を追ったが、隼くんがその男にしがみついて離れなかった。

「テメっ離せよコラ!!」

「離しません!」

隼くんが男たちと揉み合ってる間、私は全力で数m先の民家へダッシュした。

実は、私は陸上の100m走で去年全国大会で新記録を出している。

短距離ならば速く走れるのだった。

「助けて!!」

その家のドアを叩き家の主を呼んでる間、ふと隼くんたちの方を見た。

男たちは私が民家へ辿り着いたのを見て私を追うのは諦めたようで、しきりに隼くんを殴っている。


出てきてくれた民家の人は、すぐに警察に通報してくれた。


そうしてあの男たちはみんなして警察に連れて行かれたが、隼くんは複数人に殴られたせいであちこちから血を流していた。

一方の私は結局無傷だった。


教室では最も弱かった隼くんは、本当は誰よりも強かったのだった。
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